昨夜のNHK芸術劇場は、「ベルリン・フィルのワルトビューネ・コンサート2010」とルツェルン復活祭音楽祭から「アバド指揮シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ演奏会」が放送された。後半のアバド指揮の演奏会は、BShi、BS2、そしてNHK教育と続けて放送されたもの。ドゥダメルが育成したベネズエラの若手奏者たちのオーケストラをアバドが得意とするプロコフィエフ『スキタイ組曲』、ベルク『歌劇「ルル」からの交響的小品』(ソプラノ アンナ・プロハスカ)、チャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』の3曲を指揮したもので、なかなか演奏会でも聴くことができない曲目を揃えて、躍動感溢れる演奏だった。アバドの鋭い指揮に応える若手奏者たちの熱演ぶりは見ものであった。
前半の「ベルリン・フィルのワルトビューネ・コンサート2010」は、「愛の夜」と題してソプラノのルネ・フレミングがアンコールも含めると10曲も歌っていて、彼女が主役のコンサートである。メトロポリタン歌劇場を拠点にしているフレミングは、レパートリーが広いうえ、歌唱力もある。加えて最近の歌手はこれが肝心であるが、すこぶる付きのチャーミングな美人歌手であるから、今回の演奏会では目と耳の両方を満足させてくれた。ドレスも、前半が赤、後半がブルー、そしてアンコール1曲のために白地に模様の入ったものと着替えてくる大サービスぶりだった。
曲目は次の通りで、珍しい曲が多い。(*)がフレミングが歌った曲目である。個人的にはドボルザークの「月に寄せる歌」とコルンゴルトの「わたしに残されたしあわせ」が叙情的な美しさで、好みであった。レオンカヴァルロの2曲は軽妙に歌っていて楽しい。
・交響詩「はげ山の一夜」(ムソルグスキー/リムスキー・コルサコフ編曲)
・歌劇「ルサルカ」から「月に寄せる歌」(ドボルザーク) (*)
・歌劇「ダリボル」から「このはやる気持ち」(スメタナ) (*)
・歌劇「カプリッチョ」から「最後の場」(リヒャルト・シュトラウス) (*)
・歌劇「リエンチ」序曲(ワーグナー)
・歌劇「死の都」から「わたしに残されたしあわせ」(コルンゴルト) (*)
・歌曲集 作品10第1「献身」(リヒャルト・シュトラウス) (*)
・愛のあいさつ(エルガー)
・歌劇「ボエーム」から「さようなら」(プッチーニ)(*)
・歌劇「ボエーム」から「ミュゼットはみずみずしい唇に美しい歌を」(レオンカヴァルロ) (*)
・歌劇「ボエーム」から「ミミ・ピンソンは金髪娘」(レオンカヴァルロ) (*)
・歌劇「トゥーランドット」から「氷のような姫君の心も」(プッチーニ) (*)
・幻想序曲「ロメオとジュリエット」(チャイコフスキー)
・ホラ・スタカート(ディニク)
・歌劇「ジャンニ・スキッキ」から「わたしのおとうさん」(プッチーニ) (*)
・ベルリンの風(リンケ)
(2010年6月27日 ベルリン ワルトビューネ野外音楽堂)
指揮はイオン・マリン。最近の指揮界の事情には詳しくないが、歌劇場でキャリアを積んだ実力派と見た。サッカーのワールドカップ開催中とあって、リンケの「ベルリンの風」でブブゼラをトランペットとホルン奏者が吹いていたのがご愛嬌であった。