徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2017. 04. 17 (月)】 author : スポンサードリンク
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『女優 岡田茉莉子』(文藝春秋)を読む
評価:
岡田 茉莉子
文藝春秋
¥ 3,000
(2009-10)
Amazonランキング: 46508位
Amazonおすすめ度:
偉大なる女優の偉大な業績

華麗にして大輪のごとき女優岡田茉莉子の自伝である。ハードカバーで590ページ近い大作。本音のところはそれほど期待して読んだ訳ではない。少なくとも私は岡田茉莉子の映画全盛時代を観ていない。本書を読むまで松竹専属でメロドラマの主役を演じた以前に東宝に属していたことすら知らなかったくらいである。東宝時代には不良少女や芸者の役が多く、フリーになってから後松竹に迎えられた、という。しかし、この自伝の読後感は大きな時代をくぐり抜けた人の記録として、読みでがあり重厚な印象を受けた。

岡田茉莉子の父岡田時彦がサイレント時代に美男俳優として名をなし、病気のため夭逝し、その父を見つける旅が本自伝の底流をなす一つのモチーフである。宝塚歌劇のスターだった母は父のことを語らず、偶然に見た溝口健二監督の『滝の白糸』の主演男優こそが実父であったことを告げられる。そして、父を映画の世界に誘った谷崎潤一郎から芸名をもらって映画界入りする。谷崎潤一郎との写真が貴重である。また35年振りに遺族の手元にもどった谷崎潤一郎の岡田時彦への弔辞が名文である。「君ハ幻戯ノ名優ニシテ而モ世ヲ去ルノ蚤(ハヤ)キコト幻影ノ如シ」

無声映画時代の父の代表作の数々を撮った小津安二郎監督作品に出演した際に、小津の口から生前の父の思い出を語り聞かされ、失われていた父・岡田時彦のイメージを見出す。そして生涯の伴侶となる吉田喜重監督と組むことにより出演映画100本記念映画『秋津温泉』を撮り、岡田茉莉子は大きく女優として成長してゆく。絶えず「岡田茉莉子を岡田茉莉子が演じる」過程が詳細に語られる。

本自伝の素晴らしい点は、己を客観的に見つめる冷静な目であり、硬質でありながら達意の文章で綴られているところが読む者を惹きつけてやまない。自伝でありとともに、一人の女優を通じて書かれた映画全盛時代から衰退期までの日本映画の歴史であり、かつ類まれなる映画監督吉田喜重の格闘の記録でもある。吉田喜重監督、岡田茉莉子主演の映画を観たくなってしまった。

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【2010. 03. 09 (火)】 author : 六条亭
| 読書 | comments(6) | trackbacks(0) |
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【2017. 04. 17 (月)】 author : スポンサードリンク
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この記事に関するコメント
岡田茉莉子さんのトークイベントへ行こうと思い、ブログ検索をしていましたら、こちらへたどり着きました。
素敵なブログで楽しませていただき、ありがとうございます。
| bob | 2010/03/10 3:33 PM |
> bob さま

コメントありがとうございますm(_ _)m。

岡田茉莉子さんの魅力をあますところなく伝えたこの自伝、是非お読みください。
| 六条亭 | 2010/03/10 9:28 PM |
六条亭さま

岡田茉莉子さん、素敵ですよね。私は岡田茉莉子さんと吉田喜重さんご夫妻の夫婦の在りようが、好きです。

随分昔のことですが、日経夕刊の「プロムナード」というコラムに監督がエッセイを連載されてました。
その中の印象深い一編を記憶しています。ご紹介させてください。
スペインかどこかの寒村をご夫妻で旅行中、出会った少年に突然、少年が連れている牛を買ってくれ、と言われ、旅行者なのにと困惑する監督に、岡田茉莉子さんが、「買ってあげたら」と答えるんですね。
何故と思いながらも、監督は20ドルだか30ドルだかのお金を渡して、その牛を買うんです。その時監督にも「買ってあげたら」と言った妻の気持ちが理解できて、そのまま牛の綱を離して、「早くお帰り」というんですね。
その時、来た道を戻っていく牛に夕日が映えて、今起こったことはすべて夢のようだった気がする、とそんな話です。

私の下手な説明では情感に欠けますが、エッセイなのに、何かとても美しい短編映画を見たような気がしました。

吉田喜重監督は日本国内よりも外国でのほうが評価が高いと聞いたことがありますが、日本でもっと活躍の場があればよかったのにと思います。

岡田茉莉子さんつながり(!?)で、長々と失礼しました。

PS 私も、今朝、ハラハラドキドキしながら、四月歌舞伎座千秋楽の1部、2部のチケットをwebで入手しました。千秋楽に歌舞伎座に行けるだけで幸福です。吉見会分も含めて四月は、初日・千秋楽を含めて、都合三度も歌舞伎座へ行くことになりました(笑)
| シンシア | 2010/03/11 1:22 PM |
> シンシア さま

日経夕刊の「プロムナード」の吉田喜重監督のエッセイのご紹介、ありがとうございます。

このエピソードによく似た詩情溢れるものが本自伝の481ページにあります。ご夫妻でナイルのクルージングでルクソールとその対岸の死の谷に行った帰りに、兄妹から子羊を買うエピソードです。

夢、そして神が通っていったのかもしれない、というのですね。忘れられないエピソードです。ご興味がおありになれば、是非本自伝をご覧下さい。

(追記)シンシアさまも大楽の一部、二部のチケットを無事確保されたのですね。私は所用で二部からの観劇予定です。
| 六条亭 | 2010/03/11 11:48 PM |
六条亭さま

ご教示ありがとうございました。きっとご指摘の自伝の中の話そのものだと思います。
「スペイン、牛」は、私の記憶違いです。何と私の記憶の曖昧なこと! 詩編23篇のイメージと記憶していたのに、「牛」はないですね(笑)お恥ずかしい限りです。

しかし、長く記憶に留めていた一篇のエッセイを、六条亭さまと共感できて、思いもかけない喜びです。
本を探して読みたいと思います。
| シンシア | 2010/03/12 9:59 AM |
> シンシア さま

このエピソードは私も大変印象深たったので、コメントをいただいてすぐ該当ページを見つけることが出来ました。

おそらく本自伝のとおりエジプト旅行時に子羊を買うエピソードで間違いないでしょうね。この自伝を読んできて、後半部に描かれるだけに吉田喜重監督と岡田茉莉子夫妻の素敵な夫婦関係を読み取れるものですね。是非お手にとってご覧ください。
| 六条亭 | 2010/03/12 10:04 PM |
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