徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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京極夏彦『前巷説百物語』を読む
評価:
京極 夏彦
角川書店
¥ 2,100
(2007-04)
直木賞を受賞した第三作目『後巷説百物語』が明治の時代に語り手山岡百介の昔噺で御行の又市らの仕掛けを痛快に描いた娯楽時代小説であったが、この続編はその又市の若き時代の、言わば前史。その仕掛けに妖怪を使っているのがいつもながらこのシリーズのミソであり、興味のつきないところである。

まだ青臭い小悪党小股潜りの又市が、損料屋、つまり今風に言えばレンタル屋であるが、その裏稼業として、他人から損を買い取り、その埋め合わせをするゑんま屋(女主人お甲)に雇われて、仕掛けをする。その仕掛けに今回も寝肥、二口女、山地乳など昔噺の架空の妖怪が効果的に使われている。

しかも、不思議なからくりを編み出す長耳の仲蔵、情報屋の林蔵、何の武器を持たないが、必殺の名人山崎寅之助、古今の学問に通暁する久瀬棠庵など登場人物も多彩で、会話が主体のこの物語はどれも読み始めると止まらない面白さに溢れている。勧善懲悪の娯楽時代劇であるが、又市が人を殺さないで依頼人の頼みを成し遂げる方法を模索して仕掛けをするところが最大の魅力であり、謎解きの面白さでもある。全六編は独立して読めるが、話を追うごとに徐々に顔の見えない謎の敵の正体に迫り、ついには御行の又市の誕生となるラストは、カタルシスさえ覚える。
【2007. 07. 30 (月)】 author : 六条亭
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千穐楽夜の部は…
楽日のコメディ担当は、翫雀さんで、大いに受けていました。亀治郎さんの匍匐前進も、菊五郎さんが、わざと声をかけなかったため、いつもより長かったと思います。

幕が引かれた後、満員の観客の盛大な拍手に応えて、花道から菊五郎さんが演出の蜷川幸雄氏を伴って登場。四回のカーテンコールがありました。最後は観客総立ちのスタンディング・オベーションでした。

博多座からの二ヵ月連続興行の再演は、こうして大成功裡に幕を閉じました。
【2007. 07. 29 (日)】 author : 六条亭
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NINAGAWA十二夜千穐楽夜の部観劇
200707291558000.jpg
にわか雨も一旦あがり、これから楽日夜の部観劇です。既に入場がはじまりました。
【2007. 07. 29 (日)】 author : 六条亭
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昨夜の第三十四回俳優祭のテレビ放送は…
昨夜のNHK教育テレビでの『俳優祭』の放送は録画していたが、やはり『白雪姫』が気になり、スイッチを入れると、ちょうど玉三郎のインタビューの場面だったからつい見入ってしまった。

インタビューのなかで玉三郎は、俳優祭はほとんど稽古なしですと語っていたが、それであのような舞台を作り上げる歌舞伎役者の力は凄いものであり、またそれを味わえるのが俳優祭観劇の醍醐味であるとあらためて感じた。玉三郎は自身の白雪姫を歌舞伎の赤姫そのもので演じると語っていた。まったくその通りの出来を映像で再確認しながら、やはい面白くて(とくに團十郎・海老蔵親子の魔女と鏡の精、菊五郎の北千住観音の面白さは抜群である)、結局そのまま最後まで観てしまった。生の舞台を観ていて、その細部を映像で確認するのはまた格別なものがある。

しかし、放送終了後PCを開いて拙ブログのアクセスを見たところ、『白雪姫』の放送時間中、異常に多くのアクセスをいただいていて、ビックリした(@_@)。これは次の感想記事をご参考にしていただいていたのかもしれない。いかに俳優祭をご覧になれなかった方の関心が高いかを実感した。

『白雪姫』の感想−第三十四回俳優祭から(その一)

『郷土巡旅情面影』『模擬店』の感想―第三十四回俳優祭から(その二)

さて、明日はいよいよ『NINAGAWA 十二夜』の千穐楽の観劇である!

【2007. 07. 28 (土)】 author : 六条亭
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アバド&ルツェルンのマーラー『悲劇的』はやはり素晴らしかった
大病を克服して再起したアバドが、あらたに組織したルツェルン祝祭管弦楽団を指揮して2003年以来はじめたマーラー・チクルス(シリーズ)は、第2番『復活』、第5番、第7番『夜の歌』に続き、今回は第6番『悲劇的』のDVDが発売となった。

アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団/マーラー交響曲第6番『悲劇的』

アバド・ファンとしてはあの笑顔とよく歌うしなやかな指揮振りが視聴できるのみで十分満足であるが、今回はマーラーの交響曲中、私がもっとも好んで聴いてきた第6番『悲劇的』。ベルリン・フィルとの再録音盤CDが2005年に発売されたばかりであるから、このように早くルツェルン祝祭管弦楽団とのDVDが出るとは嬉しい誤算である。2006年8月10日の演奏会から収録とあり、一昨年の第7番『夜の歌』のように二日間の演奏会を編集したものではないようである。

基本的な解釈はベルリン・フィル盤と変わらないが、より柔軟で音楽をする悦びに溢れている。通常の演奏順序とは異なり、第2楽章にアンダンテをおき、第3楽章にスケルツォを持ってくるやり方は、はじめは馴染めなかったけれども、この入れ替えによりアンダンテにさらに豊かな歌謡性が加わり、きわめて芳醇・美麗な味わいのあるものになった。スケルツォも冒頭の出だしから緊迫感がひしひしと伝わる。

そして圧倒的なスケールのフィナーレ!指揮を終えた後のアバドはしばらくじっと胸に手を当てて音楽のミューズに感謝の祈りを捧げているように見えた。その間静かに待つ観客のマナーの素晴らしさ。その後観客の歓喜が爆発して、盛大な拍手とスタンディング・オヴェーションが続き、視聴している方も大変幸せな気分になった。それにしても、アバドの笑顔の何と爽やかで、清々しいことか!
【2007. 07. 27 (金)】 author : 六条亭
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縄田一男編『職人気質』−時代小説アンソロジー〈4〉を読む
シリーズ4冊目は、職人気質を題材にした短編集。職人と言っても、冒頭の平岩弓枝『狂言師』をはじめ、落語家や彫物師などあり芸道ものに近い。宇江佐真理の『髪結い伊佐次』シリーズの一編も含まれていて、読みでがある。

剣豪小説の書き手であった五味康祐と柴田錬三郎が、前者は火術師(花火師)、後者は刀鍛冶を扱っているどちらも名編と言っていい作品であるのは、意外な発見である。
【2007. 07. 26 (木)】 author : 六条亭
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クラシックのDVDで嬉しい悲鳴
伝説的なライブ映像のDVDで取り上げたDVDの二点は、時間がないためまだ全部視聴出来ていないが、評判通りテンシュテットのワーグナーは、とてつもなく凄い演奏で、この1988年10月のロンドン・フィルとの日本公演が映像されていなかったことが信じられない。これは何回も観てしまいそうである。

また、コープマンのバッハのカンタータ集も期待以上の素晴らしさで、コープマンの解説付きであるのも嬉しい。

加えて、待ちに待ったアバド&ルツェルン祝祭管のマーラー交響曲第6番『悲劇的』が、ようやく発売されたうえに、バーンスタインのブラームスBOXも間もなく発売されるから、嬉しい悲鳴で、懐の方は季節外れの寒風が吹いている。
【2007. 07. 24 (火)】 author : 六条亭
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『新版歌祭文』−国立劇場社会人のための歌舞伎鑑賞教室の感想
十三日に観劇した歌舞伎鑑賞教室の感想が遅れていたので、簡単にまとめる。文字通り社会人が鑑賞できるように19時開演であるのは、観客の立場に立った大変よい試みで、さらに開催回数を増やして欲しいものである。

『歌舞伎のみかた』

松江の解説による『歌舞伎のみかた』は、今回は十二支にちなんだ歌舞伎に登場する動物づくしで、洒落ている。子(ね)は、『伽羅先代萩』の差し金から床下のねずみ、丑(うし)は『菅原伝授手習鑑』の牛車の牛、寅(とら)は『傾城反魂香』の虎、卯(う)は『玉兎』のうさぎ、辰(たつ)は『鳴神』の龍神、とここまでは具体的な演目を見せる。二名の観客に舞台にあがってもらい、巳(み)の蛇は小道具でびっくりさせ、午(うま)は実際の馬に乗ってもらうなど工夫している。ただ、未(ひつじ)が、羊羹で説明したのは少し疑問だった。

申(さる)は『堀川』の操り猿、酉(とり)は『道明寺』のものであろうが、観客が実際に触れることを優先にしていたので、演目は分かりにくかったように思う。戌(いぬ)も演目的にはいろいろ出るので特定はしていなかったが、これも代表的なものをあげてもよかったと思う。亥(いのしし)は、『仮名手本忠臣蔵』五段目の山崎街道の亥を観客に入って動いてもらうようにしていたが、普段何気なく観ているものが思ったより重労働で難しいものであることがよく分かった。なお、間に黒御簾や雷を表現する雷車の紹介もあった。

松江が次の幕の久松で出ることもあり、スライドで『新版歌祭文』のあらすじと見どころを福助のナレーションで解説していたのは親切だった。ただ、イラストがやや今風で私には馴染めなかったが。

『新版歌祭文』

父芝翫が得意にしている役であるので、福助のお光が初役とは意外だった。その初役は総合的に見れば十分に評価できるものと思う。とくに幕切れのそれまで抑えていた久松への思いを耐え切れず噴出させる場面は、泣かせる。それは許嫁の久松と祝言できると喜んだのもつかの間、久松と、恋仲となった油屋の娘お染たちを救うために、久松への思いを断ち切り尼の切り髪となるところでじっと耐える風情がよいからである。

ただ、前半お染が訪ねて来たと知ってからの所作は激し過ぎ、また顔の表情はくるくると変え過ぎで、軽薄に見える。それは幕切れの土手の場でも同じ事が言える。福助の年代の役者としてはもうそろそろじっくりと腰を据えた演技が望まれるのではないだろうか。

東蔵の久作がニンではないが、この人らしい手堅い役作り。松江の久松が、柔らか味に不足して固い。このような若衆の役をもっと勉強することが必要だと思う。芝のぶのお染は大抜擢であるが、お人形さんのように綺麗なだけでいつものような生気に乏しいのは残念である。芝喜松の後家お常が、しっとりとしていて情が篤く、ヴェテランの味がよく出ていた。

土手の場は、久作とお光を真ん中にして、両花道を船と駕籠が行く幕切れが歌舞伎の演出のすぐれたところだが、今回両花道を使っていなかったためもあるでろうが、いささか間が持たなかった気がする。ここは是非とも両花道を使って欲しかった。
【2007. 07. 23 (月)】 author : 六条亭
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島田荘司『最後の一球』を読む
評価:
島田 荘司
原書房
¥ 1,575
(2006-11)
昨年立て続けて刊行された島田荘司作品の掉尾を飾る御手洗潔シリーズの中編小説。『ロシア幽霊軍艦事件』の後の事件という位置づけであるが、読後感は大分異なる。出だしは突拍子もない話と思ったが、題名通り野球を取り上げていて、御手洗と石岡は脇役に回っている。

主人公は貧乏な生活から脱出するために人の二倍も三倍も努力して、プロ野球選手となろうとしたが、自分の限界を覚り、天才選手の影武者になることによって己を生かそうとした一青年である。作者がここまで野球に詳しいとは驚くほど、グランドの選手の立場でノンプロからプロ野球の試合までを巨細に描いていて、臨場感がある。

しかし、その天才選手に起こった不幸な事件から、主人公の青年は針の穴を通すほどのコントロールで、代わりにある復讐を果たす。その事件の真実を見抜いた御手洗の粋なはからいも、今までのミステリーとは一味違った清涼感がある。しかも、昨今問題となったローン会社のグレイーゾーン金利問題も取上げるという社会性にも事欠かないのもさすがである。
【2007. 07. 22 (日)】 author : 六条亭
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グリモーのベートーヴェン『皇帝』の発売予定
グリモー/ベートーヴェン『皇帝』

エレーヌ・グリモーは、今世界でもっとも注目すべき閨秀ピアニストであり、古典から現代曲まで多彩な録音を行っている。ピアノ協奏曲の王者たるベートーヴェン『皇帝』を、そのグリモーが録音したCDが発売される。オーケストラがシュターツカペレ・ドレスデンというのも渋くていい。しかも、国内盤は、演奏シーン等を収録したDVD付きである。こうなると、いつも輸入盤ばかり手を出している自分もついつい国内盤に食指が動きそうになる。
【2007. 07. 21 (土)】 author : 六条亭
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