徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』の簡単な感想
十日の初日に観劇して以降、なかなか感想がまとめられなかったコクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』。一つには踏み込んで書くとネタバレの惧れがあり(と言っても、前回の公演と大幅に変わった部分は少ないのだが)、また五年前に観た時の興奮(その時の観劇記は、本HP「六条亭雑記」の「大いなる小屋」)が今回はあまり感じられず、ついつい書くのが滞っていた。

今回の公演は、ヨーロッパ公演からの凱旋公演であり、役者たちの演技も十分手に入っていて、非常にテンポよくきびきびと舞台が進んでいたのは今の観客の感覚にあっていたと思うが、何かさわりだけをダイジェストで観ている感がなきにしもあらずで観る方も落ち着かず、全体としてコクが感じられなかった。これはこのコクーン歌舞伎をも一つのきっかけとして、意図的に以前にもまして歌舞伎観劇を復活した自分なりの五年間の観劇生活の蓄積から来ていることもあるだろうが、串田和美の演出の斬新さと、それと裏腹であるマンネリ化にも原因があろう。

もちろん、開演前から役者たちが三々五々座席内を歩き、観客に声をかけたりしていかにも昔の芝居小屋という雰囲気があり、気がつけば喧嘩が始まって芝居に入っているというのは、その後も観客の間を通って役者がしばしば出入りするのは、花道がないコクーンの欠点を補って余りある演出であり、役者と観客が渾然一体となっているのは歌舞伎座では観られない素晴らしい手法である。これは一階の平場席で観劇した観客には手を出せば役者の触れられるような近さだ演じられており、さらに臨場感も抜群であろう。当日の私の席は三等席であり、それを客観的に眺めていたという点で上記のような私の感想は割り引かなければならないであろう。しかし、事実として今回の観劇後の印象は、串田演出が『夏祭浪花鑑』の上演において果たした画期的な役割を十分評価した上で、この演出はもう完成されており、勘三郎がまたこの狂言を出すなら、従来の古典の演出で観たいという思いだった。

今回の公演の目玉は、従来勘三郎が二役で演じていた徳兵衛女房お辰を勘太郎と七之助がダブルキャストで演じる点だった。そのお辰、気風のよさは出ていたと思うが、初日のせいかまだどことなくぎこちなく、女としての潤いに欠けていたように感じられた。淡路屋の屋号の笹野高史の義平次も前回の方が浪花の暑い夏にふさわしいようなギラギラとした粘っこさといやらしさがあったように思うが、今回は割りとあっさりと感じられた。

勘三郎、橋之助、弥十郎は十分手馴れていて颯爽としていたが、例のミニチュアのセットをうまく活用した立ち回りでは結構激しい立ち回りだったためか、勘三郎の息があがっていたようにも見えた。幕切れの舞台背面を開けて逃げ出し、またパトカーに追われて戻って来るなどは、面白い演出であることは間違いないが、やはりネタが分かっていると新鮮味が感じられなかった。そこが串田演出の斬新さの限界でもあろう。何度鑑賞してもそれに耐えうる演出、それが古典として残りうる演出であると思う。つくづく歌舞伎の演出とは難しいものだとあらためて思った。

【2008. 06. 29 (日)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(2) | trackbacks(0) |
近藤正高『私鉄探検 』を読む
評価:
近藤 正高
ソフトバンククリエイティブ
¥ 767
(2008-06-17)
Amazonランキング: 61866位
Amazonおすすめ度:
「鉄ちゃん」もいろいろ
異色の鉄道ものの新書である。著者の近藤正高氏は、フリーライターとして多岐にわたる活躍をされているようだが、本書が初めての著書であるそうだ。ブログは、こちら(Culture Vulture)

本書は、大手私鉄をその私鉄独自の文化や歴史、風土を通じて探検する、言わば私鉄文化論であることに大きな特徴がある。例えば西武鉄道は、西武ライオンズと手塚治虫のレオマークを足がかりに日本のアニメーション文化に西武線沿線が深い関係を持っていることを明らかにする。また京王電鉄は、本線よりも稼ぎ頭としての井の頭線を、また京浜急行は「羽田」を主に取り上げるなど、視点が従来の鉄道ものとは一味も二味も異なっていて、斬新である。

名鉄は「パノラマ」魂、近鉄は「観光帝国」、阪急・阪神は「偏在」する宝塚と阪神タイガースなど、関西方面の私鉄も著者ならではの切り口である。終章で最近の私鉄の動向として相互乗り入れの進行とICカードの普及に触れている。なお、各章にその私鉄沿線の見所ガイドをあげているのも親切である。

本書で取り上げていない大手私鉄も、東急、東武、小田急、京成、南海、京阪、西鉄などがあるから、続編を期待したい。

JUGEMテーマ:読書
【2008. 06. 28 (土)】 author : 六条亭
| 読書 | comments(0) | trackbacks(0) |
『すし屋』『身替座禅』−六月大歌舞伎夜の部の簡単な感想
大変遅くなってしまったので、十四日に観劇した夜の部の感想は簡単にまとめる。重厚な昼の部に比べると夜の部は四つの演目の並べ方が散漫で、全体として印象が薄い。

『すし屋』

吉右衛門の権太は二回目とか。このすし屋は六代目菊五郎が得意にしたように音羽屋の型が現在主流であるが、最近では仁左衛門の上方流の権太が印象に残る。叔父松緑に習ったという吉右衛門も時代物ほどあっている役とは見えなかったが、しかしそこは台詞のうまさでは抜群の吉右衛門、前半も江戸前の粋で、憎めないの小悪党ぶりで、母親の騙す涙の部分も笑わせる。

またすし桶を抱えての花道の引っ込みはさすがに颯爽としていて、かっこいい。自分の妻と息子を若葉の内待と子の六代と偽って、梶原方に渡す時の腹も十分である。父に刺された後のもどりで、その本心を明かすところは吉右衛門ならではの見せ場だった。

芝雀のお里が、田舎娘が維盛に迫る色模様もくどくならず、清潔な色気に溢れている。今月の芝雀は昼夜とも大当たり。染五郎は、弥助実は平維盛のやつしをまずは無難に見せている。歌六の弥左衛門が最近この人が多く演じている老け役のなかでも出色のものだろう。忠義と親子の間で揺れ動く心情を巧みに見せている。吉之丞のおくらは、毎度のことながら座っているのみでその存在感が光っている。段四郎の梶原景時が大きい。

『身替座禅』

新橋演舞場と掛け持ちの仁左衛門の右京が最大の見もの。奥方玉の井(段四郎)の目を盗んで愛人の花子のもとへ会いに行った右京を仁左衛門持ち前の愛嬌を十二分の振りまきながら、巧みに演じ踊っている。ほろ酔い気分のでの花子との逢瀬を演じ分けるところがとりわけすぐれていた。対する段四郎はこのような役をはじめて観たが、巧まずしてこの役の怖さと可愛さの両方を見せていたのは素晴らしい(「上村以和於のオフィシャルサイト」今月の一押しをご一読下さい)。

錦之助の太郎冠者も、仁左衛門とバランスがよい美男であるから、全体として舞台が明るくなった。巳之助と隼人の千枝、小枝は、御曹司の勉強の域に止まらず、愛らしい踊りを披露してくれた。隼人は声変わりで、台詞はまだきつそうであるが。

『生きている小平次』

狂言名のみしか聞いたことがなかった新歌舞伎の怪談もの。一人の女をめぐる二人の男たちの争いから殺されたはずの小平次が生きているのでは?という設定がうまく生かされた戯曲だと思ったが、幸四郎、染五郎、福助が演じる三人の主役のうち、肝心の福助の演技が女としての生き方の方向軸が定まっていない。だから、過剰なばかりの演技のみが目立ってしまい、怪談なのかコメディなのか分からなくなるのは困る。九代琴松の名で演出した幸四郎はこの点をどう解釈したのだろうか?疑問が残る。染五郎の小平次が、なかなか凄愴な演技を見せていたから、なおさら消化不良で終わってしまった。

『三人形』

花の吉原仲之町を舞台に、芝雀の傾城、錦之助の若衆、歌昇の奴による廓噺の常磐津舞踊。奴の踊りは「伴奴」が多く使われてたようである。前の演目の暗さから一転して、華やかな踊りで締まった。夜の部は常磐津の一巴太夫の名調子を『身替座禅』とあわせて二回も聴くことができたのは得をした気分であった。

【2008. 06. 27 (金)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(2) | trackbacks(0) |
團菊祭の『青砥稿花紅彩画』【白浪五人男】 が早くもNHKで放送予定
まだNHKの「芸術劇場」の放送予定にはアップされていないが、月刊テレビガイド誌の番組表によれば、團菊祭五月大歌舞伎で通し上演されて好評だった『青砥稿花紅彩画』【白浪五人男】が早くも七月の「劇場への招待」で放送予定である。放送時間から考えて、通し上演の全編が放送されると思われる。こういう時は、ダビング・テンも可能になるので、早く地上デジタル放送を我が家にも導入したくなる。

○ NHK教育テレビ 「劇場への招待」
7月25日(金)午後11時〜翌26日午前1時55分(全175分)の予定
通し狂言『青砥稿花紅彩画』【白浪五人男】

【2008. 06. 25 (水)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(4) | trackbacks(0) |
ヴェルビエ・フェスティヴァル2007のDVDの発売予定
アルゲリッチのファンには嬉しい悲鳴のディスクが次々に発売予定である。今度のニュースは、ヴェルビエ・フェスティヴァル2007のDVDの発売である。ヴェルビエ・フェスティヴァルと言えば、10周年記念の「世紀のピアニストたちの共演」のDVDが大変素晴らしかった(このレビューは、本HP「六条亭雑記」の「クラシック音楽の森」にあり)が、今回は15周年記念の音楽祭の多くの公演のなかから、いわば美味しいところだけを収録したもののようで、アルゲリッチをはじめ、フレイレ、グリモー、マイスキー、庄司紗矢香など豪華な顔ぶれによる室内楽演奏を味わえる。これは8月31日発売予定に輸入盤。絶対見逃せない。

ヴェルビエ・フェスティヴァル2007(DVD)

JUGEMテーマ:音楽
【2008. 06. 24 (火)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(0) | trackbacks(0) |
鉄道関係の新書発売が花盛り
今月の歌舞伎観劇が少ない割には、まだ観劇の感想が書けないのはひとえに怠慢だからであるが、最近読みたい本や視聴したいDVDが多く、それに時間を取られているのも一つの要因である。

ところで、最近鉄道関係の新書の発売がラッシュの様相で、どれも読みたい本なので順次読み始めている。鉄ちゃんと言われる鉄道愛好家も相当増えているようで、時刻表から鉄道乗りつぶし、列車、鉄道写真等々多方面にわたる。今回出版された新書は、そのような多様性を反映してか、なかなかヴァラエティに富んでいる。

電車の運転(中公新書)

日本の鉄道 車窓絶景100選(新潮新書)

私鉄探検(ソフトバンク新書)

このなかでは『電車の運転』が、元JRの運転士だった方がその体験に基づいて運転の仕組みを詳細かつ分かりやすく書いたもので、今までの鉄道ものにない異色の本である。

JUGEMテーマ:旅行
【2008. 06. 23 (月)】 author : 六条亭
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アルゲリッチの「音楽夜話」−注目のクラシックDVD2点の発売予定
マルタ・アルゲリッチの今度は注目すべきDVDが出る。

「マルタ・アルゲリッチの音楽夜話(マルタ・アルゲルッチ・イヴニング・トークス)」 

アルゲリッチがインタビューに答えて、自らの音楽生活について語るドキュメンタリーとのことで、当然過去の演奏映像が挿入されるから、これは見逃せない。しかも輸入盤にもかかわらず、日本語字幕付きであるとは嬉しいことである。

またアバドが指揮したマーラーの交響曲第3番のDVDも同時期に待望の発売である。この演奏は既にBSなどでその素晴らしさは実際に視聴済みであるから、購入するかどうか悩ましい。いつものことながら、悩みながらもきっと購入してしまうのだろうと思う。

アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団/マーラー交響曲第3番 

JUGEMテーマ:音楽
【2008. 06. 22 (日)】 author : 六条亭
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小学館から『歌舞伎のいき』(全4巻)が刊行はじまる
DVDブック『勧進帳・紅葉狩』の記事をアップした際にふれたシリーズ歌舞伎の続刊『歌舞伎のいき』全4巻(小学館)が、第1巻「基礎編」から刊行がはじまった。

第1巻「基礎編」

第1巻は基礎編として、歌舞伎と歌舞伎座のすべてをDVDと書籍で分かりやすく解説したという。読むのみならずDVDで実際に目で確かめられるのがDVDブックの長所であろう。

【21日補記】歌舞伎美人のニュースでも本日付けで取り上げられている。

DVDBOOK『歌舞伎のいき』

【2008. 06. 20 (金)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(10) | trackbacks(0) |
アルゲリッチ・コレクション1(8CD)の発売予定
女流ピアニストとして、いや女流などという枠を超えて世界的なピアニストとして現在でもトップにランクされるマルタ・アルゲリッチがドイツ・グラモフォンに録音した演奏が集大成される。今回はその第一弾としてお得意のショパンが中心のピアノ・ソロが8CDのアルバムとして7月に発売予定(輸入盤)である。室内楽と協奏曲は、追って来年発売されるようである。

これらの録音は当然私はすべてCDで保有している(なかにはLPからCDの買い替えたものも何枚かある)のだが、こうやって集大成されるとまた購入したくなるのだから、それだけアルゲリッチの音楽が魅力的であるとはいえ、困ったものである。

アルゲリッチ・コレクション(8CD)

JUGEMテーマ:音楽
【2008. 06. 19 (木)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(2) | trackbacks(0) |
眉村卓『消滅の光輪』【上・下】の発売予定
先日取り上げた眉村卓『司政官 全短編』(創元SF文庫)の司政官シリーズ、続いて長編『消滅の光輪』がこの7月に上下巻に分けて発売される。

『消滅の光輪』【上・下】(創元SF文庫)

司政官シリーズを代表する傑作長編とあれば、引き続き是非とも読まなくては。しかし、この作品が泉鏡花文学賞を受賞しているとは知らなかった。過去の受賞作品を見ても幻想的要素の濃い作品が受賞していることは分かるが、この眉村卓のようなSF長編小説は珍しいようだ。

泉鏡花文学賞

JUGEMテーマ:読書
【2008. 06. 18 (水)】 author : 六条亭
| 読書 | comments(0) | trackbacks(0) |
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