模擬店や演芸ショーは感想とまではいかないので後回しにさせてもらい、最後の演目『鈴ヶ森錦繍雲駕』(すずがもりにしきのくもかご)についてまとめます。
『鈴ヶ森』は上演頻度は高いので、よく知られている演目でしょう。白井権八が鈴ヶ森を通る際襲ってきた雲助を片付けているたところを通りがかった幡随院長兵衛が江戸での世話を請け負う話です。白井権八が雲助たちと繰り広げる立廻りも見ものの一つになっています。
今回白井権八をちょうど27日当日が9歳の誕生日となる松本金太郎(染五郎の長男)、 長兵衛を六月に左近襲名を控えた藤間大河(松緑の長男)が演じる話題の舞台です。雲助たちに扮する大幹部・幹部たちがあの手この手で襲いかかります。プログラムを見ると雲助のなかにくまモンがいるではありませんか!
『鈴ケ森錦繍雲籠』
幕が開くといつものように薄汚い格好をした雲助たちが屯ろしています。普段は演じていない役者の沢山いて、よ〜く目を凝らさないと誰が誰やら分かりません。もっとも分からなかったのが魁春でした。あの女形がこんな拵えでとイメージが変わります。そこへ花道から雲助和尚が登場します。三津五郎です。昨年の納涼歌舞伎以来の歌舞伎座の舞台で、四月大歌舞伎での正式復帰を前に一足早い復帰です。大変元気そうで、来月から戻って来るので皆さんまたよろしく、と楽屋落ちのセリフにも観客席から惜しみない拍手が続きます。
そこへ飛脚がやって来て雲助達に身ぐるみ剥がされてしまいます。この飛脚は左團次。最近あちらの方面での趣味で有名になったためか、身ぐるみ剥がされた後の格好は……(笑)。テレビ放映の時は大丈夫だろうかと心配するほどの際どさですから、観客からも嬌声が飛びます。
さて金太郎扮する権八が駕籠でやって来ます。駕籠かきは染五郎と松緑です。染五郎は金太郎の衣裳を治すのにも余念がありません。自分が演じるより心配でしょう。金太郎、台詞はまだ幼いのですが、瑞々しい若衆ぶりで絵になります。間違いなく将来の権八役者!
雲助たちが襲い掛かってきても立派に刀を振るい退けます。いつも出る立廻りは次の通り。
右手を斬られるのがお祖父さんの幸四郎。すぐ右手を出して数があわないと言っていました。
リボンを着けている雲助は翫雀。これがキティちゃんをもじっているらしく、キティのクッション(!?)を持ち出して金太郎と立廻り。最後はそのクッションで縄跳びまでするのですが、紐が短くて上手く跳べません。そして右脚を斬られて片足跳びで上手へ引っ込んで行きます。
三津五郎はお尻を斬られます。お尻の型が出てきて三回斬られるのですかね。彦三郎は鼻を斬られる役、彌十郎は首が引っ込んでしまいます。彌十郎との立廻りでは後見に抱え上げられて彌十郎の持つ太い杖を上から斬る型も見せます。
それ以外には梅玉と魁春が二人でヘルメットとトンカチで
じゃんけんでのあっち向いてホイ(ご指摘をいただいたので、2日付けで修正します。いろいろな呼び方があるようですが、「たたいて・かぶって・じゃんけんぽん」という呼称が分かり易いでしょうか?)、高麗屋一門の錦吾はハッピーバースデーの音楽とともにケーキを見せての立廻りもあります。
通常より早く花道から駕籠が出て長兵衛が登場、左近が秀調と絡みながら腹巻きを広げると表裏が「六月左近襲名」「おめでとう」の祝幕のようになっていました。それから登場したのがくまモンの雲助!金太郎、大河と三人による立廻りもくまモンも呆気なく転がされてしまいます。
大河は一旦駕籠へ戻り、金太郎が墓標の後ろへ廻ると代わりに左團次登場。そして上手と下手の草むらから夜鷹の水谷八重子と波乃久里子が…。そして二人がそれぞれ手を引いて現れたのが関取と野球選手。最初は誰だか分からなかったのですが、関取は遠藤を真似た吉右衛門、野球選手はヤンキースのユニフォームを着たマー君を真似た菊五郎でした!二人とも本物とは似ても似つかないのですが、菊五郎は堂々とピッチングフォームを見せるのに対して、吉右衛門は舞台袖で鉄砲を繰り返す姿はどこか恥ずかしそうです。
五人を追い払った権八は亀蔵を切り倒した後、長兵衛の提灯で刀を確かめる。それからはほぼ通常の『鈴ヶ森』の有名な台詞となります。大河の台詞は非常にはっきりとしていて癖もなく、べらんめえ調もなかなか聞かせます。小さい大親分ですね。二人とも幕切れの見得も決まっていました。
盛大な拍手でカーテンコールがありました。もちろんくまモンもいます。役者たちによる手拭い撒きがありました。その際染五郎が投げたらしき手拭いが花外上の二階の提灯に当たり、提灯が落ちるという珍しいハプニングがありました。
私は誰が投げたか覚えていないのですが、幸いにして手拭いをいただきました!鈴ヶ森をあしらった洒落たデザインです。
なお、この俳優祭は5月31日(土)14時~ Eテレで放送予定とのことですから、残念ながら歌舞伎座へ足を運べなかった方もあまり期間を置かずお楽しみいただけるようです。