本日紀伊国屋書店本店で開催された『坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ』のサイン会に行って来た。会場が小ぶりなことと三津五郎さんの気さくな人柄が反映してか、ご本人と参加者が気軽にいろいろ話をしながらのとてもアットホーム感じのサイン会だった。サインも達筆。私がお話したのは、概略次のようなことである。
私「曽祖父の七代目さんの舞台を子供の時に拝見していますから、四代続いて拝見していることになります」
三津五郎さん「ありがとうございます。巳之助をいれれば五代ですね」
私「巳之助さんは今度の納涼歌舞伎第三部『紅葉狩』の山神が楽しみですね」
三津五郎さん「毎日一生懸命稽古しています」
帰りに電車の中でこの本をひもといてみたら、第2章「踊りの家の生まれて」で『紅葉狩』の山神に触れた箇所がちゃんとありました。
義太夫の地で、神楽を足拍子で賑やかに踊って、気持がよいのですが、ただ、すかっときれいに踊るのではいけません。『紅葉狩』自体が持つちょっとグロテスクな味わいを出していきたいものです。地が義太夫だけに、ちょっともったりとした重量感もほしい。きれいな形を連続して踊っていくのではなくて、ひとつの踊りを演じるのだという気持で、自分自身を演出していかなければいけません。
う〜ん、なるほどと思わせる。巳之助さんも三津五郎さんの厳しい指導をえて、納涼歌舞伎の舞台の成果が楽しみである。この第2章は今までの歌舞伎関係の本にはない歌舞伎舞踊の踊り手としての視点から書かれた新鮮な解説が多い。本書の前書きで三津五郎さんは「歌舞伎を観始めてひと通り知った上でさらに奥深い世界へと導ける、中級者を対象とした本を出したいとの出版元の要望を受けて、まとめた」とあります。詳細な内容紹介は下記の岩波書店のリンクをご参照下さい。
坂東三津五郎/長谷部浩編『坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ』(岩波書店)