今月3日に肺炎のため亡くなった團十郎さんの本葬が本27日、東京・青山葬儀所にてしめやかに営まれました。関係者や歌舞伎ファン約2,500人が参列し、その死を惜しみました。
坂田藤十郎さんや尾上菊五郎さんが弔辞を述べました。以下、
47ニュース記事より(市川團十郎さん本葬 盟友・尾上菊五郎「本当に楽しかった」)
藤十郎さんは「成田屋さん、あなたとこんなに早くお別れするとは思ってなかった。努力と精進を重ねて、團十郎にふさわしい立派な歌舞伎俳優になった。多くの観客を魅了してこられた。新たな歌舞伎座の舞台に立ち、牽引してくれると思っていました。本当に残念でございます」と突然のお別れを悔やみ「66年、実に見事で立派な生涯でした。草葉の陰でいつまでも歌舞伎界を見守ってください」と遺影に語りかけました。
60年の付き合いの友人として菊五郎さんは「夏雄ちゃん(團十郎さんの本名)、60年の付き合い、本当に楽しかった。おもしろかった。そして心より、心よりありがとうと申します。せがれもしっかり勉強して成田屋一門代表です。安心して休んでください。お疲れ様でした」と、一言一句力を込めながら最期の別れを告げました。
菊五郎さんの弔辞は短いながら60年にわたる長く親しい付き合いを偲ばせる、簡潔でいて心のこもったもので聞いている我々も胸に沁みいりました。
海老蔵さんは悲しみをこらえながらも、気丈にふるまい、次のような喪主挨拶を述べました。以下、
47ニュース記事(海老蔵、團十郎さんと最期の別れ 涙で最愛の父であり師匠に感謝)より引用です。
とても寂しいです。父の子として生まれ、本当に幸せでした。父は若くして父を失い、母を失い、白血病という大病を2度も患い、そして息子が私という苦労の絶えない人生でした。とてもつらい苦しいことがあるにも関わらず、いつも優しく大きくドンとした父でした。
初めて父とお酒を飲んだ時、11代目と飲んだことがなかったため『孝俊(海老蔵の本名)うれしいよ、幸せだよ』と言ってくれたことがとても思い出に残っています。生前言ってたことはいつも『ありがとう』でした。人工呼吸を付ける時、意識がなくなる前に話したいと言い、テレビ電話での会話になった。母いわく、呼吸がつらく、しゃべれるものではなかったようですが、画面の父の顔はとても優しく、いつもと同じ笑顔でした。父の笑顔はまぶたに焼き付いています。一生の幸せです。
先日、父の残した句が出てきました。『色は空 空は色との 時なき世へ』。初めてそれを見た時、あぁ、自分の最期を悟っていたのかと。気づかなかった。大変申し訳なく、情けない思い。父は空を眺めるのが好きでした。もし、空を眺める時は、少しでも父を思い出していただければ幸いです。
私にとって父であり、師匠であって、かけがえのない存在を亡くしましたが、父からいただいたこの体、35年かけて伝えてくれた歌舞伎の精神、これを一生かけてこの道で精進したい。最後になりますが、父は感謝する心をとても大切にする方でした、父に成り代わりまして言わせてください。本日は本当にありがとうございました。
辞世の句は色即是空を思わせる句で、苦労の絶えないこの世の人生のしがらみを離れて無限時空の世界に飛翔してゆこうという気持ちを読み取れまして、正直のところ読んでいて涙が出ました。
海老蔵さんも父であり師匠であった團十郎さんを亡くした悲しみ乗り越えて、市川宗家一門を背負って立ち歌舞伎に精進して行こうという覚悟のほどを感じさせる立派な挨拶でした。