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【2017. 04. 17 (月)】 author : スポンサードリンク
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松本清張『神々の乱心』と原武史『松本清張の「遺言」』を読む
評価:
松本 清張
文藝春秋
¥ 700
(2000-01)
Amazonランキング: 6479位
Amazonおすすめ度:
松本清張の帝都物語?
清張未完の大作

松本清張の『対談 昭和史発掘』を読んだあと、かねて気になっていた遺作『神々の乱心』を読んだ。この作品は千七百枚におよぶ大作であるが、結局作者の病気のため未完に終わった。昭和史発掘で集めた資料をもとに、作者が二十年以上も温めていた天皇制と宗教を主題に構想した作品のようである。

大正末期に満洲で起こった新興宗教「月辰会」が昭和に入って埼玉県に本拠を置き、次第に軍部や宮中に食い入ってくることが本筋であるが、宮中の高位の女官に仕える部屋子が「月辰会」から帰る際に特高の警部に尋問されたことから自殺してしまい、警部と女官の弟がその謎を追いかけてゆくのが主なストーリー展開である。その途中栃木県県境で二人の遺体が発見され、その身元を調べるうちに、満洲での阿片密売に関わった関係者の一群に疑惑がわく。

作者が温めていた主題であるだけに構想は雄大であるものの、往年の清張の緊密な構成力は晩年であるだけに弱まっている。例えば「月辰会」の開教を突然大正時代末期の満洲へ飛んで描く唐突な展開や殺人事件の真相を意外に早く説明することなどである。小説としては読むと満足度は低いように思えた。しかしながら、それは読む方の歴史的資料の勉強不足に起因するようである。天皇制研究の先端を行く、気鋭の政治思想史学者原武史の新著『松本清張の「遺言」』を読むと、それがよく分かる。

原武史『松本清張の「遺言」 神々の乱心を読み解く』(文春新書)

原氏は、清張がこの作品を書く時にはまだ公開されていなかった昭和天皇の肉声を伝える資料を見ていないにもかかわらず、天皇と貞明皇后(皇太后)との間に宮中祭祀をめぐる確執、そして弟秩父宮との対立などを暗示している点などをあげている。しかも、月読命(ツクヨミ)を祭神とした「月辰会」は、実はツクヨミが秩父宮に擬せられるとともに、昭和天皇の皇位を秩父宮がつぐことを画策して、皇室の女官に近づき、いずれ二・二六事件をモデルにしたクーデター事件がクライマックスになったのではないかと推定している。

それ以外にも小説の舞台となる吉野や足利などを考察して、南北朝正閨論に触れるなど清張が使った膨大な資料と関係者へのインタビューを通じて、天皇制の深層を鋭く抉り出した清張の「遺言」が、本『神々の乱心』であった、と結論付けている。小説という形式をはるかに越えて、清張の近現代史となっていることを気付かされた。原氏の新書をあわせて読むとますます歴史の面白さ・深さを再認識するとともに、清張が偉大な小説家であるとともに歴史家・思想家であったことも理解できるに違いない。

【2009. 07. 10 (金)】 author : 六条亭
| 読書 | comments(2) | trackbacks(0) |
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この記事に関するコメント
六条亭さま
昔から古代史が大好き。
そのうちじっくりと読んでみたいと思っています。^^

| まるこ | 2009/07/14 9:58 PM |
> まるこ さま

清張さんは作家としてだけではなく、歴史家・思想家としても一流だと思います。

清張さんの古代史物もいいですよ。
| 六条亭 | 2009/07/14 11:49 PM |
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