その一をアップした後、あっという間に日数が経過してしまい、明後日九日(金)にはもうEテレで第三十六回俳優祭のダイジェストが放送予定です。
芸能百花繚乱3月9日(金) 22:15〜22:58
そこで、形ばかりですが、簡単にその二をまとめます。
『殺陣田村』は新國劇お得意の殺陣を華麗に見せるもの。勘太郎、海老蔵、橋之助、扇雀が名題下の役者たちと挑みました。四人ともそれぞれ持ち味を出していたとは思いますが、全体としてはさすがに型は綺麗ではあるものの、迫力の点では物足りませんでした。なかでは勘九郎襲名前の最後の舞台となった勘太郎の殺陣には清冽な印象を受けました。名題下さんたちの熱演は賞賛したいと思います。
『模擬店』
模擬店は俳優祭の観客には役者さんたちと直接触れ合うことができる一番のお楽しみです。『殺陣田村』の開演前に俳優祭担当理事の梅玉さんから説明がありましたが、今回は事前準備の都合上模擬店では俳優協会のオリジナルグッズ販売がないこと、事前に金券を購入する方式をとっていないこと、また東日本大震災復興支援の一助として東北各地の物産店の出店販売があることが従来とは異なります。
しかしながら、国立劇場の二階ならびに三階の食堂に大幹部たちの模擬店を並べた配置にも大きな問題があったと思いますが、人気のある模擬店に観客が集中し、会場は大混雑だったこと、その割りには食べ物などが売れ残る模擬店もあり、最後は値段を割引いて売っていたところもあったのは運営上疑問符がつきました。これらの問題点はいずれ新装開場後の新しい歌舞伎座で開催されるであろう次回の俳優祭では是非とも再検討していただきたいものです。
若干苦言を呈しましたが、一時間という限られた時間内で一階から三階まで模擬店の間を駆けずり廻ったのは結局いつもと同じでした。
『質庫魂入替』(しちやのくらこころのいれかえ)
河竹黙阿弥作のこの滑稽浄瑠璃(竹本と常磐津の掛け合い)は、質屋の庫に収められている様々な古道具が騒ぎ出しているところに、奇妙院(梅玉)という法印が現れて、真言の秘密の一巻を使い、古物の魂を入れ替えてしまいます。十一人の大幹部の役者がそれぞれの扮装のままで入れ替えられた相手の役で踊りだすのが楽しい趣向です。妹背山のお三輪の時蔵が金時に、可愛らしい禿の三津五郎が雷になり、そして通人(助六のときと同じ)の勘三郎が八重垣姫の奥庭のさわりを踊るなど見所一杯です。最後の総踊りが揃わず、バラバラだったのも稽古期間の短い俳優祭ならではのご愛敬です。
これは是非とも全部放送してもらいたいですね。残念ながらチケットを確保できず、生の舞台をご覧になれなかった方々にも放送で楽しんでいただけるものと思いますから。