徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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お楽しみ模擬店−第35回俳優祭の感想(その三)
第35回俳優祭プログラム表表紙

俳優祭のなかでももっとも人気があるのが、このお楽しみ模擬店。役者さんが直接押隈やサイン入りミニ額、俳優祭のオリジナル・グッズ、飲み物、食べ物やお土産などを販売してくれる。入場したら、まずプログラムを購入して、そこに挟み込まれている模擬店案内図をよく見て、回り方を考えないと、約一時間の間にお目当ての役者さんに会えなかったり、グッズが売り切れてしまう。ましてや人気役者さんのコーナーは押すな押すなの大盛況となる。また、原則金券を購入して買い物をすることになるから、財布と相談しながら、金券を購入する必要がある。

幸い今回は昼夜を観劇できたので、割と余裕をもって回ることが出来たが、二階の仁左衛門さん(大判どら焼き)、菊五郎さん・菊之助さん(Tシャツ)、三津五郎さん・巳之助さん(手拭い)、三階の勘三郎さん・勘太郎さん・七之助さん(Tシャツ)、染五郎さん(手拭い)などは人の波をかき分けて役者さんに近づくまでが難渋する。

今回は食べ物は購入しなかったが、人気のあるものはすぐ売り切れていたようだ。二階で梅玉さんが指揮していた画廊での押隈やサイン入りミニ額は、魅力はあるが値段を見てはため息のみ。それでも購入希望者のなかからじゃんけんで決めていたようである。

いろいろ回った挙句夜は(市川)右近さんからサイン入りの「かぶき手帖」を購入して、恒例の幕間シアターの二回目に滑り込んだ。チケットを事前に買っていたからよかったが、それでも立見。今回はお馴染みの京妙さんの妖艶な踊りの後、段之さん、そしてこのためだけに駆けつけた上村吉弥さん、蝶十郎さん、さらには真打ちの歌江さんの歌謡ショーを間近で楽しむことが出来た。

下↓はプログラムの裏表紙。「LOVE KABUKIZA」とある。

第35回俳優祭プログラム裏表紙



【2009. 04. 30 (木)】 author : 六条亭
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舞踊二題『狸八島』『おまつり』−第35回俳優祭の感想(その二)
前日に引続き第35回俳優祭の感想その二。最初に舞踊二題として、立役のみの『狸八島』と女形のみの『おまつり』がそれぞれ群舞として披露された。プログラムでの片岡仁左衛門の言葉によれば、新しい振り付けのようだ。

『狸八島』

お伽噺の「カチカチ山」の狸の泥舟のくだりが、源平争乱の八島(屋島)の合戦になぞらえて描かれているとのこと。杵屋巳太郎作曲の長唄が曲想豊かで、聴き応えがある。立役総勢20名が素踊りでの群舞というのも滅多に観ることが出来ないもので壮観である。12名がウサギチーム、8名が狸チームという感じ。ウサギは白紋付に袴、狸は茶紋付に袴、と視覚的にも対照的で綺麗な舞台面である。

まず松江、亀寿、権十郎、亀三郎の4人のウサギが花道から本舞台へ。入れ替わるように上手から男女蔵、團蔵、秀調の狸が踊る。前者のフレッシュな踊りと後者の渋い踊りがいい。次いで三津五郎のウサギが一人で踊るが、やはり踊りの腕がきらりと光る。対して歌昇の狸も負けじと切れのよい踊りを見せる。松緑の狸に対しては、若手三人のウサギ種太郎、巳之助、萬太郎が絡む。ここは松緑が年長の貫禄。

それ以降は二人ずつペアになっている。前者がウサギ、後者が狸。橋之助と錦之助、段治郎と(市川)右近、染五郎と愛之助。なかでは染五郎と愛之助のコンビがきびきびした踊りで光っていた。最後にウサギの総大将(?)である梅玉が登場して橋之助、三津五郎、染五郎、権十郎が両側に居並んで決まり幕。

『おまつり』

大和楽は新しい音楽であるようだが、今回は女性による唄であるから、大変新鮮に聴こえた。

こちらの舞踊は総勢14名の女形が俳優祭オリジナルデザインの浴衣で勢揃い。最初は時蔵と福助が太鼓を叩いている姿がシルエットで浮かぶ。明るくなると魁春をはじめとする女形が現れて、入れ替わり立ち替りで集団を作っては分かれながら「わっしょい。わっしょい」という威勢のよい掛け声の歌にあわせて神輿をかつぐさまを群舞を見せてくれるから、華やかで観ている方も気持が高揚してくる。

若手のなかでは菊之助のたおやかな美しさが目を惹く。孝太郎と亀治郎も集団の中心になって引っ張ってゆく。普段立役しか観たことが無い亀鶴の女形ぶりもなかなかのものである。松也、梅枝、壱太郎、(尾上)右近、新悟もともに若女形らしい風情であった。


【2009. 04. 29 (水)】 author : 六条亭
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『灰被姫 シンデレラ』−賑木挽町戯場始−第35回俳優祭の感想(その一)
昨日27日に一日のみ開催された第35回俳優祭、歌舞伎を愛好する方々には是非とも観ていただきたかった、充実していてまた見所と面白さ満載の舞台だった。幸いにして昼夜とも観劇できたので、その様子の一端なりともお伝えできればと思う。まずは順序は逆ながら『灰被姫 シンデレラ』−賑木挽町戯場始の感想から。ただ以下どうしてもネタバレが多くなることをお断りしておきます。

『灰被姫 シンデレラ』−賑木挽町戯場始

本俳優祭が現歌舞伎座での最後になると思われることから、「この新作のテーマは、歌舞伎座を立派に建て直してほしい、そのために皆が心を一にして、歌舞伎座を愛し支えようという趣旨でございます。それと共に、ご覧頂くお客様に、腹から笑い楽しんで頂けるようにと、出演者一同張り切っております」と演出を担当した團十郎がプログラムで語っている言葉が、この新作のすべてをすべてを言い尽くしている。

明治22年の歌舞伎座開場式をメインにして、そこに西洋童話のシンデレラの物語を絡めた中村京蔵と山崎咲十郎の合作になる脚本。大勢の出演者をそれぞれ見せ場を作ってまとめるのみでも大変なことであったろうが、しっかりとシンデレラ物語と歌舞伎座の歴史を交差させた見事な出来だったと思う。勿論殆ど稽古なしでの本番であろうから突っ込みどころはいくらでもあるが、それを補ってあまりある役者さんたち総出演での熱演に沸き、笑った舞台だったと思う。

前置きが長くなったが、第一幕は歌舞伎座開場式に出かける準備で大童の築ノ小路伯爵家。お国(灰被姫)の継母の勘三郎は正面から登場の眼鏡をかけた着物姿、義理の姉(長女)の福助は、化粧も浜崎あゆみ風の金髪ギャルの作り(これはこういう点には疎いのであるが、矢島美容室という音楽ユニットを真似たようである)、次女の橋之助は腰元の矢絣というアンバランスが笑わせる。「灰被(はいかぶり)!灰被(はいかぶり)!」と呼ばれて登場した玉三郎は、継ぎ当ての粗末な身なりながら、品のある美しさは隠せない。そこで継子いじめの台詞が三人からぽんぽんと次から次へと出るから玉三郎もかなり台詞をかんでいたようである。勘三郎と玉三郎は漫才の突っ込みとボケのような感じで、どこまで本当の台詞か分からないくらいである。それも玉三郎は前回の白雪姫と同様に真面目に演じるからかえって笑いを誘う。お国は自分も木挽町の歌舞伎座開場式へ連れて行ってほしいと願うが、すげなくあしらって三人は出かける。その際クス玉が登場。開いた中から出てきたのは、前日婚約を発表した勘太郎と前田愛の婚約を祝う垂れ幕で、父親の勘三郎へのお祝いである。

残されたお国が嘆き悲しんでいると、花道から左團次の魔法使いの老女(白塗りの顔)が現れて、開場式へ行かせてあげるという。この左團次の役、後でもたびたび登場する狂言回しのおいしい役である。杖は緑色に光るレーザー・スティックになっている。二人の台詞のやりとりで、西洋童話と異なって、ガラスの靴も12時の門限も、かぼちゃの馬車もないことが分かる。さて一体どうなるのかと思っているうちに玉三郎は着替えに引っ込む。

その間若手の鼠たち六人が竹本の「ビビデバビデブー」にあわせて賑やかに踊る。ディズニー映画の『シンデレラ』に出てくる音楽であるからおかしくはないのだが、葵太夫が歌うのであるから少々びっくり。作曲と出演の葵太夫はご自身のHPの「つねひごろ」で作曲の苦心を書かれていて興味深く、また読み物としても面白いものになっている。チェロの音楽が流れるうちに重々しくボーイがチェロを運んできた後に登場したのは、○○とあった菊五郎、やはりおくりびとであった!しかし、このおくりびとは、お国を見送るために登場した訳で、菊五郎の本木風おくりびともなかなかインパクトがある。濃い藍色の夜会用正式礼服を身にまとったお国は見違えるばかりの美しさ。魔法使いの老女が最近の通販はいいものを揃えていると言っていたのは?で爆笑。お国は鼠たちの車に乗って颯爽と花道を引っ込んで行く。そして、ボーイたちが歌う歌は、ベートーヴェンの第9番「合唱」!黒のマントを脱いで白いドレスになった左團次の幕切れに注目である。

第二幕は歌舞伎座の開場式の場である。ダンスを踊っているのが魁春と彦三郎の神楽坂公爵夫妻と時蔵と段四郎の六本木男爵夫妻である。いつもと役柄が逆になっているのが笑いを誘う。彦三郎の女形ははじめて観たが怖いくらいである。段四郎の名前が喜熨斗の姓をもじって喜熨子であるのも面白い。秀太郎の浪花小路伯爵が富裕ぶりを見せつけるので、銀子、銅子を色めき立つ。そこへ司会として支配人翫雀(美濃紋太郎)と副支配人亀治郎(白柳徹子)が登場。亀治郎の真似っぷりは徹底していて、たまねぎ頭から顔の作り、話し方、歩き方までそっくりであるから、物真似芸人真っ青の一つの芸である。開場式がはじまり、伊藤博文夫妻(田之助、波乃久里子)、米国前大統領グラント将軍夫妻(仁左衛門、團十郎)、そして北島ノ宮康人殿下(海老蔵)が花道から登場すると大きな拍手がわく。

歌舞伎座座主の福地源一郎(歌六)は白髭のこしらえで挨拶、歌舞伎座が出来上がったのは金主の千葉勝五郎だと持ち上げると菊之助がマイクを奪って、天津木村の詩吟ネタを披露したらしいのだが、内容がよく聞き取れなかったし、昼夜で内容が異なっていたようだ。その後とぼけた田之助の挨拶(梅子夫人(波乃久里子)に「長い!」とたしなめられる)、仁左衛門は「Yes, we can」と一言、團十郎は何故かフランス語で挨拶(これはパリ公演の時に仕込んだものか?)。もっとも夜は少し怪しかったが。で、最後は英語で「カブキザ is change!」海老蔵は乾杯の音頭のはずであるが、まさに北島選手を思わせるようにいきなりサスペンダーを外し、胸をはだけてズボンまで脱ぎそうな勢い。夜は「裸になって何が悪い!誰も止めないのか?」と言っていたようである。

来賓として砂場様と司会が呼んだことから、砂場の出前持ち(扇雀)、銀の塔店員(七之助)、味助店員(彌十郎)、そして喫茶YOU店員(勘太郎と鶴松)、ナイルレストラン店員(亀蔵)が次々と登場する。鶴松君は愛で〜す、勘太郎の婚約者の役であった。ナイルレストランは本物の店主が賛助出演して、お店のPR。その他のお店も歌舞伎座が建て替え中も是非よろしくと一同挨拶して「こんぴら舟舟〜」の演奏に乗ってこんぴら組は引っ込む。

そこへ咲十郎のひく人力車に乗って新橋雀躍楼女将(雀右衛門)が、幇間(友右衛門、芝雀)、半玉、芸者一同(小三山もいる)を連れてお祝いに出てくる。昼は高いところから失礼します、と断ってお祝いの言葉を述べていたが、夜はとちっていた。しかし、久しぶりに元気な姿を見ることが出来たのは何よりであった。昼の半玉と芸者の踊りがバラバラだったのはご愛嬌である。

賑やかに一同が花道へ引っ込んだ後、扇子の落し物があるとの歌舞伎座のアナウンス(声の出演水谷八重子)。左團次(着物姿で歌舞伎座の案内係り風)が客席の真ん中を通って舞台に上がり、ガラスの扇子を二本見せる。これが落し物であり、扇子を見事に使って踊ることが出来た人が落とし主だということになり、まず最初に一本の扇子で福助が踊る。これは衣裳を脱いで踊りだせば、矢島美容室の「SAKURA -ハルヲウタワネバダ-」らしい。福助は、新悟と巳之助をしたがえてノリノリで踊る。客席からは手拍子。ただし、いつのまにか配られた審査員の評価では、久里子が厳しく「0点」!次に踊るのは橋之助。しかし、踊りだしたらすぐに司会者がここまでと止めてしまう。そして登場したのは役者の藪空棒之助(染五郎)。歌舞伎たいそうの「いざやかぶかん!」で、巧みに二枚扇のワザを披露する。亀治郎が絶対落としませんよ、と合いの手を入れてからかっても動ぜず流し目も見せながら、加賀屋狂乱のひとくさり。昼は完璧!夜は残念ながら最後に失敗。インタビューで斎君の六月の金太郎襲名をPR。

午前0時の鐘が鳴っても、落とし主が現れないので、左團次がまた魔法使いの老女になってお国を上手より連れて来る。玉三郎は私には出来ません、と恥ずかしがりながらやがて「鏡獅子」の二枚扇の部分を洋装のままで踊るという珍しい場面になる。二枚扇の使い方はもちろん鮮やかなのであるが、加えて後見に出た咲十郎が操る差し金の扇がひらひらと滑らかに動くトリックもある。見事なお国の踊りに会場は賞賛。海老蔵が素晴らしい!と隣に座っていた田之助の頭を強く叩いたようになって、しきりに謝っていた。笑の渦である。海老蔵はそれまでも楽しそうに仁左衛門と話すなど終始ご機嫌。

ガラスの扇子はお国であると決まったが、お国は私はその資格はないと辞退し、勘三郎の継母はあれは灰被だと言う。そこでこれからがかなりのこじつけで苦笑ものであるが、玉三郎のお国が「いつもお国と呼んでくれない」と何回も言ううちに「出雲のお国」となり、左團次は実は歌舞伎座の守り神の使いであることを明かし、お前が出雲のお国だよという。その間玉三郎は花道にいる。舞台は回って第二場歌舞伎座正面になる。第35回俳優祭に看板もちゃんと立ててある。守り神五人、真ん中に芝翫(八重垣姫)、上手に藤十郎(河庄の治兵衛坂田藤十郎、ただし夜は羽織を着ていなかった)、幸四郎(寺子屋の松王丸)、下手に富十郎(連獅子の親獅子の精石橋の獅子の精)、吉右衛門(毛谷村の六助)とそれぞれのこしらえで座っている。歌舞伎座を守ってゆくのは役者の芸が大事、そしてお客様の温かい応援が大事、今後どんな形で歌舞伎座が建て替えられようともみんなが守って行かなくてはならないという役者さんたちの熱い熱いメッセージをそれぞれが伝える。

そして舞台に出演者が勢揃いして、皆で声を合わせて、この先百年、千年、万年とも歌舞伎座を守りましょう、と宣言することで、戦後復興した現歌舞伎座に育てられ、思い入れの強いこの劇場に対する愛情を心から歌い上げることでこの新作は終わりとなった。最後に日本俳優協会会長である芝翫の御礼の挨拶と藤十郎の音頭で手締めをして、第35回の俳優祭は幕を閉じた。

【6月4日】歌舞伎座の守り神が扮した役名を俳優祭特設ページの説明にあわせて、一部修正しました。そのほか若干の手を入れました。

【2009. 04. 28 (火)】 author : 六条亭
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第35回俳優祭観劇(その二)
今昼の部が賑やかに打ち出しました。『灰被姫−シンンデレラ』は予想以上に、歌舞伎座に対する役者さんたちの思い入れの大きさがよく表された、それでいて楽しい舞台でした。

作者の一人である咲十郎さんがひく人力車に乗ったままですが、久しぶりに雀右衛門さんが登場し、お祝いの言葉を述べました。最後は五人の歌舞伎座の守り神とともに出演者全員が舞台に登場、芝翫さんの挨拶、藤十郎さんの音頭で手を締めました。

『灰被姫−シンンデレラ』のみならず、舞踊二題と模擬店の様子も追って詳しくまとめたいと思います。



【2009. 04. 27 (月)】 author : 六条亭
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第35回俳優祭観劇
200904271046000.jpg

爽やかな晴天です。これから俳優祭の開幕です。幸運にも昼夜両方を拝見することになりました。
【2009. 04. 27 (月)】 author : 六条亭
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四月大歌舞伎千穐楽昼の部観劇
200904261033000.jpg
今日は、昨日の悪天候とうって変わった晴天です。

これから昼の部がはじまります。
【2009. 04. 26 (日)】 author : 六条亭
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市川升寿さん死去
成田屋一門の女形として、多くの脇役を演じていた一門の要ともいうべき市川升寿さんが、24日に亡くなったという新聞報道があった。享年74歳。役者としてはまだまだこれからも老け役として活躍する場があったと思うと、まことに残念である。昨年十一月新橋演舞場での花形歌舞伎で、『伽羅先代萩』の小槙の舞台を拝見したのが最後であろうか。合掌。

asahi.com記事

成田屋通信



【2009. 04. 25 (土)】 author : 六条亭
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あなたは買いますか?ガラス製CD
最近魅力的な新譜も減っていることからすっかりとクラシック音楽のCDを購入しなくなった。自分なりの理由としてはクラシック音楽界にもスーパースターがいなくなったことにあると考えているが、若い人であればCDを購入するよりも音楽配信を使って、携帯音楽プレイヤーで楽しんでいるのであろう。しかし、LPレコードを愛好していた世代に属する人間としては、どうしても板(つまり盤)に対する愛着が強い。長い歴史があるLPが急速にCDに切り替わったのは同じ板にデジタル情報を入れたからであろうと思う。だから、今のスター不在はクラシック音楽業界の将来を懸念させるに十分である。

しかし、自分が購入しなくなったからという訳でもないが、日本の音楽産業もCDの売り上げ減少に頭を悩ませているのだと思っていたら、必ずしもそうばかりとも言えず、CDの新素材の開発して、音を少しでもよくしようという動きで市場は活性化しているという。最近CDショップでよく見かける「SHM-CD(Super High Material CD)」、「HQCD(Hi Quality CD)」、「Blu-spec(ブルースペック) CD」、そしてガラス製CDである。それらにについての詳細な解説は、次のリンクにある評論家麻倉怜士氏が書いた「新素材CD」−4種徹底聴き比べ 個性あふれる格段の高音質の秘密−が大変参考になる。

「新素材CD」4種徹底聴き比べ 個性あふれる格段の高音質の秘密

素材の相違はあるにしてもどれも今までのCDに比べて音質改善に大層効果があるということである。我がCDレコーダーで果たしてその違いを聴き分けることが出来るかどうかは自分の耳の老化も含めて自信は無いが、これを読めば専門家の意見を参考にして新素材CDを聴いてみたいと思ってくる。しかし問題は価格とコンテンツである。今発売されているもののうちガラス製を除く3種は価格は何とか手が届くものであるが、過去の定評ある名盤ばかりの安全路線で食指が動かない。

それで、クライバーのベートーヴェン交響曲第5番、第7番を収録したガラス製CDが発売される情報を知って、これは!と思ったが、価格を見て呆然!唖然!!通常盤もセットにしての価格が、税込み20万円也。う〜ん、どうみても我々が購入できる価格と2桁は違う(@_@)。

交響曲第5番、第7番 カルロス・クライバー&ウィーン・フィル(ガラス製音楽CD+通常CD)

JUGEMテーマ:音楽
【2009. 04. 24 (金)】 author : 六条亭
| クラシック音楽 | comments(0) | trackbacks(0) |
『琵琶法師』−<異界>を語る人々
琵琶法師

ここ数日いくぶん風邪気味で観劇感想のまとめも滞ったままである。そこで気分転換に手に取ったのが岩波新書の新刊『琵琶法師』−<異界>を語る人々(兵藤裕己著)である。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「耳なし芳一」(『怪談』所収)は実はハーン夫妻の合作であることや平家物語が琵琶法師の語りを通じて成立し、そして流布していった文学であることを通して、琵琶法師がどこから来て、どのような存在となっていったかを民俗学の成果を織り込みながら日本の中世史に視点を置いて探っている興味深い新書である。

しかし、本書で一番の注目は岩波新書で初の8cmDVDが付いていることで、「最後の琵琶法師」と言われる山鹿良之氏の最晩年の記録「俊徳丸」三段目の映像がまことに貴重である。素朴と言おうか、荒々しいと言おうか、一度映像を観始めたらば止まらないような強烈な力がある。琵琶法師は異界の声(死者の声)を聴き取り、このような語りを通じて、民衆に文化を伝えてきたことがよく分かる。




【2009. 04. 23 (木)】 author : 六条亭
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『毛谷村』『吉田屋』『曽根崎心中』−四月大歌舞伎夜の部の感想(追記あり)
四日に観劇した四月大歌舞伎夜の部の感想がかなり遅れてしまった。そのため、感想とは言えない簡単なまとめををしたい。

【5月6日追記】さらにかなり日にちが経ってしまったので、『吉田屋』と『曽根崎心中』の感想を追記しました。

『毛谷村』

吉右衛門の六助がこの人のニンにあった大らかな愛嬌と善人ぶりを舞台全体に漂わせている。だから、話の展開が非常に滑らかで、観ている方も愉しくなる。

歌昇の微塵弾正は短い登場場面ながら、楷書の演技で、きりりとした印象を受ける。吉之丞のお幸は武道指南役の奥方という品格に加えて一抹の滑稽味もあり、絶品。少し足の運びに不自由さを感じさせたことが心配だが、今やこの役も含めて吉之丞を置いて他に考えられない役も多いから、無理をせず長く舞台に立って欲しいものだ。東蔵の斧右衛門は芸域の広さをうかがわせるうまさだった。全体としては高い水準の出来に仕上がった舞台であったと思う。

ただ問題は女武道のお園を演じる福助。六助が自分の許婚と分かってから女に戻るところは、媚を売り過ぎているようでいかがなものか?と感じられた。また絡みを使ったクドキも段取りめいていて、肝心の物語が響いて来なかったのは残念だった。

『吉田屋』

仁左衛門の伊左衛門は、まさに決定版とも言える。勘当されて落魄しても誇りを失わず、昔のままで夕霧のもとへ訪れて、早く会いたいと焦れたり、拗ねたり、その愛嬌はこぼれんばかり。よく考えるとどうにもならない駄目な男であるが、そうは見せない魅力と可愛らしさは和事特有のやわらかな所作と相俟って、惹き付けてやまないものがある。

加えて今回は長年のコンビである玉三郎の夕霧。常磐津の糸にのって嫋々たる傾城の思いを紡ぐ。幕切れのほんの僅かの時間しか観ることの出来ない、手縫いの鳳凰の打ち掛けももったいないほどの豪華さである。

我當と秀太郎の出演で松嶋屋三兄弟が揃い、これまた見事な主人と女房ぶり。伊左衛門と夕霧を気遣う気持ちに溢れている。太鼓持ちが出る松嶋屋型ははじめて観たが、巳之助も一生懸命。よい勉強であろう。

この『吉田屋』、当分この舞台を越えるものは観ることが出来ないであろうし、また仁左衛門と玉三郎のコンビでの舞台で自分の観劇記憶を当分封印してしまいたいと思うほどである。

『曽根崎心中』

藤十郎畢生の当たり役のお初、変わらぬ美しさと若さにまず驚く。しかも宇野信夫の台本は意外と現代人の嗜好にあっている部分が多いから、古さを感じさせず、常に新鮮である。翫雀の徳兵衛もすっかりと自分の持ち役になっている。橋之助の九平次が本来の上方の味とは少々異なるような気もするが、小悪党という感じがよく出ている。

ここでも我當の久右衛門がお初と徳兵衛を思いやる真情に溢れている。竹三郎、亀鶴もいい。
【2009. 04. 21 (火)】 author : 六条亭
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