徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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『女殺油地獄』−二月花形歌舞伎第二部の簡単な感想
二日に第一部『お染の七役』、七日に第二部『女殺油地獄』を観劇したルテアトル銀座の二月花形歌舞伎。東京での二月の歌舞伎公演はこの花形歌舞伎のみである。名古屋の御園座では團十郎と梅玉などを中心とした座組み、大阪松竹座では仁左衛門が座頭となって昼夜に仇討狂言の通しを上演していることに比べれば、染五郎と亀治郎が主役の二つの狂言を一本づつ二部に分けて並べただけのこの公演はいかにルテアトル銀座という小規模の劇場とはいえ、冒険ではある。しかも、この劇場は回り舞台もセリ・スッポンもなく必ずしも歌舞伎公演に相応しい劇場とは言い難い。早替りと舞台転換に支障はないのか?と一抹の懸念材料があった。

ところが、劇場内に入ってみると一月の玉三郎特別公演ではなかった鳥屋付きの仮設花道が作られており、しかも、舞台を高くして、回り舞台まで設置しているのである!これは大成功であり、歌舞伎上演にかける舞台関係者の並々ならぬ熱意の現れであろう。大いに敬意を表したい。

それでは実際の舞台の成果やいかにとなるのだが、期待は半ば以上満たされたが、課題は残ったというところである。順序は逆ながら第二部『女殺油地獄』から簡単に見て行きたい。染五郎が仁左衛門から教えを受けて取り組んだこの与兵衛、最初の時の上演は観ていないが、このどうしようもない不良青年の放埒とそのあげくのお吉殺しに至る役は染五郎のニンにあっている役であり、その柔らかさと悪の色気はよくその教えを吸収しているものと感心した。もちろん、実年齢に近いこともあり、一体この青年の本性がどこにあるのか分からないほどコロコロと変わるさまも的確に演じている。ただ、一年半前に仁左衛門渾身の一世一代の与兵衛と比べてしまうのは酷ではあろうが、仁左衛門にあった虚無的とも形容できる、恐ろしいまでの妖気と狂気はまだ十分とは言い難く、その点はとくに油まみれになりながらのお吉殺しに至るまでの場面ではそう感じた。

今回は冒頭に「野崎詣り舟遊びの場」が、また「豊島屋油店の場」の場面のあと「北の新地の場」「豊嶋屋逮夜の場」が付き、物語の結構は整っていて、分り易くなっているのは評価したい。ただしそれだからと言って与兵衛の複雑な性格付けが膨らんだかと問われれば、必ずしもそうとは言えないところが難しい。凄惨な殺しの場から遁走することで終わる方がこの狂言の不条理さがよく出ているようにも思う。

亀治郎のお吉は与兵衛より年上の面倒見がよい人妻の色気とその反面の危うさが感じられはまり役。欲を言えば上方狂言の味がまだ十分ではなく、この点があればさらによくなるであろう。秀太郎の母おさわはさすがに申し分なく、情に篤い彦三郎の養父徳兵衛とあわせて花形のなかではひと際大きく見えて、狂言全体に立体感が出ている。

亀鶴の兄太兵衛、宗之助の妹おかちともに適役で、結構である。とりわけ亀鶴が弟の身を思いやる兄を好演。門之助の豊嶋屋七左衛門も堅物ながら妻思いの一途な商人になっており、錦吾の叔父森右衛門、高麗蔵の芸者小菊も登場場面が増えたことから、人間像に膨らみが出ている。

観劇した七日の第二部はまだ空席があり、勿体無い気がした。今後の歌舞伎を考える際には是非観ておいてもらいたい花形歌舞伎である。

【2011. 02. 09 (水)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(6) | trackbacks(0) |
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この記事に関するコメント
六条亭様

ご感想、投稿いただきありがとうござます。仁左衛門丈の舞台が印象深いだけに、「染五郎丈はどうかな」と思っておりました。興味深く読ませていただきました。20日に観劇する予定です。
| ゆうすけ | 2011/02/11 7:19 PM |
> ゆうすけ さま

仁左衛門丈の一世一代の印象が強いなかで、染五郎丈の果敢な挑戦の舞台です。

是非お楽しみください。
| 六条亭 | 2011/02/11 11:16 PM |
5日に観劇しました。染五郎さんが、途中で、客席を歩く時に、そこの綺麗なお姉さんって、からかっていたのが、牧瀬里穂さんでした。それと、染五郎さんの子供2人が演劇中に廊下で遊んでるらしく、キャッキャッした声が、聞こえました。座頭の子供には注意出来ないんでしょうか?
| ぴーちゃん | 2011/02/12 12:43 PM |
> ぴーちゃん さま

新PCの導入のドタバダでコメントの返しが大変遅くなり失礼いたしました。

染五郎さんが油まみれの殺しの後、一転して晴れやかに客席を歩く時は大歓声でしたね。牧瀬里穂さんも観劇されていたのですね!

舞台が開いている時に子供さんの声が聞こえたのであれば、気になりますよね。もし座頭の染五郎さんのお子さんでしたら、問題ですね。
| 六条亭 | 2011/02/14 11:31 PM |
六条亭様

本日夜の部見てまいりました。
染五郎丈、全体としては頑張ってchallangeされていたと思います。後半「豊島屋油店の場」からよくなったと思いました。酷とわかっていても仁左衛門丈の印象があまりに強く、自然と比較してしまい、前半は、ドラ息子の勢いがたりないような気がしました。声のトーンと関西弁のセリフ回しの違いからそう感じたように思います。気の小さいところもいっぱいある放蕩息子ではありますが、少しなよなよしてるように思う場面もありました。

秀太郎さんん、彦三郎さんお二人のおかげで舞台にもにかなり深みができましたね。

一度結末まで見てみたかったので「北の新地の場」「豊嶋屋逮夜の場」の場が追加で、念願かないました。
| Clementine | 2011/02/18 10:40 PM |
> Clementine さま

詳細な観劇のコメント、ありがとうございます。

染五郎丈の挑戦を私も評価したいと思います。何しろ21年6月のあの仁左衛門丈の与兵衛と比べられることを覚悟して演じているのですからね。

上方言葉のセリフ回しがまだ身についていないといいますか、不自然な点などはまだまだ改良の余地はあります。しかし、実年齢に近い放埓無頼の与兵衛を是非ご自分の役として欲しいと切に願っています。

今回は秀太郎丈と彦三郎丈の夫婦には泣かされました。このお二人が舞台に厚みを増すことに大いに貢献していますね。
| 六条亭 | 2011/02/18 10:51 PM |
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