徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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『カラヤン帝国興亡史』(幻冬舎新書)の発売
今年は、ヘルベルト・フォン・カラヤンの生誕100年ということで、クラシック音楽業界では何かと話題が多く、アニヴァーサリー・セールが華やかである。

私のような遅れてきたクラシック音楽ファンでも、聴き始めた当時はカラヤン全盛時代であり、毎月のようにLPの新譜がリリースされて、常にベストセラーになっていた。また膨大なレパートリーを誇っていたから、入門者は必ずカラヤンの音楽を聴くことが多かった。だから、カラヤンの生演奏は聞く機会がなかったけれども、その録音活動には随分恩恵を受けたように思う。ただ、音楽評論家の評判は毀誉褒貶があり、当時からその言動も含めて帝王と揶揄する声も多かった。

今回、カラヤンの音楽界での帝王としての栄華と喪失の裏面史を描いた新書が出版された。著者は、クラシック・ジャーナルの編集長であり、同誌連載に大幅に加筆されたものだそうである。裏面史という視点に大変惹かれる新刊である。

中川右介『カラヤン帝国興亡史』(幻冬舎新書)

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【2008. 03. 31 (月)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(0) | trackbacks(0) |
『鈴ヶ森』『江戸育お祭佐七』−三月大歌舞伎夜の部の簡単な感想
今月も慌しく、三月大歌舞伎も千穐楽にようやく昼の部を観劇したような有様で、夜の部の感想もまだアップすることが出来なかった。以下、『京鹿子娘道成寺』を除き、十六日観劇の夜の部の極々簡単なメモ代わりの感想。

『御存鈴ヶ森』

芝翫の白井権八が、今までに観たことのないような古径な味わいと凄みを感じさせた。最近のこの人は、女形より立ち役の方に得難い風格がある。富十郎の長兵衛は口跡と貫禄で好一対。左團次と彦三郎がほんの僅かの場面で付き合うのは勿体ないくらいである。段四郎の飛脚がいわゆる半道敵でいい味を出している。ヴェテラン勢の活躍で引き締まった舞台に仕上がっていた。

『江戸育お祭佐七』

浄瑠璃「道行旅路の花婿」が入るとのことで一体どのようになるのか興味津々だったが、神田祭の日に鎌倉河岸神酒所でお祭り気分の賑わいのなかで、劇中劇として芸者三人が踊るという趣向であった。その間に菊五郎の佐七と時蔵の芸者小糸がじゃれあっているのも洒落ている。田之助が、このような場を盛り上げるに相応しいお祭りの世話人ぶりだった。

菊五郎は外題の通り、気風といい、そそっかしさという、まさに江戸っ子そのままである。だから、それまで惚れ合っていた小糸を簡単に殺してしまう粗忽さもあり、どこか御所五郎蔵を思わせた佐七だった。時蔵はもう少し芸者の色気が濃く出てもいいと思うが、佐七を一筋に思う性根はしっかりと出ていた。

仁左衛門は鳶頭としての貫目は十分であるとともに、小糸の養母の言葉をそのまま信じてしまう人の良さも感じさせた。團蔵の倉田伴平は、典型的な敵役であるが、やや型通りで平凡な印象を受けた。家橘の養母おてつが、その強欲ぶりで手強い感じをよく出していた。その他萬次郎、右之助、市蔵、亀蔵、歌江など脇役が揃い、見所の多いものだった。このような狂言を当代菊五郎が演じるのは初めてとは意外だった。またの再演を期待したい。

【2008. 03. 28 (金)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(4) | trackbacks(1) |
三月大歌舞伎昼の部千穐楽観劇
200803261049000.jpg
今日はようやくすべり込みで楽日昼の部観劇です。春の寿三段返しの舞踊は、春の到来に相応しいものでした。
【2008. 03. 26 (水)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(4) | trackbacks(0) |
藤沢周平『隠し剣秋風抄』を読む
評価:
藤沢 周平
文藝春秋
¥ 620
(2004-06)
Amazonランキング: 31345位
Amazonおすすめ度:
前作『隠し剣孤影抄』に続く隠し剣シリーズ。全九編のさまざまな秘剣が主題となっている。このなかでは山田洋次監督の三部作の最終篇『武士の一分』の原作となった「盲目剣谺返し」がもっともポピュラーであろう。主君の毒見のために盲目となった藩士が、妻の不貞を感じ取り、離縁するが、その相手に対して武士の一分を貫いて、果し合いを挑んで勝つ。その後の夫婦愛がほろりとさせる。

それ以外の各篇も、酒乱剣、汚名剣、女難剣、偏屈剣、好色剣などとどれも秘剣とは縁の無さそうなものばかりであり、また主人公たちも主役らしからざる変わり者だったりするが、一読して惹きつけられる設定の物語ばかりである。私としては「暗黒剣千鳥」が、藩の政争に巻き込まれた部屋住みたちの悲劇と権力者の執念に鳥肌が立つ思いであった。いずれにしても、前作とあわせて時代小説ファンにはお薦めの連作集である。

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【2008. 03. 25 (火)】 author : 六条亭
| 読書 | comments(0) | trackbacks(0) |
今年のコクーン歌舞伎は『夏祭浪花鑑』
歌舞伎美人に今年のコクーン歌舞伎の演目と配役がアップされていた。以前から話に出ていた串田和美演出の『夏祭浪花鑑』である。平成15年6月以来5年ぶりの再演となる。前回の公演では、その破天荒な面白さに驚き、それ以降頻繁な歌舞伎観劇を再開した思い出深い舞台である。

今回は勘太郎と七之助が徳兵衛女房お辰を前半と後半に分けて、ダブルキャストを組んでいるのが注目される。

【渋谷・コクーン歌舞伎】
平成20年6月10日(火)〜29日(日)
串田和美  演出
『夏祭浪花鑑』

団七九郎兵衛 中村 勘三郎
一寸徳兵衛 中村 橋之助
徳兵衛女房お辰 玉島磯之丞 中村 勘太郎
傾城琴浦 徳兵衛女房お辰 中村 七之助
三河屋義平次 笹野 高 史
大鳥佐賀右衛門 片岡 亀 蔵
釣舟三婦 坂東 彌十郎
団七女房お梶 中村 扇 雀

料金(税込み)
1等平場席 13,000円
1等椅子席 13,000円
2等席 9,000円
3等席 5,000円

【2008. 03. 23 (日)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(8) | trackbacks(0) |
ガーディナーのモーツァル『:レクイエム・ミサ曲ハ短調』
評価:
ガーディナー(ジョン・エリオット),ボニー(バーバラ),オッター(アンネ・ゾフィー・フォン),ジョンソン(アンソニー・ロルフ),マイルズ(アラスティア),モンテヴェルディ合唱団,モーツァルト,イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
ユニバーサル ミュージック クラシック
¥ 2,646
(2006-06-07)
Amazonランキング: 36691位
Amazonおすすめ度:
J・E・ガーディナーについては、卓越した指揮者と題して以前に取り上げて書いた。その時にもあげた彼の代表的な演奏がこのDVDに収められたモーツアルトの二曲の宗教曲−レクイエムとミサ曲ハ短調である。この映像は、加えて1991年12月5日モーツアルトの没後200年を記念して行われた演奏会のライヴである。場所は、スペインのバルセロナ、カタルーニャ音楽堂である。この音楽堂については詳らかにしないが、華麗なステンドグラスをはじめ壮麗な美しさに溢れていることが映像でも観るものによく伝わってくる。

この有名な二曲ともモーツアルトは未完のまま世を去ったから、いろいろな補筆・編曲版がある。しかし、我々好事家はその補筆や編曲の是非を云々するほど詳しくはないから、ただモーツアルトの書いた宗教音楽の透明で、静謐な音楽の美を味わえればよいと思う。私はキリスト教には無縁の人間であるが、クラシック音楽のレクイエム、ミサ曲、スターバト・マーテル(悲しみの聖母)を自分の癒しの音楽として聴いている。その点でもこのガーディナーのDVDはぴったりで、しばしば視聴する愛聴盤である。

この映像におけるガーディナの指揮ぶりは、非常にきびきびと引き締まっていて、ピリオド楽器を演奏するイングリッシュ・バロック・ソロイスツから生気溢れる明快な音楽を引き出している。手兵のモンテヴェルディ合唱団も緊密で、澄んだハーモニーを聴かせてくれて、感動的である。ソロも二人の女性歌手−ボニーとオッターがガーディナーの指揮に応えて、暖かく細やかに歌っている。男声のジョンソンとマイルズもよく調和し、総じて指揮者ガーディナーの統率が行き渡り、合唱指揮者としての彼の面目躍如たる代表盤である。

ガーディナーには、J・S・バッハ『クリスマス・オラトリオ』やブリテン『戦争レクイエム』のDVDもある。しかし、1989年の来日演奏会のバッハ、ヘンデル、パーセルなども素晴らしかったから、この時の演奏が映像化されることを待望したいが、現在のクラシック音楽のマーケット状況から見ても実現は難しいのかもしれない。

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【2008. 03. 22 (土)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(0) | trackbacks(0) |
所澤秀樹『鉄道地図は謎だらけ』を読む
評価:
所澤 秀樹
光文社
¥ 819
(2008-03)
Amazonランキング: 255位
小学校の時に首都圏の国鉄路線図を車内で見つけてから、鉄道路線図に興味をいだいて、ついには旅・鉄道を中心とした文筆屋として多くの著書がある所澤氏が、鉄道地図の謎に挑んだ新刊新書である。これが大変読んで面白く、また新しい発見のある本である。売れ行きもいいらしい。著者いわく、

鉄道道楽にはかかる趣向もあったのか、まあ、人生いろいろ、道楽もいろいろだねと、せいぜいご笑覧いただければ、それはそれは望外の喜びでもある。

本書は著者が意図的に芝居興行のようなスタイルをとっている。
第一幕「鉄道地図、七不思議の旅」では、JR土讃線・予土線で一駅だけ途切れる場所、近鉄生駒線・田原本線の王寺駅の近くて遠い路線、西武鉄道所沢界隈の絡み合う路線など、普段何気なく見ていた鉄道地図から、歴史を遡ってその謎を解き明かす鉄道探偵小説の趣がある。

第二幕「全国津々浦々、「境目」の謎」では、線名、鉄道区間、鉄道地図の境界などが、かなり専門的に語られるが、今まで意外と曖昧だったことがより明快になってくる。

第三幕「特選、鉄道地図「珍」名所八景」と題して、鉄道地図の珍名所を八ヶ所巡る。三種ゲージが集う踏切、鉄道の十字交差や逆送する列車など実際に著者が現場で取材した珍しい場所ばかりである。

写真もすべて著者が現場で撮ったものばかりで、これを見ているだけでも楽しいが、とにかく鉄道道楽もここまで徹底すれば、文句なく病み付きになる。私が好きな歌舞伎観劇とあい通じるところがあるようだ。はしがきの最後に著者いわく、

まあ、今回の興行はおおよそこんな感じである。これでもよろしければ、所澤一座の鉄道地図劇場にどうぞお入りください。観劇料金は裏表紙に記してある通りです。

洒落た文章が横溢する書でもある。

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【2008. 03. 20 (木)】 author : 六条亭
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塩野七生『ルネサンスとは何であったのか』の文庫化
『ローマ人の物語』全15巻が完結してから、塩野七生の作品を読む機会がなくなってしまって、飢餓感が強い(かなり重症のシオニスト!?)。そこへ既発売の文庫化であるが、『ルネサンスとは何であったのか』が新潮文庫で発売予定であることが分かり、何やらほっとしている。

『ルネサンスとは何であったのか』(新潮文庫)

これはルネサンスに関する著作が全七巻としてまとめられた時に、その序説のような位置付けで書き下ろされたものであるから、初の文庫化である。ダヴィンチやチェーザレ・ボルジアなど時代を彩った人々も生き生きと描かれているから、再読してみたい。

ところで、『イタリアに住む』と題して共同通信を通じて全国の地方新聞社に配信された塩野氏のエッセイが転載されたHPが新潮社のHPにあることを今頃気が付いた。これでまた氏の文章を読む楽しみが増えた。

塩野七生『イタリアに住む』

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【2008. 03. 19 (水)】 author : 六条亭
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藤沢周平『隠し剣孤影抄』 (文春文庫)を読む
評価:
藤沢 周平
文藝春秋
¥ 620
(2004-06)
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Amazonおすすめ度:
藤沢周平の隠し剣シリーズの連作短編集である。従来の剣客小説とは一味も二味も異なる味わいがある作品ばかりである。隠し剣、つまり外に漏らさない秘剣なのであるが、全八篇が収められた本集でもその秘剣も「邪剣龍尾返し」、「臆病剣松風」や「女人剣さざ波」など題名からして絶妙で、興味をそそられるものばかりである。山田洋次監督で映画化された「隠し剣鬼ノ爪」もある。

作者が作り上げた架空の藩「海坂藩」を舞台に陰謀や愛欲が渦巻く中で、これらの秘剣が使われるけれども、主人公たちは剣豪ではなく一介の藩士、しかも下級の藩士や部屋住みが多い。しかもうだつがあがらない者もいる。例えば「臆病剣松風」の瓜生新兵衛は、藩主の護衛を命じられると、震え上がって一度は断ってしまう臆病者である。しかし、「二人の剣客の攻撃にさらされて、右に左によろめくように動いていたが、よくみると、斬り合いがはじまった場所から、一歩も退いていないのであった」「そしてその間に、新兵衛の腰は次第に粘りつくように座り、背は強靭な構えをみせはじめた」。ついには剣客たちを斬り伏せた新兵衛の秘剣を師匠の息子が言う。「あれが松風です。松の枝が風を受けて鳴るように、相手の剣気を受けて冴えを増す。瓜生の剣は、よく秘伝を伝えております」。

この一篇を読んでも作者の文章が簡潔ながら、的確で達意の名文であることが分かるであろう。しかも独特のユーモアが漂う。「女人剣さざ波」は、それが女主人公の活躍でさらに精彩をます。続けて続編『隠し剣秋風抄』も読みたくなった。

JUGEMテーマ:読書
【2008. 03. 18 (火)】 author : 六条亭
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三月大歌舞伎夜の部観劇
私事で追われ、約一ヵ月ぶりの歌舞伎座観劇である。三演目とも充実した舞台だったが、とりあえず坂田藤十郎喜寿記念の『京鹿子娘道成寺』は先月の松竹座特別舞踊公演の二人道成寺と比較しながら、楽しんだ。

藤十郎の喜寿とは思えない艶やかさと若々しさに満ちた踊りには驚いた。所作の一つ一つがきっちりと線が明確で、緩急も自在である。もう少し鐘への恨みが強く出ていてもいいと思ったが、この女形舞踊の大曲を後シテまで踊り抜いた集中力には脱帽である。ただし、何故か「ただ頼め」が略されていて、羯鼓からそのまま鈴太鼓になる。後シテの顔の作りも恐ろしげな鬼女で、團十郎の押戻しでさらに厚みが増した。

團十郎の押戻しは、さすがに先月の海老蔵より一段と大きく、風格がある。

所化の台詞は上方訛りと聞いていたが、今日は通常通りだった。月の途中で変えたのだろうか?舞い舞い尽くしは、扇雀の子息虎之助君であった。私が今まで観たなかで、最年少であるが、あの長く難しい台詞を口跡も爽やかに軽々と言ってのけたのには、感心してしまった。虎之助君恐るべし。
【2008. 03. 16 (日)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(12) | trackbacks(0) |
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