徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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通し狂言『裏表先代萩』−納涼歌舞伎第三部再見の簡単な感想
初日観劇の際は、第二部の『新版舌切雀』があまりに冗長・散漫な印象だったためか、観る方も疲れてしまって、第三部観劇に集中できないきらいがあった。そこで、できれば第三部をもう一度観劇したいと考えていたところ、楽日のチケットが手に入ったので、急遽再見した。

そこで以下、簡単な感想。全体として言えることは、大変緊迫感ある舞台で、勘三郎の三役の演じ分けを十二分に堪能できた。配役には若干不満はあるが、よくまとまっていたと思う。裏表の世話物と時代物の対比も面白い。ただ、表の『伽羅先代萩』の通しを観ていない人には、少し分かり難い部分があることは否めなかった。

『花水橋』

七之助の頼兼は、さすがにまだ遊蕩する殿様には若過ぎるが、その品のある美しさ、口跡の爽やかさは、今回の納涼の他の演目にも共通していて、成長の跡を見せていた。亀蔵の絹川谷蔵が手堅い出来。

『大場道益宅の場』

ここは裏にあたる部分で。鶴千代暗殺のための毒薬を調合した大場道益が褒美にもらった二百両をめぐる殺しの場面。勘三郎の下男小助の小悪党ぶりが持ち味全開の面白さである。律儀な下男を装いながら、主人の金を狙ってついには殺してしまう。まんまと金を奪うが、その金を野良犬に持って行かれるというへまもして、笑わせる。彌十郎の道益が少々善人に見えるのが難点だが、金と女にだらしない医者の俗物さをよく出していた。福助の下女お竹がいつになく神妙。脇も橘太郎、菊十郎と充実している。

『足利家御殿の場』

鶴千代と千松を演じる二人の子役が達者で、お腹が空いてひもじいのを我慢するけなげさに泣かされる。勘三郎の政岡は、この役を是非演じてみたかったという意欲がよく表れている素晴らしい出来である。乳人として幼君鶴千代を護り通そうとする気迫が漲り、わが子が身代わりに毒入りの菓子を食べてしまい、八汐になぶり殺しされるのを顔色も変えず見守るその気丈さ。栄御前がそれを見て、わが味方と勘違いして、連判状を渡してゆく。その後の政岡が見ものである。緊張感が一挙にとけ、横たわるわが子の遺骸に取りすがり、よくやったと誉めながらも、悲しみに泣き崩れるさまは、忠義と母性愛とのはざまで激しく揺れ動く政岡の心情を見事に表出していた。今度は是非表の『伽羅先代萩』での勘三郎の政岡を観たいものである。

秀太郎の栄御前がさすがに貫禄ある出来である。

『同 床下の場』

勘太郎の荒獅子男之助に新鮮さがある。まだまだ未完成ではあるものの、荒事の基本に忠実な所作と口跡は爽快ですらある。勘三郎の仁木弾正の引っ込みは、もう少し大きさがあったら、なおさらよかったと思う。

『問注所小助対決の場』

通常の表の場合は、渡辺外記左衛門と仁木弾正が対決し、それを細川勝元が裁くという裁判劇であるが、ここでは裏の世界の小助とお竹親娘の対決を勝元の家来倉橋弥十郎が裁く。三津五郎の倉橋弥十郎が、物的証拠で小助を追い詰めてゆくのは現代の推理ドラマを思わせるものの、この世話物の裁判劇にはあっているかもしれない。三津五郎の鮮やかで、明快な裁きと、それに対する勘三郎の多彩な反応が見どころで、楽しめる場である。

『控所仁木刃傷の場』

市蔵の渡辺外記左衛門が、どうしてもこういう役であるとまだ大きさに不足するが、大健闘である。勘三郎の仁木弾正は、ここではとても凄みがあり、歌舞伎座の舞台が狭く見えるほどであった。松也の渡辺民部も好感の持てる清々しさである。三津五郎の細川勝元は、前の場の倉橋弥十郎と演じ分けるのはさぞや難しいだろうと思ったが、一段上の風格を出していたのは立派である。
【2007. 08. 31 (金)】 author : 六条亭
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9月に歌舞伎座特別舞踊公演開催
一昨日の納涼歌舞伎の楽日にチラシが置いてあった歌舞伎座特別舞踊公演が、歌舞伎美人にアップされたので、ここでも書いておきたい。

歌舞伎座特別舞踊公演

これは滅多に無い豪華な出演者による舞踊会である。平日でもこの開演時間であれば十分観に行けるが、如何せん、う〜ん、チケット代が…(^_^;。

○ 9月27日(木)午後6時30分開演

一 三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)
            此下兵吉  松 緑

二 高尾 
           高尾太夫  雀右衛門

三 うかれ坊主
            願人坊主  富十郎

四 雪
                  玉三郎

五 鷺娘
             鷺の精  玉三郎

料金(税込み)
1等席 20,000円
2等席 15,000円
3階A席 6,500円
3階B席 3,500円
1階桟敷席 22,000円
【2007. 08. 31 (金)】 author : 六条亭
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納涼歌舞伎楽日第三部観劇
200708291735001.jpg
ようやく暑さも一段落しました。今日は予定外ですが、チケットが手に入ったので、納涼歌舞伎楽日第三部の観劇です。
【2007. 08. 29 (水)】 author : 六条亭
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戸板康二『劇場の迷子 中村雅楽探偵全集4』の発売予定
拙ブログでたびたび取り上げている創元推理文庫の戸板康二の中村雅楽探偵全集全五巻は、二月の発売以来第三巻まで隔月で順調に刊行されてきた。ところが八月発売予定の第四巻『劇場の迷子』の刊行が遅延していたので、どうなったのか?と心配していたが、本日東京創元社のメルマガが送信されてきて、9月28日発売予定と告知されたので、ほっと一安心である。

『劇場の迷子 中村雅楽探偵全集4』(創元推理文庫)
【2007. 08. 27 (月)】 author : 六条亭
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陳舜臣『小説十八史略 傑作短篇集』を読む
陳舜臣が書いた膨大な中国の歴史物は、そのどれもが高い水準の作品ばかりであり、日本の小説界において果たした役割は大きい。また平明でありながら、格調高い文章も特筆に価する。未開の分野を切り開いたことが、後に続いて中国物の歴史を書いた宮城谷昌光など作家たちに道筋をつけたことも高く評価できるであろう。

この『小説十八史略 傑作短篇集』は、全六巻の傑作『小説十八史略』とは独立して、作者が書いた短編の集成であり、本編をを補う位置にあるが、単独で読んでもその面白さは十二分に味わうことが出来る。収録されている全十篇の短編の主人公は、秦の始皇帝を狙った刺客荊軻、食客三千人で有名な孟嘗君、匈奴討伐に一生を送った班超、そして楊貴妃など、歴史上著名な人物が多い。しかし、一ひねりしたエピソードもふんだんに散りばめ、それでいて史実からは逸脱していない、作者ならではの歴史伝奇小説である。

そのうち何篇かに触れる。「季布の一諾」は、「季諾」とも言われる故事熟語(「ひとたび承諾した約束したを必ず守ること」の意味)のもとになった季布を主人公にしたもので、約束を守ることで信用を得たことが実は偶然の産物だったことが語られる意外な一編。

また「背負って走れ」は、唐の謎の仏師・安生が包囲された砦を美女と脱出するまでの波乱万丈でいて、また艶やかな物語である。「パミールを越えて」は、同じく唐の武将で高麗の遺民である高仙芝が、人種の偏見を乗り越えてチベット征伐などに功をたてながら無実のうちに処刑される。中国史上における少数民族の問題を扱った異色作である。パミール越えの描写は圧巻である。
【2007. 08. 26 (日)】 author : 六条亭
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『ゆうれい貸屋』『新版舌切雀』−納涼歌舞伎第二部再見
今日納涼歌舞伎第二部を再見した。一番変わっていたのが『新版舌切雀』の上演時間である。13日付けで更新された下記の時間よりさらに早くなっている。

納涼歌舞伎上演時間

初日観劇では午後五時四十分終了が五分押していたものが、七分短縮されている。ところが今日の観劇では五時二十五分に幕が下りた。さらに八分テンポアップされているのである。つまり初日より何と二十分も短くなっている!

渡辺えり子の脚本が内容の盛り込み過ぎである印象は変わらないが、さすがに歌舞伎役者の面々、このいささか型破りで破天荒な新作にその肉体を十分あわせた演技を見せていた。私が二回目の観劇ということもあろうが、話が非常に円滑に流れていて、初日のあちらこちらにぶつかっては滞留していたものが嘘のようである。また、私が問題にした定式幕を劇中で一旦閉めそうになる奇手は、無くなっていた。

ほかに亀蔵の梟の局が暗くなると目が光るようになっているなど、細部の手直しは多いようだが、とにかく演じる役者の動きにこちらが付いて行けるようになっていたのは、ようやく辛目の味付けをしたこの舞踊劇が観客にも理解できるようになったということである。勿論、三津五郎の二役に意味は相変わらず分かり難いけれども、勘三郎の意地悪で強欲な婆さんとの対比で考えるべきなのであろう。ただ、二人の『三社祭』の踊りのさわりを観るにつけ、三津五郎の使い方が勿体ないと感じた。

三津五郎は『ゆうれい貸屋』でも怠け者の桶職弥六がすっかりと手に入ってきていて、安定していたのが目に付いた。彌十郎の家主や秀調・右之助の魚屋夫婦などが江戸の長屋の人情を感じさせたのもいい。勘三郎の又蔵がいかにも実直なの幽霊で笑わせた。
【2007. 08. 25 (土)】 author : 六条亭
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ブーレーズ/マーラー『一千人の交響曲』のCD発売予定
今年82歳という年齢にしては、老巨匠と呼ぶにはあまりにも若々しいP・ブーレーズが、この十年来続けてきたマーラー・チクルスは、いよいよ大曲の第8番『一千人の交響曲』で最後となる。

ブーレーズ/マーラー『一千人の交響曲』の発売予定

管弦楽と合唱がシュターツカペレ・ベルリン、同歌劇場合唱団との組み合わせも注目される。
【2007. 08. 24 (金)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(0) | trackbacks(0) |
岩波文庫の創刊80周年
文庫の老舗岩波文庫がこの7月で創刊80周年を迎えたという。今や書店の店頭では多種多様の文庫が溢れているが、岩波文庫が文庫の発祥であり、戦中戦後の苦難を乗り越えて、ここまで継続してきたことは、あらためて慶賀すべきことである。今回の80周年で、復刊や改版が多数あるのは歓迎できる。

岩波文庫創刊80周年

岩波文庫と言えば、古今東西の古典の文庫として知られるが、現に今でも岩波文庫でしか手に入らない貴重な古典も数多い。私も含めて団塊の世代がちょうど青春時代を送った時期は、まだ文庫は岩波文庫、角川文庫、新潮文庫の三つしかなかった。その頃から、古典は岩波、角川はその亜流だが、現代ものにも特色がある、しかし現代文学を読むなら新潮と、大体相場が決まっていた。

岩波文庫も今はブックカバーになっているが、日本近代文学が緑色、日本古典文学が黄色、海外文学が赤色など五色に色分けされていた。しかも、私が読んでいた学生時代には、定価が☆印で表されていて、☆一つ五十円だった。だから、学生の身分では、☆の数が少ないもの、つまり漱石の『坊ちゃん』や川端康成の『伊豆の踊り子』のような長編小説といっても短めのものから順次漁りながら読んだ。当時島崎藤村や田山花袋など自然派から白樺派まで日本の近代文学は、岩波文庫が充実していたから、随分その恩恵にあずかったと思う。しかし、海外文学は大長編が多く、何冊にも分冊されていて、結果として割高であったため、当時何種類も刊行されていた文学全集によったことは以前書いた通りである。

定価がマークで表示されていたと言えば、岩波新書もまだ青版時代の頃で、ランプマークのみで、たしか一冊130円の時代が長く続いていたと思う。それが値上がりして150円になっても、かなり割安感があり、青版とその次の黄版とは毎月新刊をせっせと読んでいたように思う。古い教養主義との批判はあるだろうが、岩波文庫、岩波新書は常にわが読書の座右にある。
【2007. 08. 22 (水)】 author : 六条亭
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井上靖『後白河院 』(新潮文庫)を読む
評価:
井上 靖
新潮社
¥ 420
(2007-07)
新潮文庫が「人生で二度読む本」として、過去に刊行された名作を改版して、復刊をはじめた。今月は島尾敏男『出発は遂に訪れず』や柴田翔『贈る言葉』などがある。後者はとくに我々団塊の世代が大学生時代に若者の大いなる共感を得たベストセラーである。

私としては、愛読する作家井上靖の後期の歴史小説の傑作『後白河院』をまず最初に読んだ。

井上靖『後白河院』(新潮文庫)

公家と源平の覇権争いの渦中を泳ぎきり、「日本国第一の大天狗」と頼朝に言わしめた後白河院の姿を、院の周辺にいた四人の語り手によって浮かび上がらせる。院に仕える寵臣や侍女、そして『玉葉』を書いたことで著名な藤原兼実が、異なった視点と語り口で、保元・平治の乱から鎌倉幕府成立の初期までを語る。そこには不気味なまでの後白河院の影が揺曳しているが、実像は御簾の内にあって茫漠としていて一向に定かではない。

しかし、第四章に至って、頼朝方と見られていた兼実が、真の院の姿を明らかにする。それは「政をしろしめすお立場は院おひとりだけのものであり、それはご自分おひとりでしかお守りになれないものである」と孤独な闘いを続け、多くの公卿や武家に勝ってきた帝王の姿なのである。だから、「左様、後白河院だけは六十六年の生涯、ただ一度もお変わりにならなかったと申し上げてよさそうである」という兼実の独白が結びに強烈に生きる。しかし、その院も頼朝のみは倒すことが出来ず、武家政権を誕生せしめたことはさぞや残念だったろうと思うが、それが歴史の皮肉というものであろう。
【2007. 08. 21 (火)】 author : 六条亭
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新橋演舞場の十月公演の演目
十月の新橋演舞場は、森光子と中村勘三郎の初共演ということで注目していたが、昼の部の歌舞伎演目が発表されていたのみだったので、拙ブログでも演目をアップしていなかった。ところが、もう今日から歌舞伎会の先行発売が開始されているので、気になって演舞場のサイトを覗いたところ、夜の部の演目・出演俳優などが発表されていた。

『寝坊な豆腐屋』

東京オリンピック開幕前の下町の人情というと、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』を連想してしまうが、勘三郎に加えて、扇雀、彌十郎、亀蔵も共演する書き下ろしの新作の舞台、はたしてどのようなものになるのだろうか?

あわせて、遅まきながら昼の部の演目を書いておく。

【昼の部】

○ 平家女護島 俊寛
            俊寛僧都  勘三郎
          丹波少将成経  勘太郎
            海女千鳥  七之助
           平判官康頼  亀 蔵
          瀬尾太郎兼康  彌十郎
         丹左衛門尉基康  扇 雀

○ 連獅子
      狂言師後に親獅子の精  勘三郎
      狂言師後に仔獅子の精  勘太郎
      狂言師後に仔獅子の精  七之助
             僧蓮念  亀 蔵
             僧遍念  彌十郎

○ 人情噺文七元結
           左官長兵衛  勘三郎
            女房お兼  扇 雀
            手代文七  勘太郎
           鳶頭伊兵衛  亀 蔵
          和泉屋清兵衛  彌十郎
         角海老女房お駒  芝 翫
【2007. 08. 20 (月)】 author : 六条亭
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