徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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『道行初音旅』『川連法眼館の場』−第八回亀治郎の会雑感(その一)
19日に観劇した亀治郎の会の雑感です。注目は亀治郎がいよいよ伯父猿之助の最大の当り役である『川連法眼館の場』−いわゆる「四の切」に挑むことである。海老蔵が猿之助に教えを乞うて既に数回演じているこの演目を、今年復活通し狂言(『金幣猿島郡』『加賀見山再岩藤』)などを次々と手掛けている亀治郎がついに満を持して「四の切」に挑戦し、しかも今月新橋演舞場の花形歌舞伎の海老蔵と競演となるのも話題であった。清元延寿太夫、竹本葵太夫の出演も得て、本興行並みの内容である。

『道行初音旅』

芝雀の静御前。芝雀のおっとりとした美しさながらも、底に秘めた義経の愛妾という気位の高さ、賢さが次の「四の切」を通じて表現されている。往々にして主従とは見えない舞台があるが、この二人はお似合いである。亀治郎は台詞回しが猿之助にますます似てきており、顔の小ささを別にすると猿之助が踊っているような錯覚を覚える。

しかも、亀治郎の踊りの切れは抜群であり、「軍物語」などここまで鮮やかな所作で物語った所作ははじめて観た。ただ、通常清元と竹本の掛け合いで踊るところを意図して清元のみで通したのは盛り上がりという点には欠ける(清元がたとえ四挺五枚と増やしていてもである)。

また静御前の踊りが通常よりも長くなっていたように思うが、この辺は確認出来ていない。藤太も出ないのは新橋演舞場と同じで、板付きで幕が下りる。亀治郎の忠信が海老蔵に比べて分が悪いのは華やかさであろうか?

『川連法眼館の場』

法眼(寿猿)と妻飛鳥(吉弥)の登場場面は新橋演舞場と同様短縮版で、二人の役者にはやや気の毒である。染五郎の義経が意外に線が細く、精彩がなかった。

さて本物の佐藤忠信であるが、この生締めの姿であると、いかにも亀治郎の小柄な部分が損をしている。台詞回しも猿之助そのままであり、もう少し独自の工夫があってもよかったように思う。

狐忠信は、高音の狐言葉は亀治郎が女形を演じた時の口跡を使っているように思えたのが目新しいが、観客からの笑いも少なく違和感なく受け入れられたように思う。身体能力の高さは驚異的なもので、欄干渡りや欄間抜け、二度の海老反りなどケレンを駆使して、親狐いとしさの思いを全身で表現していた。膝を使って回転するところは何回回ったか分からないくらいだった。

義経から初音の鼓を手渡されて大喜びして、法師たちとの立ち回り、そして歓喜の宙乗りと一気にクライマックスを迎えて、花吹雪のなか宙乗り小屋に入っていった。しかし、宙乗りで観客から手拍子が出たのは、たとえ個人の会にしてもやり過ぎではないだろうか?

この「四の切」は総合的には亀治郎の方に軍配が上がるだろうが、しかしそれでもなお、海老蔵の舞台の魅力にも抗し難いのは海老蔵天性の役者としても華であろう。



【2010. 08. 22 (日)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(8) | trackbacks(1) |
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【2017. 04. 17 (月)】 author : スポンサードリンク
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この記事に関するコメント
同感ですっ。
海老蔵さんの華は誰にもないものであって、さすがの亀ちゃんもそこはどうしようもありませんね。
膝回転、すごかったですね!! 初日からあんなに飛ばして大丈夫かしらと心配しましたが、千穐楽はもっと気合が入っていたように思いました。
ラスト、やっぱり手拍子になったのですね。私も「これってどうなの?」と大いに疑問を感じました。
| SwingingFujisan | 2010/08/23 9:13 AM |
> SwingingFujisan さま

初日と楽日の両方ご覧になったようですね!

忠信は亀治郎さんの実力は十二分に出ていたのですが、舞台映え・華は海老蔵さんを越えるまでに至っていませんでしたね。これはニンの問題でもあるでしょうか?

それでも宙乗りも含めてケレンはどれも身体能力の素晴らしさが遺憾なく発揮されていました。

しかし、宙乗りで手拍子はどうもいただけませんでした。古典の千本桜ですからね。
| 六条亭 | 2010/08/23 9:36 PM |
私も初日に観劇し、すばらしい舞台を堪能しました。宙乗りの手拍子は違和感がありましたが、亀治郎さん自身が手を動かしてあたかも手拍子を誘っているようにも見えました。本当に誘ってらしたのかどうかはわかりませんが・・・
| ユキ | 2010/08/25 10:08 AM |
> ユキ さま

初日をご覧になったのですね。亀治郎さんの源九郎狐はしなやかなで、精彩がありましたね。

宙乗りでの手拍子にはビックリしました。亀治郎さんが煽った訳ではなく、自然発生的なものだとは思いますが。
| 六条亭 | 2010/08/25 10:01 PM |
私も六方に手拍子するものではないと思いますし、あの六方の手拍子は自然に発生したものだと思いますが、なんというか、亀治郎さんの手の動きが手拍子を促しているように見えなくもなかったです。「煽った」という感じではなく、「どうぞ、どうぞ」というような感じといったらいいでしょうか、あくまで私の受けた印象ですが。

私が狐六方の手の動きをよく知らないためにそのように見えたのかもしれませんが、私同様によく知らないお客さんの中には「ん?手拍子した方がいいのかな?」と思った人がいたかもしれないと思います。
| ユキ | 2010/08/31 12:01 AM |
> ユキ さま

再度のコメントありがとうございます。

あの手拍子は亀治郎さんのファンの方々から自然発生的に出たものと私が思ったことは前のコメントで書きましたとおりですが、宙乗りでの所作が「どうぞ、どうぞ」という感じに見えたというご指摘はなるほどと思います。

亀治郎さんのファンの方でもこの四の切は初役ですから、ここは手拍子をした方が良いと思われた、ということはありえますね。
| 六条亭 | 2010/08/31 9:40 PM |
ご無沙汰していますm(__)m
私の体調もPCの調子もよくなくてブログアップが滞っていましたが、買い替えたPCもようやく始動させることができ、ようやく記事アップもおっくうでなくなってきました。
一ヵ月遅れですが「第八回亀治郎の会」も連続してアップしましたので、いつものようにう記事のURLを入れておきます。
プログラムも思い切って買って読みました。「亀治郎かく語りき」のところでは、猿之助の芸の継承を宿命としてとらえていることがはっきりと語ってました。昨日のNHK「アサイチ」にも登場してテンションアップ(実はその前日にさいたま芸術劇場で遭遇。それも記事アップしてますが(^^ゞ)。ちょうど連続アップのタイミングなので感無量でした。
宙乗りでの所作については、拙記事にも書いたのですが、私には鼓を打っているように見え、それを繰り返していたのは親子の会話がはずんでいるように思えました。
Nさまの『市川亀治郎東照宮奉納歌舞伎』レポートのご紹介もありがたいです。澤瀉屋の芸の継承が亀治郎や海老蔵、お弟子筋と多くの人材に担われているのも嬉しい限りです。
| ぴかちゅう | 2010/09/25 8:12 PM |
> ぴかちゅう さま

こちらこそご無沙汰をしています。歌舞伎座閉場後は観劇回数が自然と減りまして、お会いできる機会は少なくなりましたね。

ご体調とともにPCも不調だったとのこと、今年の夏の暑さは格別でしたから、人間だけでなくPCもネを上げたものと思います。それでも新しいPCに買い替えられたようで、よかったですね。幸か不幸かMy PCは今のところどこといって悪い箇所はなく、当分XPマシーンのままになりそうです(^ ^;。

亀治郎の会の感想連続アップはご苦労様です。私はその二が滞っているままです。プログラムも買いませんでしたから、情報はありがたいです。

亀治郎さんは間違いなくライフワークとして澤瀉屋の芸の継承に取り組んでゆくものと思われます。今後の動向が要注目ですね。

TBをうちました。
| 六条亭 | 2010/09/27 12:04 AM |
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10/08/21 第八回亀治郎の会の「四の切」、猿之助の芸の継承宣言!
{/v/} この8月は新橋演舞場の海老蔵の「四の切」との対決が話題だった。 「亀治郎の会」は国立劇場大劇場においての開催となり、「あぜくら会」メンバーへの割引案内もされるようになり、立派な企画になってきたなぁと感心してもいた。その「あぜくら会」メンバーとし
| ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記 | 2010/09/27 12:28 AM |
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