昨日無事千穐楽を迎えた二月大歌舞伎。終わってみれば観劇自粛はどこへやら、昼の部は『京鹿子娘二人道成寺』を目当てに、一幕見を加えて合計四回(3日、17日、22日、そして25日千穐楽)も通ってしまった(苦笑)。玉三郎と菊之助によるまったく新しい『京鹿子娘二人道成寺』は、歌舞伎座で平成16年1月に初演され大好評をはくし、二年後の平成18年2月の再演、そして海老蔵による押戻し付の昨平成20年2月の大阪松竹座、と今まで合計三回上演された。
初演と再演についての感想は、拙本HP
「六条亭雑記」の
観劇記「大いなる小屋」のそれぞれの項目を参照下さい。
その稀有なる美しい舞台に魅了されて、昨年は松竹座に遠征までした(その時の感想記事は、
こちら)から、今回は観劇回数を縮減する予定だった。しかし、節分の日の観劇は満足したものの、菊之助のさらなる成長により二人花子が完成形に近いと思ったが、玉三郎と菊之助の息が今ひとつぴったりこなかったところがあった。ところが、その後の舞台で玉三郎が烏帽子が綱にうまくかからなかった日があったりしたという情報を聞くにつけていささか心配になり、17日に幕見をした訳である。しかし、心配は杞憂であって、さらに進化していて、二人に息があっているばかりでなくバランスが非常によくなっていた。これならば現歌舞伎座でのこの二人道成寺も見納めだろうと考え、急遽予定外で22日に一階席で観劇したうえで、千穐楽観劇を迎えた。
この日も菊之助は振り出し傘を大きく綺麗に振って踊り、一人での踊りもさらに進境著しいところを見せたが、何と言っても鞠唄や鞨鼓の踊りでの二人花子の息がぴったりあっていて、まさに鏡像、一人の花子が二人に分身して踊っているように見えた。だが、「恋の手習い」はまさに玉三郎の独擅場、息を呑む美しさと艶やかさだった。
そして「ただ頼め」の菊之助の単独の踊りから、鈴太鼓の二人の早間の動きは鮮やかでそのまま激しく鐘入りに進む。その際の玉三郎の恨みの目力は凄まじく、菊之助を強く引っ張るように鐘にあがり、二人の見得。今まで観た中でもっとも興奮し、感動しながら観た鐘入りだった。計四回の舞台は常に進化し、玉三郎がリードする花子に菊之助は必死に付いて行き、成長していった過程であった。しかし、今回の舞台を観るにつけ、玉三郎は菊之助を大きく包み支えながらも、自らはそのレベルを突き破って一段さらなる高みにのぼっていたと見た。これならば玉三郎単独の花子を観たいとの期待がなお一層つのるが、それをかなえてくれる機会はあるのだろうか?