14日に5年ぶりに大阪松竹座に日帰りで行ってきました。
坂東玉三郎 初春特別舞踊公演
中村七之助 出演
ツイッターに投稿した内容に手を加えて、以下に簡単にまとめます。
今度の松竹座の玉三郎の特別舞踊公演は、自らが座頭として七之助とともに踊ることにより永年修行で培った女形の藝を伝える場でもあったと思います。勘三郎とは多くの演目で共演してきた、いわば玉三郎の盟友。玉三郎は勘三郎の遺児七之助を一人前の役者に育て上げることを自らの使命と課したのだと思います。菊之助がこの十年間著しい成長を見せ、まさに時分の華を開花させているのは、本人の資質と努力が大きいことは言うまでもありませんが、玉三郎と踊った『京鹿子娘二人道成寺』での共演が一つのきっかけとなったことも事実です。
七之助も最近の成長は著しいものがありますが、舞踊においては今ひとつ食い足りない点も見受けられました。今回玉三郎と同じ舞台に立って踊ることは格別の緊張感があったことでしょう。その成果は確実に出ていました。
『村松風二人汐汲』
この『村松風二人汐汲』は『須磨の写絵』と同じ題材を取り上げていて、須磨の浦に流された在原行平が、かの地で契りを交わしたという海女の姉妹・松風と村雨が行平が残した烏帽子と狩衣を身にまといながら、行平を偲んで踊りというものです。
初演は玉三郎と福助だったのですが、芸風の違いから来るのでしょうか、姉妹としてはどうもしっくりときませんでした。今回はいかにと期待して観たのですが、玉三郎の変わらぬ気品ある美しさに七之助も負けてはおらず、姉妹のたおやかな美しさを堪能できました。
能がかりの部分もあり、比較的地味な舞踊ですが、静謐な雰囲気のなかにも姉妹の哀しみと変わらぬ恋心が滲み出ていました。
『操り三番叟』
操三番叟は猿弥が人形振りで、キレも柔らかさもあわせ持った爽やかさ! 薪車の後見との息もよくあっていて、月乃助、笑三郎とともにお正月らしい荘重で華やかな舞踊になっていました。猿弥のキレの良い踊りはもっと観ていたいと思いました。
『二人藤娘』
通常の『藤娘』の二人ヴァージョンを二人で踊り分ける趣向。道成寺と異なり、藤娘は短い曲でもあり、踊り分けが二人道成寺ほど成功していないと思いました。しかし、七之助の踊りが柔らかく、玉三郎と同じ手を踊っているのを観ると非常に綺麗で、初々しさと可愛らしさは二乗以上でした。二人で踊っている時はオペラグラスをどちらに向けてよいか迷ってしまいます。幕切れは二人揃って花道を引っ込みます。
『於染久松色読販 心中翌の噂』
お染、久松、お光は七之助の三役早替わりが鮮やかに決まっていて、観客を沸かせました。所作立ての最後に玉三郎のお六が登場してさすがの貫禄です。名題下さんたちが使う傘が「やまとや」ではなく「なかむらや」になっていたのは玉三郎らしい配慮です。切り口上で玉三郎は松竹座で初春公演を、しかも七之助や澤瀉屋一門と一緒に出すことができ、また連日多くのお客様にご来場いただいていることをけっして流麗ではないが真情のこもった挨拶。七之助も玉三郎と同じ舞台に立たせてもらったことを感謝しつつなお一層精進いたしますと挨拶。それでも玉三郎より一歩退いて座っていたのが印象的でした。