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評価:
狩野 真央
イースト・プレス
¥ 1,260
(2010-01-29)
Amazonランキング:
171905位
Amazonおすすめ度:
とっても綺麗な絵です
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最近は滅多に手にとる機会もなかった漫画。しかも本書の表紙は少女漫画風である。しかし、一瞬目を惹きつける強烈なものがある。そこには紛れもなく華麗な助六(表紙)と揚巻(裏表紙)が描かれているからである。私がこの漫画を読んでみようと思ったのはもちろんタイトルに歌舞伎が入っているからであるが、この『助六』の主人公に惹きつけられたところが大きい。
しかし、そんな言い訳のような理屈はどうでもよい。読み始めたら面白くて、一気に読んだ。そしてあらためてまたじっくり読んだ。それだけ漫画というメディアを使って、知らず知らずのうちに歌舞伎の世界へ誘う格好の入門書である。いや、入門書というのは堅苦しくて適切な表現ではないかもしれない。作者の言葉で言えば「私めがミーハー心満載で「歌舞伎は生で観たら面白いよ!!」」を実体験から綴った、歌舞伎愛に溢れるコミック・エッセイである。
目次は次の通り。
第一幕 こうして私は歌舞伎にハマった!
第二幕 歌舞伎役者に恋をする!
第三幕 物語(ストーリー)をちょいと教えちゃうよ!
作者は孝玉ブームの頃に生の歌舞伎を観て、そのあまりの美しさ・凄さにハマったようで、その頃を観ていない私には羨ましいくらいである。そこで第一幕では歌舞伎はまず「役者を見て楽しむ」、そして劇場という小さな魔法空間でしか味わえない、五感のすべてに訴えかける不思議な錯覚を覚える生の舞台を観る!ことを強調する。まったく同感である。演目の分類、歌舞伎十八番、役柄などの説明は漫画ならではのわかり易さ。歌舞伎に多く使われているデフォルメは漫画につながるルーツが見てとれるというのも説得力がある。
第二幕はご贔屓役者、今の言葉で言う萌え役者として、片岡仁左衛門、坂東玉三郎、市川海老蔵、團十郎、菊之助などが集中的に取り上げられている。独断と偏見によるとあるが、作者の観劇歴の長さ・深さが窺われる。
第三幕は、『助六由縁江戸桜』『双蝶々曲輪日記』『青砥稿花紅彩画』『源平布引滝』の四つの演目のあらすじを要領よくまとめている。『双蝶々曲輪日記』(角力場と引窓)と『源平布引滝』(義賢最期、竹生島遊覧、実盛物語)などは玄人好みの演目とも言えよう。
各部のあいだに幕間として屋号、拵え、役者の紋、そして観劇時の「服装」などかなり踏み込んだ内容を漫画の特性を活かして、分り易く解説している。巻末に演目索引があるのも親切である。ただし、『海神別荘』が『海鳴別荘』となってしまっているのは、残念であるものの、この点などの誤植を
出版社のサイトで訂正してるのは好ましい。