徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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『幡随長兵衛』など−二月大歌舞伎昼の部の簡単な感想
今月の『京鹿子娘二人道成寺』について、詳しく書こうとすると、長くなる恐れもあるので、まず昼の部の簡単な感想から書きとめておきたい。

『春調娘七種』

これも曽我物の舞踊の一つ。歌昇の五郎、芝雀の静御前はしごくまっとう過ぎるほどの配役であるが、期待通り、いやそれ以上の力強さ、上品な美しさを見せてくれた。とくに最近このような舞踊になると、芝雀に大変古風な味が濃くなってきて、父雀右衛門にますます似てきた。橋之助の十郎は、もう少し柔らかさが欲しく、やや固い印象を受けた。この人は筋隈の荒事の方がよく似合うようだ。

『陣門・組打〜一谷嫩軍記』

これは次に続く『熊谷陣屋』が時代物の悲劇としてあまりにも有名であるが、その伏線をなす重要な部分で、源氏の武将熊谷直実が、平家の公達敦盛の首を打ったが、実は後白河院の落し胤である敦盛を助けるために我が子小次郎を身替りにしたという話である。したがって、観る方は花道を引っ込む小次郎が実は敦盛に入れ替わっていることを知っていても、その後の敦盛は同じ役者が演じていても、あくまでも小次郎ではなく、敦盛として演じなければ、そして敦盛に見えなければ、この狂言に込められた浄瑠璃作者の意図にそった悲劇とはならないように思う。

したがって、今回直実を演じる幸四郎の考えで、花道で小次郎の顔を見せて実は敦盛であることをあからさまにしているのは、興醒めであり、遠くの波間で戦う直実と敦盛を歌舞伎特有の工夫である「遠見」(子役が演じて見せる遠近法の演出)も無いこともあわせて、この舞台は大いに問題のあるものであったと思う。福助の若武者振りと芝雀の玉織姫に存在感があるだけに、惜しいことである。

『浮塒鷗』

隅田川の三圍の土手で駆け落ちをしてきたお染久松を、通りがかりの女猿曳がそれと察して、心中しないよう諭す舞踊。先月病気で休演した芝翫が元気に復帰して、情のある女猿曳を見事に踊って見せてくれただけで十分見応えがあった。菊之助のお染も大店のお嬢さまらしいたおやかな美しさと清潔な色気のクドキも満足すべきものだった。ここでも橋之助の久松は、ニンではないと感じた。

『幡随長兵衛』

昼の部一番の見もの。侠客幡随院長兵衛と旗本水野十郎左衛門の対立を軸に、長兵衛の男伊達と死を決して、妻子とも別れて、水野の屋敷に赴き、湯殿で最後を遂げるまでを描く。

吉右衛門の長兵衛が、今の歌舞伎役者のなかで他に思い付かないほどの極め付けとでも言うべきはまり役。男気があり、自分の死を賭してまでも、江戸っ子としての意地を貫こうとする役作りは、男でも惚れ惚れするようなかっこ良さであり、思わず「播磨屋」と声を掛けたくなる。

菊五郎の水野も旗本の矜持を強く出しており、玉三郎の長兵衛女房お時も出番は少ないながらも侠客の女房としての覚悟を見せていて、ほかに段四郎の唐犬権兵衛、歌六の同輩の旗本近藤登之助なども手堅い。前半の村山座の劇中劇「公平法問諍」も何度観ても、うまく出来ていて面白く、團蔵の公平は荒事振りと一転しての惰弱の対照が光っていた。
【2006. 02. 28 (火)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(4) | trackbacks(0) |
二月大歌舞伎千穐楽の二人花子
昨日千穐楽の昼夜通し観劇をしてきた。夜の部は『京鹿子娘二人道成寺』を一回くらいは一階席で観劇したいと奮発、お仲間の方のお手配で、久しぶりに旧「とちり」の真ん中あたりという飛び切りの良席で観ることが出来た。もちろん、この席は一階席のなかでも、舞台全体が見渡せるばかりでなく、オペラグラスを使わずとも、玉三郎と菊之助の細かい表情や所作など見て取れて、まさに「美の競演」を眼前に観た思いであった。21世紀の歌舞伎史上に残る名舞台、名舞踊であると言って過言ではないであろう。

謡付きの有無、謡付きも二人同時ヴァージョンとわずか二日間の輪唱ヴァージョンと今回は前回とはまた異なった試行錯誤もあったが、たまたま三回の観劇で、その三つのヴァージョンを観劇できたのも幸運としか言いようがない。個人的には謡付きヴァージョンの方が緊張感もあり好みにあっているうえ、玉三郎・菊之助の美声を聞けたのが何よりも嬉しかった。

謡は15日からなくなっていたようだから、楽日もなかったが、ある意味ではコンパクトにまとまっていたという印象があり、これはこれですっきりとしていたかもしれない。それに花道の出から二人の表情が大変にこやかで、お互いに見つめあう目が本当に仲の良い姉妹のようだった。この一ヶ月間玉三郎は舞台を通じて、菊之助に厳しく教え、また菊之助も必死に付いていったと思うが、時にはぶつかった時もあったであろうと想像する。しかし、楽日の舞台は二人とも一ヶ月やり終えた充足感と満足感がどこか漂っていたように感じられたのは贔屓目であろうか?

お目当ての手拭は、もう少しで届きそうで届かず、残念ながら手に入らず。しかし、観る方も満足感で一杯であった。その余韻と観劇をお仲間の方と乾杯しながら語り合いたく、また昼夜通しの疲れを癒すべく、切り狂言の『人情噺小判一両』は観ないで失礼してしまった。これは、幕切れに菊五郎のお遊びが出たようである。

もう少し詳しい感想は追って昼の部の感想も含めて、順次UPする予定であるが、この名舞踊全体の纏めはご自身幕見も含めて10回通った!asariさまのブログが、それぞれ観劇時の感想のみならず、異なった切り口のブログの紹介もされているので、大変参考になる。
【2006. 02. 27 (月)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(2) | trackbacks(0) |
本HPの四万アクセス御礼
本HP「六条亭雑記」のご訪問者数が、昨24日に四万を越えました。皆さまのご愛顧を感謝いたしますm(__)m。

ここのところ、新しい職場にも慣れて来て、逆に仕事で忙しい日々を過ごしていますので、ブログの更新も断続的になり、また本HPの更新、とりわけ歌舞伎観劇記の「大いなる小屋」の更新が滞っています(^_^;)。少しずつ遅れを取り戻せるよう頑張りますので、もうしばらくご猶予をお願いいたします。

明日はいよいよ二月大歌舞伎の千穐楽。昼夜通し観劇の予定です。
【2006. 02. 25 (土)】 author : 六条亭
| 雑記 | comments(0) | trackbacks(0) |
團十郎の退院
昨日は、久しぶりに都心の某所で悪友たちと痛飲していたので、午前さまになった。しかし、気持ちよく飲んできたので、二日酔いも無く、まずは快調な一日を送ることが出来た。たまにはこういう飲み会もストレス発散でいいものである。

ところで、そのためにブログの更新も滞ったので、團十郎退院のニュースは出遅れているが、やはりこれは書き止めて置きたい。

成田屋公式Webサイトの成田屋通信に團十郎の正式退院が嬉しいお知らせとして掲載されている。

2月22日成田屋通信

昨年九月から半年の予定で入院・治療に専念した甲斐あって、無事治療も終わり、退院出来たことは歌舞伎ファンにとって何よりの朗報である。このうえは自宅でじっくりと体調を整えてから、舞台に復帰して欲しい。一部ではこの五月の歌舞伎座は團菊祭なので、そこで復帰するという情報もあるが、ここは無理をせず、完全回復を待ってからにしてほしいものである。
【2006. 02. 24 (金)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(0) | trackbacks(0) |
福井晴敏『Op.ローズダスト』3月15日に発売決定!
少し情報としては遅いかもしれないが、2月に刊行予定であったものが延期されていた、福井晴敏の最新刊『Op.ローズダスト』(文藝春秋社)が、いよいよ3月15日に発売決定と公式サイトに出ていた。

福井晴敏 Official Web Site

あの『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』で、読み出したら止まらないような興奮を覚えさせ、日本を守るとはどういうことか?という真摯な問題を投げかけて、自衛隊物とも言うべきジャンルの作品を次々と発表してきた作者が、週刊誌に連載していたものに大幅に加筆して刊行される今回の長編は、いったいどのような物語になるのであろうか?今から期待される。
【2006. 02. 21 (火)】 author : 六条亭
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シネマ歌舞伎第3弾は坂東玉三郎の『鷺娘』『日高川入相花王』
シネマ歌舞伎第3弾坂東玉三郎の『鷺娘』『日高川入相花王』

歌舞伎の舞台を高性能カメラで撮影したデジタル映像を、シネマ歌舞伎として取り上げているこのシリーズの第3弾は、この四月に坂東玉三郎の昨年の二つの舞台『鷺娘』(平成17年5月)『日高川入相花王』(平成17年10月)を上映することに決まった。前二回が『野田版 鼠小僧』と『野田版 研辰の討たれ』だったから、今回のような舞踊ははじめて。あの歌舞伎座の観客を魅了尽くした玉三郎の美しい舞踊が、大スクリーンで見られるとはありがたい。
【2006. 02. 20 (月)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(6) | trackbacks(0) |
眼鏡を作り変える
新しい仕事にも慣れてくると、次から次へと仕事が舞い込んでくる。所帯が小さいから、要するに何でも屋で、どんどん振られて来る仕事をいかに効率的に早く捌くかが勝負であるが、幸い一人一台PCが与えられているので、フルに活用して、大変助かっている。MyPCを持ったのは僅か3年前であり、それ以前の職場でも比較的PCを使う場合が少なかったにもかかわらず、今の職場ではPCを使いこなす方だと思われているから、少々面映い気もしている。

しかし、現実にPCの使い方を見ていると、初歩的なことも理解されないまま使う人も多く、時間の無駄も多いので、ついついお節介の性分が顔を出し、少しずつ業務におけるPCの有効活用を進めようと考えている。

ところが、その反動でいきおい、PCと朝から夜までにらめっこをしていることが多いため、だんだん目に疲れを覚えるようになり、肩こりによる疲労も重症になって来た。これでは仕事に悪影響を及ぼすので、昨日の土曜日眼科を受診して、目の検査をし、相談してみた。早速それはPCの使い過ぎと言われ、眼鏡の度数を調整して、作り変えることを勧められた。この年齢だから、近眼と老眼の二つの眼鏡を持っているが、近眼は遠くが見え過ぎ、老眼はPCのディスプレーとキーボードの両方を見ようとして目が疲れるからだと指摘された。なるほどと思い、結局両方の眼鏡を作り変える羽目に…(^_^;)。この時期、痛い出費!

しかし、老眼は最近のPC対策用に遠近両用ならぬ近・近両用らしきレンズがあるようで、それを使えばディスプレーとキーボードのどちらもよく見えて、疲れないそうだ。そうは言っても一番の対策は、あまりPCを使わないことで、今のように帰宅してもMyPCを夜遅くまで使うことを止めればよいのだろうが、身に付いた習慣と楽しみはなかなか治らない。これは相当重症のPC中毒かもしれない(^_^;)。
【2006. 02. 19 (日)】 author : 六条亭
| 日記 | comments(4) | trackbacks(0) |
帰ってきた吉右衛門の『鬼平犯科帳』
いささか疲れた一週間だったので、早めに帰宅したら、フジテレビ系列の『鬼平犯科帳スペシャル〜兇賊』の放送に間に合ったので、久しぶりに二時間の鬼平の世界をに浸ることが出来た。

もうテレビ化する原作がないと言っていたので、確認したら過去に放送されたもののリメイク版スペシャルだった。しかし、吉右衛門の鬼平が見られるならば、それはまったく気にならず、今回はゲスト出演の三人が、元盗賊の老人鷺原の九平に小林稔侍、押し入った先の人間を皆殺しにするという血も涙もない兇賊の親分・網切の甚五郎に大杉漣、夢物語的に名も知らぬ鬼平を慕う夜鷹・おもんに若村麻由美と豪華で充実していたから、話に奥行きがあり、見応えがあった。

もちろん、吉右衛門の鬼平はもう言うまでもなく、長谷川平蔵イコール吉右衛門というくらい板に付いていて、今回のように兇賊の姦計にはまって危機一髪になっても、まったく動ぜず立ち向かう姿は頼もしい。父白鸚(八代目幸四郎)の初代鬼平をすっかりと越えた押しも押されぬ吉右衛門の代表作となった。お馴染みのグルメも芋料理尽くしで楽しい。今後もこのようなリメイク版でよいので、二時間スペシャルの放送を時々望みたいものである。
【2006. 02. 17 (金)】 author : 六条亭
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ゲルギエフのプロコフィエフの交響曲全集の発売予定
ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団『プロコフィエフ交響曲全集』

オペラや交響曲・管弦楽曲などの指揮で、今世界でもっとも精力的な活躍をしているゲルギエフが、母国の作曲家プロコフィエフの交響曲全集を3月に一気にリリースするという。管弦楽はまもなく首席指揮者に就任するロンドン交響楽団との組み合わせ。しかも、第4番はオリジナル版と改訂版の2通り収録されている念の入った録音だから、この全集発売は大歓迎である。
【2006. 02. 15 (水)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(0) | trackbacks(0) |
戸板康二『歌舞伎 ちょっといい話』
最近新しい仕事に慣れてきたためか、かなり忙しくなってきて、読書が思うように出来ないのが悩みの種である。そういう時に、歌舞伎好きには格好の本が出た。晩年の著者が十年あまり歌舞伎座の筋書に連載した挿話の文庫化である。

戸板康二『歌舞伎 ちょっといい話』(岩波現代文庫)

当現代文庫には、歌舞伎関係の本が多く収められていて、著者の本も『歌舞伎への招待』『続歌舞伎への招待』の二つの名著がある。今回の本は、上記のリンクから「くわしい解説へ」をクリックしてもらえば、お馴染みの犬丸治氏によって、本書の魅力があますところなく解説されている。

とにかく歌舞伎好きには堪らない多くの演目や役者のエピソードが満載の挿話集である。およそ三百を越えるであろう演目のまたとない解説にもなっている。しかも、著者は無類の短編の名手であるから、どの挿話を読んでも愉しさ溢れる。実際に手に取って、読んでもらう事をお薦めしたいが、まさに「ちょっと」だけ引用する。

『籠釣瓶花街酔醒』について
*小噺にこういうのがある。遊女が釣りをしているのを見ていると、竿から垂れる糸に針がない。そこで、「おいらん、それでは、つれなかろうぜ」

『東海道四谷怪談』について
*(著者が)慶應に講義に行って、南北の話をした時、質問はと尋ねたら、女子学生が手をあげて、「四谷怪談の戸板のことを伺いたいんですが、あの戸板は」といったあと、黙ってしまった。そしていった。「たいへん失礼しました」

思わず、ニヤリとする話ばかりである。
【2006. 02. 14 (火)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(2) | trackbacks(0) |
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