徒然なる日々の条々を、六条亭が日記風に綴ります。本屋「六条亭雑記」もよろしく。
 
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【2018. 08. 18 (土)】 author : スポンサードリンク
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九月の観劇予定
記録的な猛暑、一方では局地的な大雨による災害が発生するなど異例づくめの八月も今日で終わります。しかし、今日も猛暑日を記録し、そして明日も東京では35度と予報が出ています。

ですから、明日から九月と暦が変わりますが、平年並みの気温になるまで八月が続いているような錯覚を覚えそうです。それでも明日は待望の花形歌舞伎の初日です。初日はいつもの通り昼夜通して観劇します。

初日の舞台の様子は出来る限り拙Twitterで発信の予定です。なお、九月の観劇予定は次の通りです。演奏会形式ですが、ミラノ・スカラ座の『アイーダ』をドゥダメル指揮で聴きますので、これも楽しみです。

・ 一日(日) 歌舞伎座 花形歌舞伎 初日昼夜通し
・ 九日(月) 新橋演舞場 九月大歌舞伎 夜の部
・ 十九日(木) ミラノ・スカラ座 『アイーダ』(演奏会形式) NHKホール
・ 二十三日(月) 歌舞伎座 花形歌舞伎 昼の部
・ 二十五日(水) 歌舞伎座 花形歌舞伎 千穐楽 夜の部
【2013. 08. 31 (土)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(6) | trackbacks(0) |
南座吉例顔見世興行の演目と配役の発表!
師走の風物詩、南座顔見世の演目と主な配役が発表されました。猿翁、猿之助、中車襲名披露興行の棹尾を飾る公演です。藤十郎、仁左衛門、梅玉ら幹部俳優が共演します。『厳島招檜扇』や新口村を舞踊化した『道行雪故郷』『児雷也』など珍しい演目が並んでいます。

歌舞伎美人ニュースは、こちら

京都四條南座

京の年中行事
當る午歳 吉例顔見世興行
          東西合同大歌舞伎
        二代目市川猿 翁
        四代目市川猿之助 襲名披露
        九代目市川中 車

平成25年11月30日(土)初日〜12月26日(木)千穐楽


【昼の部】(午前10時30分開演)


第一 厳島招檜扇(いつくしままねくひおうぎ)

    日招ぎの清盛
               平相国清盛       我 當
              三位中将重衡       亀 寿
              瀬尾三郎兼経       亀 鶴
              小松三位維盛       萬太郎
                  祇王       壱太郎
              越中前司盛俊       月乃助
       仏御前実は源義朝息女九重姫       笑三郎
               内大臣宗盛       進之介

    仮名手本忠臣蔵
第二 道行旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいり)

                 戸無瀬       時 蔵
                  小浪       梅 枝
                 奴可内       翫 雀

第三 ぢいさんばあさん

               美濃部伊織       中 車
              下嶋甚右衛門       右 近
                宮重久弥       月乃助
                 妻きく       春 猿
                用人喜平       寿 猿
                戸谷主税       薪 車
              宮重久右衛門       猿 弥
               伊織妻るん       扇 雀

第四 二人椀久


               椀屋久兵衛       仁左衛門
                松山太夫       孝太郎

第五 三代猿之助四十八撰の内 義経千本桜

    川連法眼館の場
    市川猿之助宙乗り狐六方相勤め申し候

     佐藤忠信/佐藤忠信実は源九郎狐  亀治郎改め猿之助
                 静御前       秀太郎
                亀井六郎       松 緑
                駿河次郎       愛之助
               法眼妻飛鳥       竹三郎
                川連法眼       段四郎
                 源義経       藤十郎


【夜の部】(午後4時15分開演)


第一 元禄忠臣蔵

    御浜御殿綱豊卿

               徳川綱豊卿       仁左衛門
              富森助右衛門       中 車
               中臈お喜世       孝太郎
               御祐筆江島       時 蔵
               新井勘解由       我 當

第二 二代目猿翁、四代目猿之助、九代目中車襲名披露 口上
                      猿之助改め猿 翁
                      亀治郎改め猿之助
                           中 車
                            ○
                           藤十郎

第三 猿翁十種の内 黒塚

         老女岩手実は安達原鬼女  亀治郎改め猿之助
               山伏大和坊       門之助
               同 讃岐坊       右 近
               強力太郎吾       猿 弥
               阿闍梨祐慶       梅 玉

第四 道行雪故郷(みちゆきゆきのふるさと)

    新口村

                傾城梅川       藤十郎
               亀屋忠兵衛       翫 雀

第五 児雷也

           児雷也実は尾形弘行       梅 玉
              高砂勇美之助       愛之助
                仙素道人       猿 弥
            妖婦越路実は綱手       笑 也
              山賊夜叉五郎       松 緑

【2013. 08. 29 (木)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(0) | trackbacks(0) |
ヤンソンス/ベートーヴェン:交響曲全集のBlu-ray、DVDの発売!
2012年11月〜12月に行われたマリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団来日公演は、ベートーヴェン交響曲全曲演奏でした。全曲とも今のヤンソンスの好調さを裏付けるように、非常に水準の高いもので、BS2で放送された番組を視聴して、大変感銘を受けました。

その全曲演奏がBlu-rayとDVDで発売されます。高音質・高画質を謳っています。しかし、その分なかなかよいお値段です。

ヤンソンス/ベートーヴェン:交響曲全集(映像)

【2013. 08. 27 (火)】 author : 六条亭
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三津五郎、入院・加療のため休演!
九月の新橋演舞場九月大歌舞伎の公演に出演予定だった三津五郎が、入院・加療のため、休演することが正式に発表されました。

坂東三津五郎公式HP

「この度は新橋演舞場『九月大歌舞伎』を休演することとなり、座頭の高麗屋さん始め代役を引き受けて頂くことになった左團次さん、翫雀さん、橋之助さんほか関係各位の皆様、そして何より舞台を楽しみにされていたお客様には大変ご迷惑をお掛けすることとなりましたことを深くお詫び申し上げます。
これまで代役を仰せつかることはあっても、この五十年病気・怪我での入院もなく休まず舞台に打ちこめたのは丈夫な体のお陰だと思っておりました。
ところが例年の健康診断を七月に受けましたところ、膵臓に腫瘍が見つかりました。早期発見出来たことは膵臓の病気としては大変幸運なことだそうです。
この病気の更なる検査、完治に向けての治療のためしばらく三津五郎にお時間を頂戴したく存じます。」

八月納涼歌舞伎は病をおして出演していたのですね。松竹も役者さんの健康管理と興行のあり方を見直してほしいですね。

九月大歌舞伎は、次の通り代役が発表されました。

坂東三津五郎休演に伴う配役変更のお知らせ

【昼の部】
『元禄忠臣蔵』御浜御殿綱豊卿
           徳川綱豊卿    中村橋之助
           富森助右衛門   中村翫雀

【夜の部】
『不知火検校』
        寺社奉行石坂喜内   市川左團次

『馬盗人』
           ならず者悪太   中村翫雀
           百姓六兵衛    中村橋之助


歌舞伎座 「歌舞伎座特別舞踊会」9月27日(金)
予定しておりました『峠の万歳』を以下に演目変更いたします。

『幻椀久』(まぼろしわんきゅう) 清元連中
           立方     花柳壽輔


【2013. 08. 26 (月)】 author : 六条亭
| 歌舞伎 | comments(4) | trackbacks(0) |
断捨離は難しい、とくに捨は!?
家庭で使っている電気器具は製品によって寿命は様々です。しかし、多くの方が経験されていると思いますが、不思議なことに一つの器具が寿命が来て買い替えが必要になるとまた別の器具も故障するということがよくあります。考えてみますと、メーカーの修理部品の在庫が7年〜10年程度ですから、その期間を越えて使っている電気製品は故障したらもう修理ができず、買い替えせざるをえません。そうやって買い替えた時期は同じであれば、故障もほぼ同じ時期になってしまうのためなのでしょう。今回自宅では掃除機と炊飯器が寿命でした。いずれも10年以上使いました。おまけに20年近く経っていたガスコンロまで調子が悪くなり、あわせて3つの製品を買い替えました。年齢から考えても次が必要かは分かりませんから、慎重に検討・吟味して購入しました。いずれも多機能になっていて便利ですが、新しく覚えることが増えるのはなかなか面倒くさいものです。

最近の電気製品は手入れをよくして、継続して使っていれば、余程の外れに当たってしまわない限り10年以上使えるのはざらです。現に我が家のアナログ・テレビは14年目に入っていますが、まだ健在です。2011年7月の地デジ化対応はどうしたのかと言えば、マンションにケーブルテレビが入り、15年3月までデジアナ変換でそのまま使えるのです(デジアナ変換とは)。歳をとるとテレビを見る好みは異なりますから、どうしても二台必要になります。そこで自分用にはパソコンの買い替えの時にデジタルチューナー付きの機種を購入した結果、リビングでは家人がアナログ・テレビを、私が自室でパソコンを立ち上げて、デジタル放送を見るというアナログとデジタルが混在の状況です。

電気製品の買い替えが一段落しますと、そろそろ部屋の片付けに取りかからなくてはいけません。何しろ収集癖があるうえに整理ベタを自認する私ですから、ちょっとほったらかしにするとすぐ部屋に荷物が溢れます。会社員現役の時代は忙しさを理由にかまけていましたが、一応拘束される時間が少なくなるとそうも行きません。約3年前に大型の本棚を設置して、本についてはどうやらこうやら整理ができました。その時あわせて不要と判断される本については相当量処分しましたので、その後増加した蔵書はさほど多くはありません。

それで本棚が空いているかと言えば、答えはノーです(笑)。詰め込みで何とか本棚は収まっているものの、元凶はディスクです。DVD時代になって薄いディスクに安心してしまって、自分で録画したり、友人からいただくなどした映像が溜まる一方!パソコンを買い替えてからはBlu-rayでハイビジョン映像を調子に乗って録っているうちにさらにディスクは急増しています。しかも、最近は市販Blu-rayも値下がりして手の届く金額になっていますから、そちらもクラシック音楽を中心についつい(笑)。

ですから、今回まず手をつけなくてはいけないのは、ディスクの整理とそれによって不要と判断されたものの処分です。バックアップをすでにとってあるもの、これからバックアップをとる必要があるもの、不要なものとの区別さえできれば、思ったよりは作業効率は捗るものと楽観視しています。

一番厄介でスペースを占めているのはもうまったく市場価値がないとされているLD(レーザーディスク)です。幸か不幸か私の持っているLDプレイヤーはまだ現役で動きます。処分するためにもDVD化しておくものと不要なものとの区別、そして実際のDVD化の作業が必要です。言うまでもありませんが、HDD→DVDのように○倍速なぞというものはありませんから、収録されているコンテンツの時間がそのままかかる作業です。

同じくスペース的には押し入れを占領しているオープン・テープの整理も喫緊の課題です。デジタル化という意味ではLDと同様ですが、とにかく一度テープを再生してみて、音声が残しておくに足りる内容かどうかです。大体20年以前のものばかりですから、テープの経年劣化は確実に進んでいるようです。思い出のある録音ばかりですから、名演奏のはずだったものが音声不良になっていると落胆します。まぁ逆にあまり期待していなかったり、記憶に残っていない録音が予想外によい音だったりの、いわば拾い物の場合もありますが。そのうえで必要だと判断されたテープはパソコンに取り込んでデジタル・ファイル化します。これまた気の遠くなる作業ではあります。

私のささやかな書斎兼物置はクーラーがありませんから、今年のように暑い夏はとても昼間作業できるような環境にありません。加えてパソコンやテープ・デッキ、レコーダー等からの放熱も半端ではありません。しかし、断捨離は年齢的にも必要ですし、とにかく私の場合は整理して捨てることは絶対必要なことだと認識しています。暑さも峠を越えてくれれば、本格的に取りかかるつもりです。しかし、そうは言っても愛着あるものも多く、捨てるということはそう簡単にはできそうにもありません。
【2013. 08. 25 (日)】 author : 六条亭
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中川右介『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)を読む


『十一代目團十郎と六代目右歌衛門』『歌舞伎座誕生』など歌舞伎に関する歴史を書いてきた中川右介氏の最新刊です。本書も氏のクラシック音楽関係の著作と同様に、多くの文献資料を縦横に駆使して、「明治以降の歌舞伎の家系と血統と藝がどのように継承されていったかを描く」労作です。 新書版ですが、総ページ数で450ページものヴォリュームがあります。 四月に新装開場した第五期歌舞伎座にあわせての刊行を目指したようですが、昨年十二月の勘三郎、そして二月の團十郎逝去のショックで、「それぞれ数日間何も書く気がしなくなってしまったのだ」とあとがきにありますが、同様に「この本を書くという仕事があったからこそ、そのショックから立ち直れたとも言える」ともあります。

そのような歌舞伎を愛する著者が複雑な歌舞伎の家系の歴史を書くにあたってとった基本的スタンスは、第五期歌舞伎座新装開場の柿葺落興行当初の三ヶ月において主役を務めた役者が属する七つの家に絞ったことです。これは現代の観客にとって実際に自分の目で観ている役者の家系のことが書いてある訳ですから、大変親しみを感じながら本書を繙くことができます。

そして本書は「この七家の家と血と藝の継承を描くが、全体としては、明治期以降現在までの歌舞伎座の座頭をめぐる権力闘争の歴史でもある」と著者は言います。権力闘争と言うと引いてしまう読者もいるかもしれません。しかし、どこの世界、組織でもトップを目指そうという野心があるのが人間の常です。ですから、歌舞伎役者も「歌舞伎座で主役を演じること」を求める闘争があるのは至極当然のことです。ましてや、世襲制度に支えられた門閥主義が色濃く残る世界です。七家の寡占体制は複雑な姻戚関係にも裏打ちされて揺るぐことはありません。

しかし、明治期以降、とくに歌舞伎座誕生以降の役者の家も栄枯盛衰・有為転変があり、その歴史を七家について列伝体形式で書かれた本書はかってない出色の歌舞伎、さらに言えば歌舞伎座の歴史になっています。ただし、「藝」そのものの解説は本書では行われていないことに注意する必要があります。

全体は四部に分かれ、「第四部 新たな希望」と題して歌舞伎役者の現在と今後の展望にも簡単に触れられていますが、本書の核心は第一部から第三部までの各家ごとの歴史です。通して読むことが前提でしょうが、各家ごとについて二話または三話があてられていますので、各家ごとに通して読むこと可能なように配慮されています。役者の家系は実子・養子、結婚・再婚、そして襲名によって次々と名前が変わって行くので、複雑きわまりないのですが、そこは家系図や主な登場人物となる役者のプロフィールも挿入されていて、読者の理解を助けます。ただし、 文献資料では例えば養子となっていても実子の噂があったり、実の親が不詳である場合があります。その点も著者は不明な点はハッキリと分からないと書いています。

私は本書を読んで日本古代の天皇家の争い、藤原一族や平家が天皇の外戚を通して政治の実権を握って行く王朝の歴史を思い起こしました。そして主に藝談などを基に書かれていると思われるいろいろなエピソードは大変人間臭く、ドラマチックで読み飽きることはありません。今の歌舞伎に関心のある方にはぜひ一度読んでいただきたい本です。

なお、目次に基づいて本書の構成を本記事の末尾に七家に分けて表形式で作成してみました。縦軸が七家、横軸が第一部から第三部です。カッコ内が家ごとの話の通し番号です。これにより本書の緻密な構成が明らかになると思います。ただし、私のブログ作成技術の拙さから記事本文から相当の空白ができてしまったことをお詫びします。

また、第五話はフランス系アメリカ人の子として際立った美男子であった十五代目市村羽左衛門が、また第二十話は「中村勘三郎の死」として十八代目勘三郎が例外的に取り上げられています。これは両名跡とも現時点では残念なことに名乗る役者がいなくなってしまいましたが、江戸三座の座元という由緒ある名前として、さらには十八代目勘三郎への鎮魂歌として書かれているものと思います。


























































第一部 第二部 第三部
明治から大正 大正から昭和戦前 昭和戦後から平成
市川團十郎家
第一話(その一) 第十一話(その二) 第十三話(その三)
尾上菊五郎家
第二話(その一) 第七話(その二) 第十五話(その三)
中村歌右衛門家
第三話(その一) 第六話(その二) 第十四話(その三)
片岡仁左衛門家
第四話(その一) 第十二話(その二)
第十八話(その三)
中村吉右衛門家
第八話(その一) 第十七話(その二)
松本幸四郎家
第九話(その一) 第十六話(その二)
守田勘彌・坂東三津五郎家 第十話(その一) 第十九話(その二)


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【2013. 08. 21 (水)】 author : 六条亭
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『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』『色彩間苅豆 かさね』ー歌舞伎座新開場柿葺落八月納涼歌舞伎第二部の感想
続いて同じ二日初日に観劇した八月納涼歌舞伎第二部の感想を簡単に記します。

『梅雨小袖昔八丈 髪結新三 』

勘三郎が父十七代目から受け継ぎ、得意にしていた世話物狂言です。三津五郎が勘三郎に代わってというよりも勘三郎とともに演じているという気持ちで舞台に上がっていると思いました。もちろん、三津五郎も過去に演じていますが、父九代目三津五郎が菊五郎劇団にいた関係で二代目松緑の舞台を見てその藝を吸収していますから、自ずと勘三郎の新三とは肌合いが異なります。現菊五郎と勘三郎の中間とでも言うのでしょうか、小悪党ながら明るさとスッキリとした粋と男の色気があります。

勘三郎追悼番組で放送された『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』は今回DVDにもなりましたが、スッキリとした小悪党には変わりはありませんが、どこか陰りがあり、それまでの人生の闇をうかがわせました。その点三津五郎の新三は同じ小悪党でも憎めない部分に比重がかかっているように思いました。

ですから、白子屋で忠七の髪を結いながら巧みにお熊との駆け落ちを誘うところはその本心を覚られないような自然体です。これなら忠七も乗ってこようというものです。永代橋で本性を顕して忠七を足蹴にする場面は本来ならば忠七が騙されてお熊まで拐かされていて気の毒なのですが、新三の啖呵は聴いていてなぜか爽快です。歌舞伎の悪の魅力でしょう。

新三の長屋では勘九郎の勝奴との台詞のやり取りも息があっていてポンポンと快調なテンポで進みます。大家の長兵衛は彌十郎。何度か演じていますから、とぼけた味と新三をやり込める大きさも出ています。三津五郎は長兵衛も演じていますから、三十両をめぐるやり取りはこれまた二人の息がよくあっているとともに、間が非常に良いです。こうでなくてはこの場面の面白さ、可笑し味は出ません。

橋之助の源七は本来ならば新三より年齢が上の侠客ですが、そうは見えないのが唯一の欠点です。しかし、それ以外は押し出しもあり貫禄十分で、新三にあしらわれた悔しさを滲ませます。幕切れは三津五郎と釣り合いがとれていて結構でした。

扇雀は今月立役ばかりですが、この忠七も過不足なく演じています。この人も勘三郎の相手役をいろいろと演じてきました。しかし、勘三郎亡き後今後どのような役を演じていき、歌舞伎界において自分をどう位置付けるか一つの転機を迎えていると思います。

脇役では萬次郎の白子屋の後家お常、秀調の車力善八 は切ってはめたような適役です。この二人の登場で世話物の雰囲気がより濃くなっています。児太郎のお熊はまだ教えられたことをそのままやっているだけで、気持ちが入っていません。さらに勉強してほしいと思います。亀蔵の家主女房おかくは面白いのですが、本来の役を越えてしまっているように思います。

『色彩間苅豆 かさね』

与右衛門の悪とかさねの怨念が絡み合う舞踊劇です。かさねは最初の美しい姿から与右衛門の過去の悪事のために醜く面貌が変わり、殺されてしまいますが、その怨念が与右衛門に祟るというものです。

ですから、美男美女の組み合わせでないと視覚的にも舞台映えしません。その点は橋之助と福助の兄弟コンビは悪くはないのです。それではこの舞踊劇を楽しめたかと言えば、答えはノーでした。何故でしょうか?何かが足りないからです。それは二人とも綺麗に踊っているけれども、この舞踊劇に必須の悪と怨念の量が少ないからだと思いました。ですから、ピンと張りつめた緊張感に不足し、緩い感じになっています。相手役を変えて観てみたいものと思いました。



【2013. 08. 21 (水)】 author : 六条亭
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『野崎村』『鏡獅子』ー歌舞伎座新開場柿葺落八月納涼歌舞伎第一部の感想
歌舞伎座さよなら公演と建て替えを経て、四年ぶりに八月納涼歌舞伎が歌舞伎座新開場柿葺落公演として戻ってきました。平成二年に勘三郎(当時勘九郎)と三津五郎(当時八十助)が中心になって始めた試みは、三部制の導入もあってすっかり夏の風物詩として定着しました。その納涼歌舞伎の復活は歌舞伎ファンにとって嬉しいことです。

しかしながら、現実には盟主であった勘三郎を喪ったことの大きさをいやが上にも実感する公演でした。全体として演目も役者も小ぶりなのです。しかも、三津五郎がいかに奮闘していても出演する役者がほぼ固定化していては新鮮味がありません。平成中村座のロンングラン公演の時のようにゲストとして新たに参加する役者を迎えることはできなかったのでしょうか?

加えて歌舞伎座新開場柿葺落公演として三部制を三ヶ月続けていますから、三部制の有難みもさほど感じませんし、料金は下がったものの、どうしても比べてしまってかえって割高感があります。 それは演目の選択にも言えます。 過去の納涼歌舞伎では勘三郎主導で古典的な演目ばかりではなく普段では上演できないうような実験的な新作も舞台にかけられて、そのすべてが成功した訳ではありませんでしたが、歌舞伎界に大きな刺激を与えたことは事実です。しかし、今回の演目は勘三郎追悼の意味合いがあることは理解できるつもりですが、これと言って魅力を感じさせる演目が少ないのです。七月花形歌舞伎の通し狂言の方が観ている側をワクワクさせるものがありました。

勘三郎が復帰したら是非踊りたいと言っていた『鏡獅子』は公演の前半と後半で二人の子息勘九郎と七之助で分けて踊る上演形態にしたことは評価したいと思います。しかし、それができるならば、次元は違いますが、『野崎村』でなぜ両花道にしなかったのか?大いに疑問です。たしかに両花道にするということは、座席数を減じることになり、興行する側にはリスクを伴います。しかし、『野崎村』の演出と舞台効果のうえでで両花道は欠かせないものだと思います。両花道であれば上手の仮花道を行く久松の駕籠が花道、お染と母の乗った船が上手にある、という逆の形になっています。そのため一番の見せ場が何とも間延びしてしまいました。残念です。

前置きが長くなりました。第一部と第二部は二日の初日に観劇しました。例によってその簡単な感想をまず第一部について記したいと思います。

『野崎村』

福助の亡き父芝翫が得意にし、福助自身も過去に演じてきたお光です。悪かろうはずがないのですが、これは私の偏った見方であるのを承知のうえであえて書きますと、前半がよくないのです。許婚の久松を迎えた喜びを表す演技(なますを作るため大根を切っていて指に怪我をする、また鏡台を見ながら髪形をなおすところなど)と突然訪ねてきたお染に邪険にする演技がどうも大袈裟なのです。福助が悪い時の癖である顔で演技するやり方が逆効果になっています。折角の美形が綺麗に見えません。

それに対してお染と久松の二人の心中の決心をしていることに気が付いて髪をおろした後の福助はお光の悲哀を全身で表現していて秀逸です。幕切れは両花道であればさらに情感が増したでしょうが、それでも去って行く二人に対してお光は抑えようとしても抑えきれない哀しみを噴出させて父久作にとりすがって泣き崩れる姿は感動的です。

彌十郎の久作がすっかりと持ち役にしていて、久松と娘お光との間で揺れ動く情愛を巧みに見せています。七之助のお染が意外に平凡。仕所がない役ですが、お人形のような大店のお嬢様でありながら、久松との運命を予感させる危うさも必要でしょう。

扇雀はもう久松のような前髪の役が似合わなくなっていますが、そこはたしかな演技力で補っています。東蔵の油屋の後家お常は安定した役作り。しかし、このような役を演じられる役者が少ないのも気になるところです。


『鏡獅子』

勘九郎は昨年の新橋演舞場の襲名披露公演でこの『鏡獅子』を踊っています。父親が六代目菊五郎ゆかりのものとして、若い時から取り組んで来た 舞踊の大曲です。

勘九郎もその名前に恥じない立派な踊りを見せました。彼の踊りのよいところは全身をしならせるような柔らかさがある点です。ですから、どんな振りでも形が崩れず、綺麗に見えます。前シテの弥生は初々しさと清潔な色気があります。襲名披露の時の緊張感溢れた弥生と異なってたっぷりと余裕を持って踊っているようにも見えました。

後シテの獅子の精は勇壮でありながら、決して力で押しきる踊りではありませんから、毛振りでも形が崩れません。さらに磨きこんでいってもらいたい踊りです。

胡蝶は鶴松と虎之介。鶴松が随分成長した青年の顔になっていて驚きました。いい意味でもう胡蝶は卒業でしょう。

七之助の踊る後半のチケットは取っていませんが、やはり勘九郎との踊り比べをしたくなります。時間が許せば一幕見をしたいと考えていますが、果たしてどうなりますやら。


【2013. 08. 18 (日)】 author : 六条亭
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染五郎、晴明神社に新作『陰陽師 滝夜叉姫』の成功祈願
九月花形歌舞伎はチケット一般発売日に昼夜ともに完売となる大人気です。花形七人の揃い踏みが人気の理由でしょう。しかも、夜の部は歌舞伎座新開場柿葺落公演としてははじめてとなる新作歌舞伎で、夢枕獏の人気シリーズ陰陽師から滝夜叉姫が上演されます。


主役の安部晴明を演じる染五郎が14日、晴明ゆかりの京都市晴明神社に舞台の成功と安全の祈願を行いました。

市川染五郎「降りてきてください」新作歌舞伎の成功祈願(スポーツ報知記事)

転落事故から1年…染五郎「晴明になりきる」(サンスポ記事)

染五郎 手首完治「陰陽師」に全力投球(ディリースポーツ記事)

染五郎は昨年八月の舞台公演中の奈落転落事故からまもなく一年。今年六月には、負傷した右手首に入っていたプレートも除去したといい「お医者様から『完治』という言葉をいただきましたので自信を持って、この『陰陽師』を作り上げるために思いをぶつけていきたい」と語っています。

【2013. 08. 15 (木)】 author : 六条亭
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通し狂言『東海道四谷怪談』ー歌舞伎座新開場柿葺落七月花形歌舞伎夜の部の感想
この四谷怪談を菊之助が演じると発表された時には、最初はあっと驚きました。歌右衞門や勘三郎が演じていても、音羽屋では祖父梅幸も父菊五郎も演じておらず、あまり縁がない狂言と思い込んでいたのです。しかし、よく考えてみれば、それは大きな誤りでした。『仮名手本忠臣蔵』と裏表で組み合わされて上演された『東海道四谷怪談』、三役の初演は三代目菊五郎!音羽屋ゆかりの狂言だったのです。

菊之助は十八代目勘三郎に四谷怪談を教えるよ、と言われていたそうです。勘三郎の早逝により残念なことにそれは実現しませんでした。今回の上演にあたり菊之助は十七代目勘三郎の教えを受けた玉三郎に習い、さらに周到なことに十七代目の弟子であり、今も現役の役者である小山三に当たり役であるおいろでの出演を依頼し、裏方に関しての細々とした指導をもあおいでいます。この点についての詳細は、拙ブログ記事「小山三ひとり語り」(最終回)ー「演劇界」8月号を読むをご参照くだされば幸いです。

この通し狂言も初日と千穐楽の二回観劇しました。菊之助の三役の成果やいかにと大いに期待して観劇に臨みました。三役のなかでは佐藤与茂七が初日からもっとも目覚ましい出来だったと思います。女形で出発しその美しさと艶やかさでは群を抜いている菊之助も最近は立ち役にも積極的に挑んでいますから、取り立てて驚くことではないかもしれません。しかし、やはり特筆すべきはそのスッキリとした二枚目ぶりで、三幕目本所砂村隠亡堀の場のだんまりではとりわけ際立ちます。歌舞伎役者の生足の美しさということもよく言われますが、ここでも菊之助は存分にそれを見せています。ただ、序幕では地獄宿で遊ぶにしてはいささか生硬さ、青臭さが見えました。

肝心のお岩ですが、武家の娘の矜持を強調した役作りです。今回蛇山庵室の前に珍しい蛍狩の場が出ましたので、全体を通してお岩の伊右衛門に対する愛着・執着の度合いは今までよりも強く感じられました。それだけに騙されたお岩の怒りと嫉妬は激しいものがあると思います。

お岩は産後の肥立ちが悪く床についていることが多く、今で言えば家庭内暴力をふるう夫伊右衛門に対してもじっと耐えて貞節を尽くしますが、隣家の伊藤家に血の道の薬と騙されて面相が変わる毒薬を飲んでしまう。激痛に襲われた後に宅悦に見せられた鏡台で変わり果てた己の面相に驚愕するのです。そこで伊藤家にお礼を言いに行くために鉄漿をつけ、髪梳きをします。ここらあたりが騙されたことに対する怒りが明確で、それまでの女形の口跡から次第に立役のものに変わります。その是非に関しては議論は別れるところでしょう。しかし、五代目菊五郎に芸談を読んでもお岩の嫉妬と怒りを強調するために菊之助のとったやり方は肯定出来るものだと考えます。

ただし、初日に観劇した際には髪梳きはまだ段取りめいていて、髪がズルズルっと抜け落ちる怖さはさほど出ていませんでした。それが千穐楽に観劇した時にはまったく漂っている空気が違うと思わせるほど濃いものになっていて、お岩の無念、恨みの強さが感じられました。ここで観客に怖さを覚えさせなければ、本所砂村隠亡堀や蛇山庵室の場のお岩の幽霊の伊右衛門へに執着が理解できないでしょう。小平は早替わりの鮮やかさで見せる役ですが、不運な哀れさは十分でした。

染五郎の伊右衛門も初日観劇時には色悪の凄みを少々ドスをきかせたセリフ回しで強調していましたが、千穐楽にはごく自然な感じに変わっていました。歌舞伎の色悪のなかでもこれほど徹底した冷徹非道な男も珍しいでしょう。その点を印象付けるための初日の工夫だったと思いますし、染五郎自身の線の細さをカバーするためだったのでしょう。しかし、もうそのような演じ方が不要なほど千穐楽の染五郎は伊右衛門として出来上がっていました。虚無的とも言える悪は空恐ろしいほどで、他方お岩や伊藤家のお梅に執着される男の色気も存分に持っている伊右衛門になっていました。

こう見てくると四谷怪談のお岩と伊右衛門としては菊之助と染五郎は最良の組み合わせになっていました。今後も二人の組み合わせでの再演はあると思いますが、課題があるとあるとすれば今までの四谷怪談にあったおどろおどろしさに幾分欠けていることでしょうか。この点は二人の芸の質によってくるところが大きいと思います。今後に期待したいと思います。

松緑の直助もニンから言っても適役です。ただ、変な言い方かもしれませんが、サッパリとしたスマート過ぎる現代っ子の直助です。もっと嫌らしさのある、また複線的な直助でないと今回は出ていない「三角屋敷」(四幕目)の直助は演じられないと考えます。梅枝お袖は貧苦のなかで地獄宿に身を落としながらも、父を助けようとする健気さと与茂七と直助に対する屈折した思いを自然に体現しています。この若さで世話物を巧まず演じることが出来るも得難い女形です。

主役を支える脇役もヴェテラン勢で固めています。錦吾の四谷左門、萬次郎の後家お弓、團蔵の伊藤喜兵衛など充実しています。市蔵の按摩宅悦も上手く、菊之助を支えていますが、この役はもっと猥雑な味があってもよいと思います。この点は小山三のおいろはさすがで、舞台に出てくるのみで地獄宿の景色が見えるような気になります。歌女之丞の乳母お槙も手堅いものです。

戸板返し、提灯抜け、仏壇返し、宙乗りなどお岩の亡霊のケレンも非常に見事に見せていて、花形歌舞伎としての東海道四谷怪談は大成功だったと思います。勘九郎とともに菊之助が今後もこの三役に挑み続けてほしいものです。

【2013. 08. 15 (木)】 author : 六条亭
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