徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
竹本葵太夫の親子共演
竹本葵太夫のHPは、今竹本の義太夫としてもっとも活躍されている方の生の声を拝読でき、かつ歌舞伎の舞台を作り上げてゆく貴重なエピソードの数々を知ることが出来る、歌舞伎ファンには見逃せない貴重なサイトである。最近は歌舞伎義太夫の方々が出演する演目が数多く舞台にかかり、また清太夫ほかの方がご病気等で休まれていることもあるためか、葵太夫はフル回転の月が続き、サイトの更新のペースが落ちていることは止むを得ないことである。くれぐれもご健康と咽喉の調子にはお気をつけていただきたい。

それにしても、『仮名手本忠臣蔵』がかかった今月のような月は、義太夫と三味線の方々の出演調整は綱渡りのようであることが次のリンクを見ても分かる。竹本の後継者難も深刻である。

竹本協会の今月の活動

さて、葵太夫の今後の予定を拝見すると、新橋演舞場の花形歌舞伎『三人吉三巴白浪』「火の見櫓」のシンを務めているが、そのなかで、次のような注書きがある。

★私の倅が清元の太夫修業中でございますが、このほど宗家より「清元瓢(ひさご)太夫」芸名を頂戴し、この24・25両日の「火の見櫓」で初御目見得いたします。はからずも親子共演ということに相成りました。

葵太夫のご子息が清元の太夫修行中とははじめて知ったが、25日千穐楽は私も観劇予定であるので、まさしくはからずも親子共演の舞台を拝見できるわけである。

【2009. 11. 21 (土)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(0) | trackbacks(0) |
過去の投稿記事の表示について
いつも拙ブログをご高覧いただき、ありがとうございます。

ブログのレイアウトのうち、右サイドバーにあります「過去の投稿」欄につきましては、2005年7月のブログ開始以来の年月(投稿記事数)をすべて表示しておりましたが、4年以上経過しまして投稿年月のみでも相当なスペースを占めることになり、ご覧いただく方々にはご不便をおかけしたと思います。

このたび、年単位で(例 ・2009年)折りたたんで表示するよう設定を変更いたしました。該当の年をクリックいただきますと、その年のすべての月が表示されます。カッコ内は従来とおりその月に投稿した記事数となります。

引き続き拙ブログをよろしくお願いいたします。

JUGEMテーマ:日記・一般
【2009. 11. 21 (土)】 author : 六条亭
| 日記 | comments(0) | trackbacks(0) |
歌舞伎名舞台のCD企画発売
本20日付けの朝日新聞夕刊に歌舞伎名舞台のCDについて触れた記事があったので、発売元のワーナー・ミュージックのサイトを調べてみたところ、掲載されていない。それでは、とGoogle検索をかけたところ楽天市場にあるワーナーミュージック・ダイレクトから発売されていることが分かった。

その内容を早速詳細に見てゆくと、今までの歌舞伎に関するCDにない特徴が売り物である。

400年の歴史と伝統を誇る芸能、「歌舞伎」。
そして今年開場120年を迎えた歌舞伎の殿堂「歌舞伎座」が、来年の春に全面的な改築・建て替えが行われるというニュースが発表されるや、昨今の「歌舞伎」ブームにもさらに拍車がかかる状況となっております。
すでにテレビ番組で特番が組まれるなど、現在の歌舞伎座が見納めとなる来春に向けて「歌舞伎」がますます話題となり大きな注目が集まってゆくことは間違いないところでしょう。

○名優たちの歴史的アーカイブ
ここに収められた名舞台の数々は、今ではもう観ること・聴くことの出来ない名優たちの歴史的名演や、現代のトップ・スターたちの若き日の熱演が数多く収録された歴史的アーカイブとしても貴重です。

○マルチ録音による迫力のステレオ・サウンド!
本作品では、録音も記録用音源などとは全く違い、この作品の収録の為に舞台・花道・観客席などに多くのマイクをセッティングして録音された、臨場感溢れるステレオ・サウンド録音です。
また今回のCD化にあたっては最新のデジタル・リマスタリングを施しております。歌舞伎舞台の迫力を再現するダイナミックなサウンドをお楽しみ下さい。

○豪華なブック型仕様に詳細な解説書付
本商品の体裁は、書籍型のハード・カバー仕様で、レコード発売当時のアートワークもあしらった豪華仕様のケースに収納された愛蔵版仕様。
今回初めて聴き起こしにより完成された上演台本のほかに、解説・聴きどころ、また役者さんへの当時のインタビュー(河庄)など盛り込んだ豪華ブックレットが附属しています。
また伝統芸能ソフトとしてもお求めやすい価格となっております。

そのラインナップは次のとおりで、大変豪華な顔合わせによる名舞台をほぼ全幕収録しているから貴重なものばかりである。過去にLPレコードで発売されたような書き方であるが、これらの音源について少なくとも私ははじめて知った。CD化にあたってデジタル・リマスタリングを施しているなら、クラシックのCDでも体験済みのとおり、鮮明な音になって蘇っていると思われる。第3巻は国立劇場収録分であるが、これほどの舞台を収録しているのであれば、映像も残っているのではとも思うのであるが、DVDとして発売がないことが惜しまれる。各巻CD4枚組で、税込・送料込みで7,800円は少々お高い気もするが、ブックレットもあわせて考えると、妥当な価格設定かもしれない。私個人としては、玉三郎の「野崎村」は是非とも購入したいものである。

さようなら歌舞伎座
〜 今、甦る歌舞伎の名舞台! 〜歌舞伎名舞台<1>菅原伝授手習鑑〜寺子屋/刺青奇偶

◆菅原伝授手習鑑 「 寺子屋 」  全幕
幸四郎の松王丸、歌右衛門の千代、仁左衛門の源蔵、芝翫の戸浪。
四大名優が描き出す空前の名作歌舞伎!
八代目松本幸四郎 十三代目片岡仁左衛門 七代目中村芝翫 六代目中村歌右衛門 他
  <昭和五十四年一月大歌舞伎/歌舞伎座>
◆「刺青奇偶」  全幕
勘三郎(半太郎)と玉三郎(お仲)の黄金コンビによる世話狂言の極付!
 懐かしい音羽屋(松緑)の政五郎が舞台を引き締める。
十七代目中村勘三郎 五代目坂東玉三郎 五代目中村勘九郎 二代目尾上松緑 他
  <昭和五十三年十一大歌舞伎/歌舞伎座>

さようなら歌舞伎座
〜 今、甦る歌舞伎の名舞台! 〜歌舞伎名舞台<2> 箱根霊験誓仇討/心中天の網島〜河庄

◆「箱根霊験誓仇討」  箱根山中施行の場 / 同、白滝の場
勘三郎の勝五郎、歌右衛門の初花、幸四郎の滝口と筆助。
昭和歌舞伎の三大名優が遺した記念碑的名舞台!
十七代目中村勘三郎 六代目中村歌右衛門 二代目中村芝鶴 八代目松本幸四郎 他
   <昭和五十三年十月大歌舞伎/歌舞伎座>
◆心中天の網島  「 河庄 」  全幕
 雁治郎の治兵衛、扇雀の小春、仁左衛門の孫右衛門、上方三大名優の競演による和事歌舞伎の決定版!
二代目中村雁治郎 二代目中村扇雀 六代目澤村田之助 十三代目片岡仁左衛門 他
  <昭和五十四年一月大歌舞伎/歌舞伎座>

さようなら歌舞伎座
〜 今、甦る歌舞伎の名舞台! 〜歌舞伎名舞台<3> 新版歌祭文〜野崎村/勧進帳

◆新版歌祭文 「 野崎村 」  全幕
勘三郎の久作、玉三郎のお染、藤十郎の久松、勘九郎のお光。
花形とベテラン俳優で贈る当代最高の「野崎村」!
十七代目中村勘三郎 五代目坂東玉三郎 五代目中村勘九郎 五代目澤村藤十郎 他
  <昭和五十四年一月公演/国立劇場>
◆歌舞伎十八番の内 「勧進帳」  全幕
豪快=染五郎、颯爽=孝夫、気品=勘九郎。
三大花形俳優が火花を散らす、ご存知「安宅の関」。
歌舞伎人気度No.1!
六代目市川染五郎 五代目中村勘九郎 初代片岡孝夫 他
  <昭和五十四年六月公演/国立劇場収録>


【2009. 11. 20 (金)】 author : 六条亭
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ノリントンのハイドン『ロンドン・セット』全曲発売予定
サー・ロジャー・ノリントンと言えば、つい最近まではピリオド楽器のオーケストラであるロンドン・クラシカル・プレイヤーズを指揮して、バロック音楽から古典派まである意味では過激な演奏と評されるCD録音をリリースしていたように記憶している。しかし、実際に聴いてみるとピリオド楽器を自在にコントロールして、清新で生き生きとした演奏を披露していたように思う。そういう点では一昔前のアーノンクールと同じように食わず(聴かず)嫌いの評価だったのではないか?

それがシュトゥットガルト放送響の首席指揮者に就任した時期あたりから、流れが変わりはじめたようで、その録音活動も高い評価を受けるようになって来た。ノリントンそのものがそれほどに大きく変わったとは思えないのだから、面白いものである。そんなノリントンがハイドン・イヤーの掉尾を飾って『ロンドン・セット』全曲を、それもすべて最新のライヴ録音でリリースするという。モーツァルトやベートーヴェンの交響曲とならぶ一大注目盤になりそうである。

ノリントン&SWR響/『ロンドン・セット』全曲

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【2009. 11. 19 (木)】 author : 六条亭
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佐々木譲『巡査の休日』を読む
14日から公開されている映画『笑う警官』からはじまった佐々木譲の道警シリーズも、『警察庁から来た男』『警官の紋章』(そのレビューは、こちら)と続き、今回の『巡査の休日』はその第4作目である。

前作で一応完結したような形になっているシリーズであるから、本作品単独でも十分警察サスペンスとしての面白さは味わえるが、主人公の佐伯警部、小島百合巡査、津久井刑事、新宮刑事の四人は同じであり、前三作品を読んでいた方が話の流れは分かりやすい。

小島巡査が以前風俗営業で働いていた女性をストーカーから守ったが、その犯人が負傷・入院中の病院から逃走し、姿をくらます。神奈川県で起きた現金強奪未遂事件にその犯人が関与していた疑いが強まり、捜査を進めているうちに、ふたたび同じ女性に脅迫メールが届く。初夏の札幌を舞台に行われる北海道の一大イベント「よさこいソーラン祭り」にあるチームに参加して踊る彼女の護衛として、小島巡査がはりつき、自らも旗手として踊ることになる。

プロローグとエピローグの間に火曜日から土曜日まで日を追って物語がぐんぐんと展開して行き、脅迫犯が徐々に迫って来るサスペンスはよさこいソーラン祭りとともに緊張の度合いが高まり、意外な真相に辿り着く。地味な捜査で事件解決に向かってゆく刑事たちの姿を克明に描く作者の手腕はいつもながら巧みである。本作品では佐伯警部は脇役のような形で、自分のプライヴェートの問題として過去の事件を片付けるためにキャンセルした小島巡査とのデート予定だった日曜日の休日が、思いもかけない結末に苦笑するのがタイトルの意味するところであろう。佐伯警部を除く三人がそれぞれ成長して、事件を解決してゆくけれども、四人の連帯は固いように見受けられる。さらにこの道警シリーズは続いて行くのだろうか?

警察小説というジャンルがあるとすれば、今野敏という優れた書き手は現れているが、作品の構想の骨太さとディテールのリアルさから言っても、佐々木譲は間違いなく第一人者である。

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【2009. 11. 16 (月)】 author : 六条亭
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十二月大歌舞伎の詳細な配役
昨日の歌舞伎座観劇時に入手した十二月大歌舞伎の詳細な配役が載っている本チラシが、歌舞伎美人にアップされています。こちらをご参照ください。なお、夜の部の開演時間が午後4時45分〜に変更になっています。

以下、メモ代わりに再度演目と配役をアップします。しかしながら、昼の部の宮藤官九郎の新作『大江戸りびんぐでっど』は一体どんな作品になるか、相変わらず分かりません。

歌舞伎座さよなら公演
十二月大歌舞伎

平成21年12月2日(水)初日〜26日(土)千穐楽

【昼の部】(午前11時開演)

一、操り三番叟(あやつりさんばそう)

三番叟 : 勘太郎
後見 : 松 也
千歳 : 鶴 松
翁 : 獅 童


二、新版歌祭文

 野崎村(のざきむら)

お光 : 福 助
お染 : 孝太郎
後家お常 : 秀 調
久作 : 彌十郎
久松 : 橋之助


三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん )

山蔭右京 : 勘三郎
太郎冠者 : 染五郎
侍女千枝 : 巳之助
侍女小枝 : 新 悟
奥方玉の井 : 三津五郎


四、大江戸りびんぐでっど(おおえどりびんぐでっど)

半助 : 染五郎
お葉 : 七之助
大工の辰 : 勘太郎
根岸肥前守 : 彌十郎
遣手お菊 : 萬次郎
丁兵衛 : 市 蔵
与兵衛 : 亀 蔵
佐平次 : 井之上隆志
和尚実は死神 : 獅 童
石坂段右衛門 : 橋之助
女郎お染 : 扇 雀
女郎喜瀬川 : 福 助
四十郎 : 三津五郎
新吉 : 勘三郎


【夜の部】(午後4時45分開演)

一、双蝶々曲輪日記

 引窓(ひきまど)

南与兵衛後に南方十次兵衛 : 三津五郎
濡髪長五郎 : 橋之助
平岡丹平 : 秀 調
三原伝造 : 巳之助
母お幸 : 右之助
お早 : 扇 雀


二、御名残押絵交張(おなごりおしえのはりまぜ)

 雪傾城(ゆきけいせい)

傾城 : 芝 翫
役者栄之丞 : 勘太郎
芝居茶屋娘お久 : 七之助
新造香梅 : 児太郎
雪の精 奴 : 国 生
雪の精景清 : 宗 生
雪の精 禿 : 宜 生


三、野田版 鼠小僧(のだばんねずみこぞう)

棺桶屋三太 : 勘三郎
お高 : 福 助
與吉 : 橋之助
大岡妻りよ : 孝太郎
稲葉幸蔵 : 染五郎
目明しの清吉 : 勘太郎
おしな : 七之助
さん太 : 宜 生
與惣兵衛 : 井之上隆志
凧蔵 : 猿 弥
辺見勢左衛門 : 亀 蔵
独楽太 : 市 蔵
番頭藤太郎 : 彌十郎
おらん : 扇 雀
大岡忠相 : 三津五郎

【2009. 11. 15 (日)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(8) | trackbacks(0) |
寿初春大歌舞伎夜の部の演目と配役(追記しました)
200911141616000.jpg

続いて、夜の部です。配役は追記します。

(追記)
演目と配役を追記しました。

【夜の部】(午後4時40分開演)

一、春の寿

梅玉
福助
雀右衛門

二、車引

梅王丸 : 吉右衛門
松王丸 : 幸四郎
藤原時平 : 富十郎
桜丸 : 芝翫

三、京鹿子娘道成寺
  道行から押戻しまで

白拍子花子 : 勘三郎
大館左馬五郎 : 團十郎

四、与話情浮名横櫛

切られ与三郎 : 染五郎
お富 : 福助
鳶頭金五郎 : 錦之助
蝙蝠安 : 彌十郎
和泉屋多左衛門 : 歌六

観劇料(税込み)
1等席  20,000円
2等席  15,000円
3階A席  6,000円
3階B席  3,000円
1階桟敷席  22,000円

(15日追記)
14日付けで歌舞伎美人に正式にアップされました。仮チラシも含めまして、こちらをご参照ください。
【2009. 11. 14 (土)】 author : 六条亭
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寿初春大歌舞伎昼の部の演目と配役(追記しました)
200911141618001.jpg

今日は歌舞伎座夜の部観劇です。

ようやく初春大歌舞伎の演目と配役が発表されました。仮チラシが出来ています。

(追記)
演目と配役を追記しました。

歌舞伎座さよなら公演
寿初春大歌舞伎
平成22年1月2日(土)初日〜26日(火)千穐楽

【昼の部】(午前11時開演)

一、春調娘七種

曽我五郎 : 橋之助
曽我十郎 : 染五郎
静御前 : 福助

二、梶原平三誉石切

梶原平三景時 : 幸四郎
梢 : 魁春
俣野五郎景久 : 歌昇
六郎太夫 : 東蔵
大庭三郎景親 : 左團次

三、勧進帳

武蔵坊弁慶 : 團十郎
源義経 : 勘三郎
富樫左衛門 : 梅玉

四、松浦の太鼓

松浦鎮信 : 吉右衛門
其角 : 歌六
お縫 : 芝雀
大高源吾 : 梅玉
【2009. 11. 14 (土)】 author : 六条亭
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豪華本「十五代目片岡仁左衛門」が12月上旬発売予定
雑誌「和樂」12月号に豪華本「十五代目片岡仁左衛門」の発売予告が掲載されています。篠山紀信撮影の写真集と関容子さんによる聞き書きの芸談の二冊をひとつにまとめた豪華本です。表紙はあの魅惑的なポスターになった六月の一世一代の河内屋与兵衛です。小学館から12月2日発売予定とのこと。

「十五代目片岡仁左衛門」写真集+芸談
写真集/B4変形・オールカラー・200ページ
芸談/B5版・176ページ2冊ケース入り
定価25,000円
【2009. 11. 12 (木)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(0) | trackbacks(0) |
山川静夫『大向うの人々』を読む
評価:
山川 静夫
講談社
¥ 1,785
(2009-09-29)
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Amazonおすすめ度:
大向こうにも、さまざまな人生が…

学生時代に歌舞伎の三階席に通うほど歌舞伎狂となり、そのまま大向うの会に入会を認められて、以降NHKの現役アナウンサーとして活躍しながらも、大向うであり続けた山川氏が綴る人情味あふれる歌舞伎座三階ばなしである。自らの青春時代とともにあった歌舞伎座三階席への心からの惜別と大向うに対する深い愛情で、大向うの人々が活写される。

歌舞伎を観劇していて、役者の台詞や出に何ともいえず絶妙なマでかかる大向うの掛声は、役者と観客が一体化する仕掛けとして歌舞伎ならではのものである。古今東西の演劇で、このような劇中の掛声は例がない。

しかしの成立と歴史は意外にも定説がないようで、山川氏は折口信夫の神楽の見物考から、悪態とほめことばが掛声の原点であり、歌舞伎に与えたさまざまな影響を論じている。例えば化粧声であり、悪態をつく助六の揚巻をあげる。また舞台中で役者同士がほめあう場合も多く、その名残が今でも贔屓の役者は誰それと、別の役者が名前を言う形で残っている。観客が役者をほめる声をかけるのは当然の成り行きで、当初役者の屋号がない時代は、例えば市川〜〜と呼んでいたようだという。

我々も日常生活で、例えば「よいしょ」と自らを励ますように声をあげることがよくある。また邦楽でも奏者が発する掛声は日本独特のものであるが、気合を入れ、息をあわせる役目を果たしているようだ。

これらを勘案して掛声の本義は次の五点であり、大向うの掛声が目指すものとびたりと符合すると筆者は指摘する(本書二○七ページ。ちなみに本書のページはすべて漢数字が使用されているのは好ましい)。

一、相手をほめ、励ます。
二、自分に気合を入れる。
三、自他を協調させ、潜在的なエネルギーを引き出す。
四、緊迫感を与える。
五、生きている喜びや活力を生み出す。

しかし、掛声はただかければいいというものではない。筆者は田之助が忘れられない大向うの声を引き合いに出し、「芝居のふんいき・状況に合った声の調子」「役者に対する温かいおもいやり」の二つに集約されるという指摘は永年大向うとして声を掛け続けてきた山川氏ならではの至言であろう。

私も時々声を掛けたくなる衝動にかられることがある。しかし、マは何とか分かっても、大向うの声の出し方には年季がいるようで、力一杯声を張りあげるのは舞台まで掛声が届かず、またかえって周辺の人々の騒音になってしまうという指摘は、私の観劇体験からも十分納得できる。大向うのあの艶と張りのある掛け声は、そうそう一朝一夕には出来ることではないだろう。

本書は歌舞伎座三階席とともにあった筆者の青春の書であると同時に、学生の筆者を温かく迎えてくれた大向うの人々の、粋でいなせな群像を貴重な写真とともに記録した記念すべき書である。歌舞伎を愛好する方は、一度は本書を手にとってみられることをお薦めする。きっと歌舞伎観劇がなお一層面白くなることであろう。

【補記】本日昼頃アップした記事は、レビューの表示が大変見難い状態になっていまして、ご迷惑をおかけしました。一旦当該記事を削除し、あらためて投稿し直しました。なお、当該記事にいただいたコメントはH・Nのご記載もなく、また具体的な例示もないまま単に「私はそうは思いませんよ」とのみありますので、管理人の判断で復活はいたしませんでした。

【2009. 11. 11 (水)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(8) | trackbacks(0) |
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