徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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十七代目中村勘三郎追善二月大歌舞伎昼の部雑感
昨日の節分に通し観劇した二月大歌舞伎。全体を通してざっくりとした雑感(『口上』は除く)。まず昼の部。


『爪王』は、戸川幸夫原作を若き平岩弓枝が脚本を書いた舞踊劇。雪山を背景にした鷹(七之助)と狐(勘太郎)の激しくもまた美しき戦いを描く。七之助が鷺娘のような繊細でダイナミックな所作を見せる。長唄も名曲であり、約四十年の間歌舞伎座で上演されなかったのが不思議なほどである。彌十郎の鷹匠が手堅い。錦之助の庄屋は、先代錦之助が演じたゆかりの役であるとのこと(錦之助の『口上』による)。

『俊寛』はまたかとも思う演目であるが、先代最後の舞台であったと思えばやむを得ない。勘三郎の俊寛は、絶海の孤島に一人残された絶望と諦念、成経と千鳥夫婦の幸せを祈る心理がない交ぜになた人物造形である。左團次、梅玉ともに手馴れた役で危なげがない。

『ぢいさんばあさん』は宇野信夫脚本がうまく出来ているとは思うが、こう頻繁に上演されるほどの名作とも思えない。もちろん仁左衛門と玉三郎の夫婦が、夫の京都勤番中に諍いから同僚を殺め、他藩にお預けになり、赦免されて三十七年ぶりに江戸の旧宅に戻り、妻と再会する物語に展開はしみじみとした余韻を残すものの、仁左衛門と玉三郎の今の円熟の芸を味わうにはいかにも内容に厚みがない。しかも、玉三郎のるんは、前半が匂うがごとき若妻であるに対して、後半の老女は以前の上演に比べても顔のつくり、鬘など老けを強調し過ぎるように感じられた。三十七年の対比は十分納得できる演技であったが。

仁左衛門は前半よりも後半の老け役により芸の年輪を感じさせた。勘三郎の下嶋は放埓な侍である。

【2010. 02. 04 (木)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(16) | trackbacks(0) |
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この記事に関するコメント
久しぶりでございます。昼をごらんになって、なにやら今ひとつ物足りなくお感じの様子ですが(私の思い過ごしでしたら失礼)21日は相当満足されることと存じます。私はちょっと伝ありで5列中央で拝見でしたが、次郎左衛門ではありませんが、すっかり腑抜けで帰ってまいりました。三つとも良かったというか、バランスがよい演目の並びでしたが圧巻は最後。「籠釣瓶」はともかくあの八橋の笑みに「ほーぉっ・・」でございました。縁切りの場面もそれは贅沢な配役で厚みのある舞台でした。ともかくこれから十年やそこらではこれ以上の配役は望めないと思いました。懲りずにもう一度見たいと思っていますが・・。
| 二条 | 2010/02/04 11:37 PM |
> 二条 さま

こちらこそご無沙汰をしています。同じ日にご観劇されていたんですね。

昼の部は演目がどうも物足りませんでした。仁・玉・勘のトリオが揃っていて、『ぢいさんばあさん』では食い足りません。

夜の部は『壺坂霊験記』がほとんど三津五郎さんと福助さんの二人というのが地味でしたが、『高杯』でほっと気分転換。『籠釣瓶花街酔醒』は贅沢な配役で、脇役の隅々まで揃っていまして、濃密な二時間でした。ご指摘のようにこれほどの舞台は当分観ることが出来ないのでは?と思いました。是非もう一度ご覧になる機会が出来ればよいですね。
| 六条亭 | 2010/02/05 12:28 AM |
六条亭さま
わたしが玉三郎さん大好き^^になったのが、映像ではありましたが、『籠釣瓶花街酔醒』でした。
長年切望していた舞台が観られます。それも最高の配役で。
他にも観たいものはありましたが、玉三郎さんが観られるだけでも幸せだと納得しています。(笑)
20日が待ち遠しいです。
それにしても、こちらは大雪注意報が・・・・
| まるこ | 2010/02/05 7:47 AM |
六条亭さん、こんにちは!
当初予定していた3日の夜と4日の昼に加えて、夜の部がとても良かったので4日の夜も幕見で観劇しました。

「じいさんばあさん」の玉三郎さんは確かに老けを強調しすぎているように思いました。最初のるんが子どもを産んだばかりということは十代後半から二十代前半と考えるのが妥当でしょうし、そうすると37年後のるんは60歳までになります。客席の大半のご婦人の年齢を考えると、60歳のるんをあそこまで老けさせるのはどうかと思いました。
先代の勘三郎追善公演なら「俊寛」の方が「じいさんばあさん」よりも後に来るべきではないかと思ったのですが、どうなのでしょうか?
| 紅娘 | 2010/02/05 4:19 PM |
> まるこ さま

今回の『籠釣瓶花街酔醒』は三日の観劇時で、既に内容の濃い舞台になっていましたから、20日にはいったいどうなっているんでしょうか?

とにかく凄いですよ。20日が待ち遠しいですね。大雪注意報は気になります。
| 六条亭 | 2010/02/05 9:24 PM |
> 紅娘 さま

籠釣瓶を連日でご覧になったのですか!まあそれほど今回の舞台は中身が濃いものでしたね。

『ぢいさんばあさん』のるんの老けの作りは、同じように感じられましたか!若妻時代から37年後の再会を描いているのですから、ご指摘のような60歳くらいであろうとの年齢推定が出来ますね。ですから、老け過ぎのように見えますよね。

『ぢいさんばあさん』も先代勘三郎が得意にしていた演目のようですから、問題ないと思います。kabuki on the webの歌舞伎公演データベースにより検索しますと、先代は77年1月の歌舞伎座で歌右衛門のるんと一緒に演じたのが最後のようです。

http://www.kabuki.ne.jp/kouendb/
| 六条亭 | 2010/02/05 9:40 PM |
ご教示ありがとうございます。この検索データベースによりますと、先代勘三郎の最後の『じいさんばあさん』は82年12月南座(おそらく顔見世)のようです。これによると尾上梅幸のるん、現勘三郎の弟宮重久右衛門、現仁左衛門の宮重久弥とあります。これでなぜ『じいさんばあさん』が最後なのかよくわかりました。ありがとうございました。
| 紅娘 | 2010/02/05 10:48 PM |
> 紅娘 さま

いえいえ、かえってご教示ありがとうございましたm(__)m。歌舞伎座の公演ばかり調べて、82年12月の南座公演を見落としました。

その時は梅幸さんのるんだったのですね。しかも現勘三郎さん、仁左衛門さんが出演していたのですね。いずれにしましても『ぢいさんばあさん』が先代勘三郎さんゆかりの演目であることがよく分かるデータベースでした。
| 六条亭 | 2010/02/05 11:00 PM |
おじゃまします。
『ぢいさんばあさん』は青空文庫で森鴎外の原作が読めます。それによると、るんは29歳にいちど勤めをやめてそれから結婚したので、かなりの晩婚、るんがお褒め状をいただいたのは71歳という設定らしいです。

老けメイクは、わたしはべつにイヤでもなく、伊織がつくづく顔を見て、「変ったなあ」という言葉に、客席全体が「まったくまったく」と納得しているようで、面白いと思うのですが、この原作を読んで、生かしてもらいたかったことがいくつか。

「爺いさんと自分との食べる物を、子供がまま事をするような工合に拵えることになった。」

「爺いさんは眼鏡を掛けて本を読む。細字で日記を附ける。毎日同じ時刻に刀剣に打粉(うちこ)を打って拭(ふ)く。体(たい)を極(き)めて木刀を揮(ふ)る。婆あさんは例のまま事の真似をして、その隙(すき)には爺いさんの傍(そば)に来て団扇(うちわ)であおぐ。もう時候がそろそろ暑くなる頃だからである。婆あさんが暫(しばら)くあおぐうちに、爺いさんは読みさした本を置いて話をし出す。二人はさも楽しそうに話すのである。」

おととしの南座顔見世の舞台の前に読んで、こういうシーンがあるかなと期待していたのですが、ちょっとちがっていて、まあ、映画じゃないんだから、と納得はしました。
それにしても、るんの「あなたぁ」という叫び声、はやく、録画放映してもらって、ひとりでおもいきりぼろぼろ泣きながらみたいものだと思っています。
そのまえに、あと何回か、拝見する予定ではありますが。
| 京にんじん | 2010/02/07 12:31 AM |
六条亭さま
こんにちは。
私は20日に昼の部、25日に夜の部を観劇予定です。
夜の部は友人と父と3人で歌舞伎座に行きますが、六条亭さまや皆様のコメントを拝見して一気に期待値が上がりました。

今からとっても楽しみです。

| Mickey | 2010/02/07 8:45 PM |
> 京にんじん さま

そうですね、森鴎外の原作にあたるのを怠っていました。ご教示ありがとうございますm(_ _)m。青空文庫は、以下のURLで読むことができますね。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/43030_17421.html

ご指摘のようにるんが伊織に嫁いだのが29歳、伊織が京都に大番頭の勤めの代人に上がったのが34歳ですから、二人の再会時には伊織72歳、るん71歳とわかりますね。

ですから、玉三郎さんが原典にあたり、今回年齢にあった老けの作りをした可能性が高いですね。

ただ、そこが練達の作家宇野信夫の手になる台本は相当原作に手を加えています(例えば桜、伊織の代人の理由を弟の喧嘩にしているなど)。舞台効果を考えての脚色でしょう。京にんじんさまの期待した場面もないのですね。ですから、以前の玉三郎さんの上演の時のように年齢はもう少し若く演じてもこの演目は一向に差し支えないとも思いますが。
| 六条亭 | 2010/02/07 10:51 PM |
>  Mickey さま

昼も悪くはないのですが、なんといっても夜の『籠釣瓶花街酔醒』が素晴らしい出来で、何回も観てみたくなりますよ。

あまりに濃い舞台のため、まだ夜の部の感想をまとめきれませんが(^^;)。
| 六条亭 | 2010/02/07 10:54 PM |
長くなってすみませんが、もうひとこと。
観劇歴が短いので、「以前の」舞台というと、おととし南座顔見世になるので、残念なことに、すでにめいっぱいの老け顔でいらっしゃいました。
美しい若妻との対比が眼目と思うので、負け惜しみのようですが、これでよいと思います。なにしろ、玉三郎さんのお元気な舞台が見られるだけで、幸運に感謝している当方なもので。

宇野信夫のこの脚本には、戦後の「明るい民主主義」的な雰囲気があるように思われます。「わたしたちだけの新しい生活」というのが、当時は、新鮮にひびいたのではと思われます。いまとなっては、なつかしいような、ほほえましいような。
そして、原作にはせりふはほとんどないのに、よくこしらえたものだと感心します。さすが「昭和の黙阿弥」といわれただけのことはあります。

長々おじゃましました。夜の部のご批評など、楽しみにしています。
| 京にんじん | 2010/02/08 9:39 PM |
> 京にんじん さま

たびたびコメントいただき、恐縮です。

私は一昨年の南座の顔見世を観ていませんので、「以前の」という表現が不正確で申し訳ありません。南座の時も玉三郎さんはすでにめいっぱい老け顔でしたか!

私はどうしても実際に観て、また映像でも確認できる2002年4月歌舞伎座上演時のイメージが強いものですから。

http://www.kabuki-za.co.jp/info/bkkougyou/0204/4kg_1.html

おっしゃるように今はお元気な玉三郎さんの舞台を観ることができるだけで満足し、感謝しなければいけないでしょうね。

宇野信夫の脚本はどの演目も当たり外れがありません。『ぢいさんばあさん』も森鴎外の原作のエッセンスを活かしながら、巧みな作劇術で、前半と後半の対比が卓抜ですね。やはり「昭和の黙阿弥」と称されるだけあります。

「明るい民主主義」的雰囲気を感じられるとは、すぐれた感性をお持ちですね。しかし、そのような雰囲気が作者の狙いにあったとしても、この脚本が現在まで繰り返し上演されるのは、37年後の老いた夫婦の再会というすぐれて普遍的な主題に共感できるからでしょう。
| 六条亭 | 2010/02/08 11:41 PM |
六条亭さま こんばんは。
遅ればせながら本日昼の部を見てまいりました。
今日は芝翫さんか体調不良の為口上を休演されました。早く良くなられることを願ってます。
爪王は七之助さん演ずる鷹の吹雪が、顔立ちとお化粧、衣装から若く気高い鷹のイメージにぴったりで美しく印象に残りました。
俊寛は勘三郎さんがお父様のことを思いながらの熱演がとてもよく伝わってきました。今まで見た中で一番感動した俊寛僧都でした。
ぢいさんばあさんは初めて観ました。あの二人しか醸し出せない夫婦の雰囲気がとても好きです。玉三郎さんの老け顔はそれほど気になりませんでした。ぢいさんとの老けとのバランスはあれでよいのかと思ったのですが。でもやっぱり、阿古屋とか揚巻の玉三郎さんが一番よいですが。
じみな演目の昼の部でしたが、心地よい感動がしみじみと残り、楽しみました。
| Clementine | 2010/02/11 9:41 PM |
> Clementine さま

昼の部観劇のご感想ありがとうございますm(_ _)m。

芝翫さんが口上、休演ですか!今年の冬は寒暖の差が激しいですから、大事をとって休養される方がよろしいですね。

『爪王』は正直期待していませんでしたから、七之助、勘太郎兄弟の激しくもまた爽やかな踊りが印象に残りましたね。とくに七之助さんはおっしゃるようにイメージにぴったりでした。

勘三郎さんの俊寛は人間味溢れる造型で、先代のよき追善になったと思います。

『ぢいさんばあさん』はほのぼのとした後味のよい演目なのですが、どうもせっかくの仁・玉・勘の顔合わせにしては物足りない、と不満を言いつつもやはりほろっと来ました。

玉三郎さんは三月に覚寿をはじめて演じますが、これから老け役も演じる機会も多くなるのでしょうね。まだまだ八ツ橋、揚巻や阿古屋を演じ続けて欲しいと思いますが。
| 六条亭 | 2010/02/11 10:35 PM |
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