徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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アバド&ミラノ・スカラ座のヴェルディ『レクイエム』−クラシック音楽の思い出(その五)
クラシック音楽愛好の歴史を時々思い出として綴っているが、赤川次郎氏のコラムに関する記事をきっかけにミラノ・スカラ座の初来日引越し公演に話が飛んだついでに、その時のアバドのヴェルディ『レクイエム』の特別演奏会について、書いてみたい。これは以前にも断片的に書いたことがあるので、重複する部分があったらご容赦下さい。

1981年9月3日の東京文化会館での特別演奏会は、開演前から期待で胸膨らむ思いであった。言うまでもなく、ヴェルディの『レクイエム』は、モーツアルトとフォーレと並ぶ三大レクイエムとして有名であるが、とりわけオペラの作曲家のヴェルディらしく非常に劇的で、まさにオペラ的である。しかもこの曲をアバドが大変得意にしているばかりでなく、この日はソプラノ・パートをミレッラ・フレーニが歌うことだった。フレーニはカラヤンともこの曲を録音していて、大変華麗な名演だった。

フレーニの声は、清楚な美声であるばかりでなく、大変丁寧かつ細やかな歌いぶりで、普通イタリア人ですら十分に聴き取れないことが多いと言われるオペラの歌詞が、彼女の場合我々でもその明晰な発音でよく聴き取れるのである(意味は分からなくとも)。しかも、若い時から世界的スター歌手として活躍を続けていても、少しもその声に衰えが見られないばかりか、円熟とともにますますその声に艶と奥行が出てきた稀有な歌手である。

この引越し公演の時はもっとも油の乗った時期でもあり、『ボエーム」のミミと『シモン・ボッカネグラ』のアメリアの二演目を歌ってくれたことは奇跡的なことだった。もっとも、ファンは欲張りであって、ドミンゴの『オテロ』でデズデモナも歌って欲しかったのが本音であったが。それは叶わなかったものの、ヴェルディ『レクイエム』の2回の特別演奏会のソプラノ・パートをアンナ・トモワ・シントウと1回ずつ歌ったのだった。

この演奏会では最初から異様な緊張感がみなぎり、アバドの指揮のもとソリストとオーケストラ、合唱団は一糸乱れぬ完璧な演奏を繰り広げて、その場に居あわせた私は金縛りにあったような忘我の境に彷徨ったままの約90分間を過ごした。フレーニが「リベラ・メ」(我を救いたまえ)と歌い終わった時、残響がゆっくりと天に吸い込まれ、会場の拍手が沸き起こるまで時間が一瞬止まったような錯覚を覚えた。しかも、その時間は永遠に続くようにも思えた。後にFMで放送された録音を聴くと、それほど長い時間ではなかったが、あの会場に居合わせた者のみが覚えた感動体験であろう。

共演のソリストは、ルチア・ヴァレンティーニ・テラーニ(Ms)、ルケッティ(T)、ギャウロフ(Bs)で、テラーニの切れのよいメゾとギャウロフの豊かな低音部もこの曲の厚みをさらに増していた。アバドの指揮は、全身全霊をこの曲にささげているような熱っぽさがあり、オーケストラと合唱団がまた凄かったとしかいいようがない名演だった。会場の盛大な拍手にこたえるソリストとアバドの満足そうな笑みは忘れられない。それ以来、アバドが私の中の指揮者ベスト1となり、今もって変わることがない。

実はこの演奏会の前日のクライバーの『オテロ』の休憩中、盟友アバドが聴きに来ていたのに遭遇した。恥じも外聞もなく、サインをもらいに走った一人だった。マエストロは気軽にプログラムにサインをしてくれて、握手してくれた時の笑顔も素晴らしかった。このサイン入りのプログラムは、数少ない秘蔵品である。
【2007. 05. 31 (木)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(6) | trackbacks(0) |
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この記事に関するコメント
アバドにサイン貰ったんですか♪良いですね。
クライバーはついに生で聴く事ができませんでした。
六条亭様はお幸せ!
フレーニはほんとに素晴らしいソプラノで録画もテレビ出演も多いですね。
| ひとみ | 2007/06/01 10:25 PM |
> ひとみ さま

本来ならアバドも盟友クライバーのオペラ観劇に来たのですから、サインをもらうのは控えるべきだったのでしょうが、思わず衝動的に走りました。

いやな顔一つせず、気軽にサインに応じてくれました。イタリア語は分かりませんでしたから、ただ「サンキュー」と言って、翌日の「レクイエム」も聴きにいます、とブロークン・イングリッシュで一生懸命伝えたつもりです。通じたかどうか不明ですが…(^_^;)。
| 六条亭 | 2007/06/01 11:00 PM |
このコンサートのFMオンエアを当時エアチェックしたカセットを持っている者ですが、正式に商品化された音源、映像ソフトが発売されているかどうかご存じでしたら教えていただきたいのですが。当時は地方の一学生でしたのでもちろん放送でした接することができなかったのですが、今聴き直してみてもものすごい名演だと思っています。生で聴かれた六条亭様がうらやましいです!
| Gen | 2008/04/18 2:40 AM |
> Gen さま

この超名演は正規盤としては、CDにもDVDにもなっていないと思います。

この時のミラノ・スカラ座の来日公演は、NHKあたりで是非とも映像化してもらいたいものです。
| 六条亭 | 2008/04/18 7:25 PM |
1981年のスカラ座引越公演での2種のヴェルディ「レクイエム」は、当時FMからエァチェックして繰り返し聴いておりました。
確かシントウ版はTV中継もあり、フレーニ版はFMで生中継でしたでしょうか。両者の演奏は共に素晴らしかったのですが、私はシントウ版の方が好きになったと思いました。声量もあるし、リベラメでは音だけでなくTVで観た歌いっぷりにとても好感が持てたからだと思います。
フレーニ版のFM放送の際、解説者が「ついに日本でもこの様な音楽が鳴ったんだ・・」と話していたのが印象に残りました。
私もこういう場に是非にも居あわせてみたいものだと強く感じました。
| takao_kozo | 2011/05/20 10:05 AM |
> takao_kozo さま

かなり前の記事ですが、コメントくださりありがとうございます。また、コメント返しが遅くなり、大変失礼しました。

アンナ・トモワ=シントウの演奏もFM放送で視聴しましたが、フレーニの生を聴いてしまっては私のなかでは旗色が悪かったです。それだけこの演奏会が一期一会のものだったとあらためて思います。

なお、この演奏会のFM放送は、82年3月7日に行われたものです。もう放送はないと諦めていましたから、狂喜しました(^^;。
| 六条亭 | 2011/05/21 11:36 PM |
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